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最終:1年後、幸せの中で

最終話です。お付き合い頂き、真にありがとうございます!では、どうぞ!!

『それでは、新郎新婦の入場です!拍手でお迎え下さい!!』


パパパパーン!パパパパーン!!


音楽と拍手の中を、友人知人、そして大勢の招待客に見守られながら、一組の男女が入って来た。

初々しく、恥ずかしそうな表情は、幸せという言葉がピッタリとあてはまっている。


その新郎は私の知り合いで、私の隣で微笑みながら拍手を贈る《友達》の親友でもある。


披露宴というのは、初めてじゃない。けど、同級生の披露宴に出席するのは、今回が初めて。

見渡せば、懐かしい顔なじみの姿があり、皆一様に拍手と祝福を贈っている。


仲人の挨拶や祝辞が終わり、《ご友人からの祝辞》として、隣に座る彼が席を立つ。

一礼し、懐から紙を取り出した彼は、やや緊張気味に話し始めた。


「廉、そして瑞穂さん、ご結婚おめでとうございます!僕と新郎の廉くんとは中学生の時に知り合いました。当時から明るくて、誰からも好かれるような人気者の彼は、誰だろうと分け隔てなく接して、地味で気弱な僕を、クラスに溶け込ませてくれた、今も大切な人です。……共に笑い、泣き、そして痛みを分かち合ってくれた彼が、こうして素敵なお嫁さんに出会えた事は、偶然ではなく、必然だと僕は思っています。友人としてスピーチを読ませてもらえた事に感謝を……そして、廉と瑞穂さん、二人の幸せを願って……。おめでとう!!」


本当に嬉しそうに、彼は笑い、そして涙を見せた。

割れんばかりの拍手と共に、新郎もまた、嬉しそうに涙を流していた。

これが、本当の《親友》だと思える彼のスピーチは、知らない内に、私まで……いや、他の招待客までを、涙させていた。






「……へへっ、感動しちゃった!」

「ありがとう」


スピーチを終えて席に戻って来た彼は、恥ずかしそうに笑っている。

でも、これが真の友達の姿なんだと私は思えた。

だから彼が、志摩渚が新郎である月島廉に贈ったスピーチは、美しくて、同時に月島くんを羨ましく思ってしまう……。


「男の友情って、いいよね」

「うん。廉は、僕の誇れる友達だから!」






その後は二回のお色直しや、幼少期から現在までを収めたショートフィルム。

そして新婦から両親への感謝の言葉を綴った手紙に再び涙し、友人一同が集ったダンスは、爆笑を誘ったり。泣いたり笑ったりと、忙しかった。


『ではこれより、ブーケトスを行わせていただきます!ご希望の方は、こちらまでお集まり下さい!』


披露宴も終盤に差し掛かった頃、独身女性が盛り上がる一大イベント、《ブーケトス》が始まる。


「よし!」

「取れるといいね!頑張って!!」


志摩くんの応援を背に、私も気合いを入れて!




『それでは新婦、瑞穂さんお願いします!!』


私達独身女性に背を向けた新婦、瑞穂さんは、勢いよくブーケを投げた。

ブーケは綺麗な弧を描きながら宙を舞う………んだけど――――


ポス!


「…あ…」

『…あ…』

「「…あ…」」

「……迂闊だったわ」

「…ありゃりゃ」


新郎新郎・司会・そしてブーケを手にした人は、一様にひらがな一文字を口に出し、新婦側友人二人は、策略ミスと言わんばかりの言葉を苦笑混じりに零す。


ブーケはたしかに綺麗な弧を描いた。だが、それは中央に集まった独身女性を遥かに越える程の距離を叩き出したのだ。

そんな宙を舞ったブーケは皮肉にも、独身女性の前には落ちず、独身男性の頭にポトリ。

一瞬の後に訪れた大爆笑に、会場は一気に和み、そして思わぬ形でブーケを手にした人は、顔を真っ赤に染め上げた。




「はい、これ!」

「え、私に!?」


ブーケを手にしていたのは、言わずもがな、志摩くんだ。


「ブーケはやっぱり女性の憧れだと思うし、僕が持ってるよりも、ずっと良いと思うから」

「あ、ありがとう!」


思わぬ形で私のモノになったブーケ。御利益あるかなぁ?






















披露宴は無事に終わりを迎えた。退席する招待客の中には、新郎新婦以外にも志摩くんに声をかける人もいる。志摩くんも戸惑いながらではあるが、丁寧に挨拶をしていた。そんな志摩くんを見ながら、私は志摩くんの友達なんだということを誇りに思う。


「渚、まさかお前に泣かされるなんて思わなかったよ。これからもよろしくな、心友!!」

「こっちこそ!」


ホールから出た私と志摩くんを待っていた新郎の月島くんと瑞穂さん。そして二人のご両親。

志摩くんと月島くんは互いに言葉を交わし、がっちりと握手。


「しっかし、まさか男に嫉妬するとは思わなかったな」


瑞穂さんはそう言うが、その表情はどう見ても嬉しそうだ。


「ありゃ、あのブーケ……」

「志摩くんにもらったんです」

「そっか、なら二人とも!結婚式には呼んでくれよ!!」

「「ヘ?」」



思わずハモる私と志摩くん。って、どういう事!?


「なんだ、知らないのか?ブーケを渡すってのは、好きな人に想いを告げる事と同じなんだ。ちなみに、受け取れば、OKのサイン。受け取らなければ……もう、わかるだろ?」


それってつまり……


「い、いいいいや、そ、そんなつつつつつつもりじゃ!!!!!!」

「う、ううううん!わか、わかってる!!!!」

「あっははは!こりゃいいや」

「っはは!まったく、二人とも満更嫌そうじゃないところがまた」


か、からかわないで!!




















それは帰り道。帰り道が一緒だからと、並んで歩く志摩くんと私だけど……


「「…………」」


あんな事を言われて、気まずくないわけがない。さっきからずっと無言で、なんにも言わない志摩くんは、まともに目を合わせてくれない。


「あの………さ」

「な、なに?」


痺れを切らしたってわけじゃない。けど、会話をしなきゃ始まらない事だってある。

思えば、今日が志摩くんと本当の友達になれて、ちょうど一年だ。


「わ、私はね、ブーケにそんな意味があるなんて知らなかった!」

「そ、それは僕も……」

「でも……嫌な気分はしないんだ」


だから、素直な気持ちをぶつけよう。


「ううん、むしろ嬉しいと思ってる!」


ありのままを伝えよう。


「志摩くんが、もし私を想ってくれているなら…」














きっと、届くはず……




















「私を、キミの彼女にして下さい――――」



完結しました。お付き合い頂きありがとうございます。今後はしばらく短編を書いていく予定です。

あくまで未定ではありますが………。

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