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7.ゴールデンウィーク初日 後

23.04.21後半◆◆部分以降書き足しました。

 ショッピングモールは、開店してから三十分しか経っていないというのになかなかの賑わいを見せていた。

 満のお目当ては、二階婦人服売り場に入っている三店舗。


「良いのあるかしら」


 満は満面の笑みで勇んで歩いて行く。ああ待って、置いてかないで。



 俺はじっくり品物を選ぶ満の隣で、ぼんやりしながら彼女を眺めていた。

 満はあまり、俺に意見を聞かない。「これ可愛くない?」「そうだなー」くらい。だからどこぞのカップルのような「どっちが良い?」と聞かれて見当違いな答えをだして「・・・信じらんない」、なんてことはやったことがない。それは良いとして、俺は特にすることもなく手持無沙汰になる。だが休憩は許されない。荷物持ち以外で俺がいる意味あるのか?休憩させてくれ。と以前言ったら、一人で居るの、ちょっと寂しいじゃない。と珍しく少し照れながら言われて、まあ、そのなんだ、しょうがないよな。


 満は人数の多い家庭で育ったからか、なかなかの寂しがり屋だ。近くに誰かがいる方が安心するらしい。

 しょうがない、とか思いながらも、頼られて嬉しい自分が存在することも事実だ。




「あー、いっぱい買った!」


「そうだねー・・・」


 晴れやかな満。荷物に塞がれた俺の両手。でも暖かい時期は良いよ、嵩張らなくて。冬だと同じ枚数でも量とか重さとか、三倍くらいには膨れるからな。


「そろそろご飯にしましょうよ」


「賛成、腹減った。何が良い?」


「すっごくパスタな気分」


「じゃあパスタな」


 特に反対する必要も無いので、俺たちはレストラン街にあるパスタ屋へと向かった。



「結構混んでるわね」


「丁度お昼時だからねー」


 パスタ屋の待ち客は店舗からはみ出て並んでいた。けれど見回すとどの店も似たようなもので、人間の考える事は同じだなと思う。


「しょうがないわね。暇だから面白い話でもしなさいよ」


「なんつー無茶振り!?」


 俺、漫才師じゃないんですけど!?


 別に応える必要性もないのにぐるぐる考えていたら、明るい声が降って来た。


「あー!満センパイじゃないですかあ!」


 聞き覚えのある声だと思ったら、いつぞやの後輩ズ。


「え? あー!保奈美ちゃん、早苗ちゃん!こんにちはー!」


「こんにちは!」


「こ、こんにちは」


 大人しい印象の子はまだおずおずとした感じだが、なにやらもう打ち解けているというか、すげえなあ。


「二人も買い物?」


「そうなんですよー。今来たところなんですけど、先にお昼食べようって話になって」


「そーなんだ。何食べるか決めたの?」


「センパイ達と一緒です。パスタにしようと思って。」


「じゃあ一緒に食べましょうよ」


「えっ、良いんですか?」


 乗り気なのだろう、目をキラキラと輝かせている彼女はしかし、友人に袖を掴まれて牽制された。


「ほーちゃん、そんな邪魔しちゃ駄目だよぅ」


 ・・・俺と満のことだろうか。


「邪魔なわけないじゃない、光太郎と二人で食べるより断然良いわ」


 ええ、勿論邪魔ではありませんが、そう断定されるのも悲しいです。とは口に出せない俺。


「じゃあお言葉に甘えちゃおうかな~」


「決まり!思いがけず華やかになったわね」


 満面の笑顔で振り向かれました。


「ウレシイデスー」


「何よその棒読みは」


「すみません、お邪魔しちゃって」


 俺の冗談が通じなかったのか、大人しい感じの子が腰も低く謝ってしまったので、俺は慌てて手を振った。


「あー、いやいや、さっき満も言ってたけど全然邪魔なんかじゃないから、大丈夫だよ?えーと、俺は鈴木光太郎って言います。」


「あっ、私、村山早苗と申します」


「敷島保奈美でっす、宜しくお願いします鈴木センパイ」


「あ、うん、よろしく・・・」


 えー、なんか敷島さん、その視線に悪意を感じるんだけど・・・。俺なんかした?




 暫くして入れた店内では、俺の隣に満、前に村山さん、満の前に敷島さんという席になった。


 彼女達はレディースセットを頼むと即効で決め、パスタとデザートの選抜中。なんでメンズセットなるものが存在しないのか、疑問に思うのは俺だけだろうか。メニューを眺めて、「肉々しいアナタ」というパスタを大盛りで頼むことにした。すっげえ名前。写真で見る分には、美味しそうなんだけど。



「満センパイって、彼氏はいないんですか?」


 デザートを食べながら、敷島さんがそう尋ねた。


「いないわねー」


「美人だし優しいし、言い寄って来る男も多いでしょう?付き合わないんですか?」


 うわ、すげえ女の子の話だ。俺は此処に居ても良いものだろうか。若干の気まずさを覚えながら、俺はお茶をすすった。


「なんていうか、ピンとこないのよねー。好みのタイプの子とかはいるけど」


 目の前の子ですね、わかってます。


「その人と二人きりでデートしたり、甘い雰囲気になるって想像できなくて。そういうことが想像できる人が現れたら、付き合いたいのだけど」


 夢を見過ぎかしら、と満は笑う。


「素敵です・・・。運命ってやつですね!」


 女の子二人、うっとり。

 俺は一人で、聞いてはならない事を聞いた気がして、頭の中で無駄に覚えた年号をしきりに考えていた。男もいる事を思い出してくれ。


「だから今は、みんなで楽しめれば良いかなって。短い高校生活だしね!」



「ちょっとお手洗い行ってくる」


「あ、私も・・・」


 会計を終え、店を出て満と村山さんはそう言って行ってしまった。取り残された俺と敷島さん。


「鈴木センパイ、私頑張りますから」


「へ?」


 突然なんだ?


「満センパイに、甘い未来を想像させるのは、私です。誰にも負けませんから」


「な、何、突然・・・」


「宣戦布告です。覚えておいてください。」


 やっぱりこの子は満が好きなんだな、とか、なんで俺に言うんだ?とか、頭がごちゃごちゃして、俺はその時、何も言えなかった。


◆ ◆


「しかし、そんな風に考えてたんだな」


「え?何が?」


 帰りのバスの中。唐突過ぎて満には伝わらなかったらしい。昼に敷島さんに言ってたこと、と続けると、得心したようで、あーあれね、と頷いた。


「あれは体の良い断り文句、っていうか防波堤?」


「は?」


「だって、今彼氏彼女作ったら、他の子達と遊べないじゃない?」


「はい?」


「私、まだまだ恋多き女でいたいのよね」



 俺は頭を抱えた。

満はオトメなのです。


23.04.21オトメだと思っていました。が、違いました。なんか違和感あってつついたら、こんなこと言いだしました。満に乙女で居て欲しかったのは、私の頭の中だったようです。

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