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6.ゴールデンウィーク初日 前

 ゴールデンウィーク初日。惰眠を貪ろうとしていた俺は、平日と変わらない時間にたたき起こされた。


「まだ寝かせて・・・」


 布団に包まろうとした俺から、布団をひっぺがすという鬼畜な行動をしたのが俺の母。


「何言ってんの!今日はお父さんが帰って来るのよ!」


 だから何だと問いたい。それが俺の睡眠時間を削っても良い理由なのだろうか!?


「それに、あんた今日は満ちゃんと買い物行くんでしょ?さっさと準備したほうが良いんじゃなーい?」


 ・・・ソウデシタ。


 行先は人気のショッピングモール。これからのシーズンに向けてがっつり買うから荷物持ちよろしく!とか言ってたっけ。

 仕方が無い。準備ができていなくても満は俺を引っ張り出そうとするからな。パジャマで外に連れ出される様子を想像して、俺は早々に準備を始めた。


 とは言え、デニムにTシャツというラフな格好で、アクセサリー類も整髪料もつけないから、身支度などはさっさと終わる。食後に新聞を読んでいると、隣から溜息が聞こえてきた。


「あんたももうお年頃なんだから、もうちょっと色気づいても良いのに」


「うるせーよ」



 淹れて貰った緑茶をすすりながらぼんやりテレビを見ていると、音をたてて玄関のドアが開け放たれた。


「ただいまー!」


 父、帰還セリ。

 大きい荷物を担いできた男は、意気揚々と居間に入ってくる。


「おかえり」


「おー、光太郎久しぶり!元気だったか?」


「まあね」


「なんだよなんだよ、つれないなぁ。父さん寂しい。」


「父さん、疲れてないの?四時間運転してきたんでしょ?」


「ああ、実は睡眠も四時間なんだ。どちらかというとランナーズハイ的な?」


「寝ろ」


「折角久しぶりに息子に会えたんだ、家族団欒したいんだよ」


「お父さん、はい、お茶」


「あ、ありがとう、母さん。」


 父さんは猫舌だから、手渡された熱々のお茶をふうふう冷ましながら啜る。暫しの静けさ。黙らせたいときは食べ物を与えるしかないのだろうか。


「お父さん、残念だけど団欒は無理よ」


「えっ、なんで?」


 母さんの台詞に振り仰いだ父さんに、俺が答える。


「俺が出かけるから」


「ええっ、誰と!?」


「誰とでも良いだろ」

「満ちゃんよ」


 俺と母さんがハモる。なんか嫌だ。


「へえ、お前、まだ満ちゃんに仲良くしてもらってるんだ」


「してもらってる、って何だよ!」


「だってそうだろー?昔っからいつも遊びに入れて貰ってたじゃないか」


「俺が満につきあってやってるの!」


「ァア?いつからお前はそんなこと言えるようになったんだ~?」


 いきなり眉を吊り上げた親父がかかってきて、俺は身構える余裕もなくチキンウイングアームロック(関節技)を食らってしまった。


「いででででででで!ギブギブ!」


「あ、(はじめ)おじさん帰ってたんだ。どうりで騒がしいと思った~」


「あ、満ちゃ~ん。久しぶりだね~」


 なんで満が家に入り込んでるとかそういう事は最早突っ込まないぞ。てか


「いってーんだよ親父離せ!」


 なに和やかに話してんだ!!こちとら脱臼するかしないかの瀬戸際なんだ!!


「ああ?父親に向かってなんだその言葉づかいはァ?」


「ギャアアア!!」


「元おじさーん、その辺にしてやってよ。これから荷物持ちやってもらわなきゃならないからさ」


 俺はどこのいじめられっ子!?


「あ、そうなんだー。どんどん重い荷物持たせちゃって良いから」


 ぺいっと投げ出される俺。


「大丈夫?」


「大丈夫じゃない・・・」


「父さんはお前をそんな(やわ)に育てた覚えは無いぞ☆」


 うわぁ、うぜぇ。


「光太郎、バスに間に合わなくなるよ?」


「はい、今出ます・・・」


 俺は肩をさすりながら、ケータイと財布をポケットに突っ込んだ。


「送ってこうか?」


「いいから寝てろ!いってきます!」


「じゃあいってきまーす」


「「いってらっしゃーい」」


 背後から聞こえる声に溜息を吐く。ああ、こんなに両親を憎らしく思ったのは久々だ。




 ショッピングモールへは、駅から三十分毎に出ているシャトルバスに乗って行こうと決めていた。

 早めに予定を組んでいたおかげで二人席に座ることができ、ほっとする。周りは連休初日だからだろう、同じ年代の女の子が大勢乗っていた。男は圧倒的に少ない。


「元おじさんは相変わらず元気ね」


「全く。年取った気がしないよ」


「ところで光太郎、あなた、私につきあってくださってたの。」


「え・・・」


 聞かれてた!?

 そ、そうか、やっと晴天なのにどこか背中が寒いわけがわかった・・・。


「いや、それは、あの」


「そうよね、折角の連休、きっとお昼まで眠っていたかったわよね。この前のお花見だって、別に態々行きたくなかったのよね、ごめんなさい、私が我儘言ってしまって」


 なんか、周りの視線がちくちく刺さるのは気のせいだろうか。


「ごめんなさい満さん、嘘でもあんなこと言うべきではありませんでした」


「・・・ちょっと、棒読みがひどいわよ」


 駄目出しと共に、ジロリと睨まれる。

 うう、ああ・・・。


「・・・悪かったよ。親父の前だからああ言ったけど、俺満と遊ぶの、昔っから嫌いじゃ無いし」


「ふむ。及第点をあげようかしら」


「有り難き幸せ!」


 あーもう、恥ずかしい!



はい、現実世界と時間軸が激しくずれておりますがお気になさらず!

ぱぱ登場。元気だね!

なんか頭の中でもこもこ膨らんで長くなりました。前編です。

次は後編かもしれないし、中編かもしれない。です。

最後に、読んで下さった方に感謝!

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