4.お花見にて
「明日、皆でお花見に行きましょうよ」
という昨日の満の一言で、既にいつものメンツとなった六人――満、古川、嶋、新村、萩原、俺――は花見に来ている。
「うーん、満開までもう少しってところね。」
桜をみながら、満はそうつぶやく。しかし、言葉とは裏腹に、満の表情は耀いていた。
此処は市の総合運動公園だ。テニスコートや野球のスタジアム、陸上のトラック、プール、体育館・・・、とにかくあらゆるスポーツができる施設がぎっしりつまったこの公園は、周りが桜で囲まれている。その下には散歩コースもあり、普段から利用者は多いのだが、この花の時期には屋台が並んでいて特に賑わっている。プールの裏手には、ピクニックに重宝する芝の敷いてあるスペースもあって、花見では此処が一番利用者が多い。
今日は土曜日で、部活が昼まであった新村や古川さんを待って十三時集合にしたのだが、公園は既に大賑わいの様子を呈していた。酒の匂いも随分する。
「お好み焼きー、いちごあめー、唐揚げー、じゃがバター、やーんどれにしよー!」
「全部食べたら太るよ」
「夕のいじわる~!あっ、バナナチョコ!じゃんけんで勝ったら二本だって!みっちゃんもやろうよー」
女子三人衆はきゃいきゃいと屋台に並ぶ。まさしく花より団子。俺達は唐揚げを頬張りながら、その様子を眺めていた。と、嶋さんのはしゃぐ声が聞こえた。どうやらじゃんけんに勝ったらしく、バナナチョコを二本手にしている。
「俺に勝つたあ、運が良いねお姉ちゃん!」
「ありがとー!」
「おじさん、次私ね!」
身を乗り出す満。結果はと言うと・・・
「勝った♪」
俺としては当たり前なのだが、二本手にしている。満がたとえじゃんけんであろうと、他人に負けるわけが無いじゃないか。
連敗した屋台のおっさんは少し引きつった顔で「勝利の女神さまどっか行っちゃったかな~」と言っていた。
その後に古川さんが挑戦。
で。彼女達の手の中には、計六本のバナナチョコが。おっさんが、心なしか小さく見えた。
「え、何この子達。こんなことってある?」
萩原が顔を引きつらせている。俺と新村はただ、首を横に振った。ねーよ。
なんだかんだで花を愛でつつ食べ歩きをしていると、満が呼びとめられた。
「あっ、先輩!」
そこには、入学式のあの子が居た。隣には、友達らしい女の子が一人。こちらは大人しい雰囲気だ。
「あら、こんにちは」
満はひとりだけその子達に近寄ると、笑顔で挨拶した。
「こんにちは。先日は有難うございました!おかげで間に合いました~」
「それは良かった。そう言えば、自己紹介がまだだったわね。二年の円藤満です、よろしくね」
懲りずに笑顔に中てられた彼女は、赤くなりながらも
「敷島保奈美です!こちらこそよろしくお願いします!」
と答えていた。
「あっ、この子は私の友達で村山早苗って言います」
紹介された子は、彼女の隣でぼーっと満を見つめていたが、自分に話を振られるとはっと気付いたようにアタフタし始め、「村山です、よろしくお願いします」と頭を下げていた。
「ねえ、鈴木くーん」
嶋さんが俺の袖を引く。
「何?」
「満が話してる子達ってだあれ?」
「入学式の受付で知り合った子」
「はー、なるほどねぇ。満、ああいう子結構好きだもんねぇ」
成程。彼女たちも満の性格を把握していたか。
よく考えると、彼女たちも凄いよな。満と友達としてつきあってるし。先刻のじゃんけんを見るに、満に負けず劣らずなんか力持ってそうだし。
・・・あれ、なんでだろう。寒気が・・・
遅くなりました・・・
言いわけ・・・活動報告でしようかな・・・
この話の舞台は、私の故郷(東北)をイメージしてるので、桜咲くの遅いです。
桜は四月終わりに満開になるんですよ。下手するとゴールデンウィークに満開です。卒業式は桜咲くどころか雪降ります。
では、お読み下さった方、ありがとうございました~