1.四月一日
ほんのり同性愛表現があります。1㎜たりとも許せん!て方はごめんなさい。
桜の蕾が大分膨らんだ四月一日―――
俺は例年通り、幼馴染兄妹に拉致られた。
今年から高二の俺を含む学生達は春休みの最中なわけで。つまり昼まで惰眠を貪ろうとしていたわけですが。
「・・・おい。」
俺はいつの間にやら、幼馴染宅のリビングに居た。
パジャマ代わりのTシャツハーフパンツのままで。
「またかよ、また今年もかよ」
項垂れる俺。目の前ではニヤニヤ笑う兄妹が。
向かって左手の短髪の美形が、俺の一つ上の円藤和人。右手のシャンプーのCMに出れる感じの艶やかな黒髪美人が俺と同い年の円藤満。二人揃って俺の疫病神だと常々思っている。
「光太郎、おはよう」
「和兄、おはようじゃないよ・・・」
にやけを納めないまま言われ、俺は頭を抱えた。
「毎年毎年、よく気付かないものねー」
「うるさい」
「因みに、今年も俺がお姫様だっこで連れてきました」
「うあああああ」
だから嫌なんだ畜生!
「別に良いじゃない、向かいなんだからたったの十数歩よ」
「そうそう。源じいに「もう四月か」って言われたけど」
「見られてるじゃねーか」
源じいはうちのお隣さんの爺さんである。多くの年寄りがそうであるように彼もまた早起きで、毎年のように見られている。
「毎年同じ事言うけどさあ、起こして連れて来てくれよ・・・」
「それじゃあ、普段と変わり映えしなくてつまらないじゃない」
「それに寝ぼけて縋りついてくるのが可愛いし」
「うわあああああああ!?」
思わず飛び上がる。和兄の奇行には大分耐性が付いてきたが、こういった言動には慣れない。和兄はバイだと公言しているから、尚更かもしれない。因みに、満も同じ趣味を公言している。世の中はそれで怯む事は無く、二人は良く告白されていた。
「それは置いといて、本題に入るわよ」
「はーい」
精神的ダメージを大いに受けた俺はさっさと無視されて、テーブルの上に書道具がわらわらと並べられていく。
「今年も来ました新年度!」
「今年度の豊富を書きましょー!」
「おー・・・」
朝からハイテンションの二人に、俺は付いて行けない。まだダメージ残ってるし。
二人はさっきまでのにやけ顔を何処かに仕舞って、真剣な表情で筆を運んでいる。こういう面も持っているから、こいつらはモテるんだろうな。
「よし、上出来」
得意気に頷く和兄の半紙を覗き込むと、「第一志望合格」と書かれていた。
「そっか、和兄は受験生か」
まあ、難なく入れそうですが。
「よし、上出来」
同じ台詞を発して、満も筆を置く。半紙を覗くと「生徒会長は私」。
・・・自信満々ですね。
「ほら、光太郎も書けよ」
「うーん、何にしようかなあ」
半紙を前にして唸る。毎年の事なので一応考えるは考えたのだが、二年生というのは宙ぶらりんなもので、良いものが見つからなかったのだ。
「あ、そういえば。月姉はどうしたの?」
いつもなら居る人物が居ないので、尋ねる。月姉とはこの家の長女で、名前を月子と言う。今年は大学三年になる筈だ。
「なんか、ラットの世話とかで出かけた。もう書いてるぜ」
そう言って和兄が持ってきた半紙には、「卒論を書き始める」。うは。
「皆して真面目だな・・・。あー、何書こう」
「そうね。副会長になる、とか」
「却下。満と一緒に生徒会とか。絶対振り回されるし」
「普段から振り回されてるもんな」
「だから、なろうがなるまいが関係無いじゃない?」
自覚してやがったよ。
このままだと本当に副会長に祭り上げられそうだったので、俺は急いで頭を回転させる。
「そうだ」
筆を取る。
「よし」
会心の出来。
「あはははははははははは」
と同時に後ろから二人分の笑い声が。
「五月蝿いなあ。そんなに笑うなよ・・・」
「い、いや、だって、ふっ、くくく」
「こ、光太郎、あんたって奴は・・・あはははっ」
俺が書いた今年度の目標。それは―――
『満を振り回す』
「せいぜい期待しておくわ」
頑張ります。
目指すはドタバタ系学園物!
週一くらいのペースで行こうかと思っております。
感想等お待ちしておりますー