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門が閉じたあと(1/2)

瓦礫の山だった。

地下空間のすべてが、見えない巨大な手で引き裂かれたあとのように崩れ果てている。


ほんの一瞬前――

衛星軌道測位砲が〈門〉の側面にある安定ノードを撃ち抜いた瞬間、銀の海のように広がっていた裂け目が激しく歪んだ。撃ち抜ききれなかった光束は地鳴りのような轟音を引きずりながら上層構造を貫き、そのまま真下へ叩き落ちる。


それはプラットフォームの縁をかすめるように着弾し、爆震で白石明と天城琉璃の周囲に走っていた銀色の回路を激しく明滅させた。

耳をつんざくような空間の悲鳴が、一瞬でその場にいた全員の鼓膜を満たす。


門はすぐには壊れなかった。

だが、明らかに安定を失っていた。


なおも流れ込もうとしていた影のうち、何人かは通路の真ん中で寸断され、半身をこちらに残したまま、残り半分を銀色の深みへ引き戻されていく。

それでも銀海星人たちの流入は止まらない。門がまだ閉じきっていないと見るや、むしろ狂気じみた勢いで押し寄せてきた。


まるで、ようやく故郷を目の前にした流亡者の群れだった。

押し潰されようと、引き裂かれようと、この星に一歩でも踏み込みたい――ただその執念だけで前へ出てくる。


「退け――!」

「どけ――!」


怒号が飛び交い、混乱と血煙と砕けた光が一つに溶け合っていた。


激しい揺れの中、フィル=レグナはようやく足を踏みしめ、頭上に穿たれた大穴を見上げた。


「衛星軌道測位砲……」


相沢礼香の発信器の信号が、まさかこの級の兵器を呼び込むためのものだったとは。

あれを使える権限を持つのは誰か。人類側の上層部か。あるいは――彼か。


フィルは思考を巡らせる。


表情は変わらず冷静だったが、その眼差しだけはわずかに沈んでいた。

もっとも、今回の門の起動は完全な成功ではないにせよ、決して失敗でもない。


なぜなら――門は、すでに一度開いたのだから。


座標は築かれた。

道も、一度は通じた。


白石明と天城琉璃が生きている限り、たとえ今ここで門が閉じたとしても、次に開くために必要なのは、十分な感情エネルギーを蓄え直すことだけだ。


そう考え、フィルは視線の端でプラットフォームを見やった。


その中央で、明の身体が大きく震えた。

まるで、もっと深い場所へ沈みかけていた意識を、見えない鉤で無理やり引き戻されたように。


「ぐっ……ああああっ――!」


明は両手で頭を抱え込み、苦鳴を漏らした直後、膝から崩れ落ちた。

その目は虚ろで、焦点はほとんど結ばれていない。ほんの一瞬のうちに、彼は人間のものではない何かを見すぎたのだ。記憶、座標、声、見知らぬ冷たい感情の断片。それらが脳の奥で乱暴にかき混ぜられていた。


「明!」


天城琉璃もまた、衛星軌道測位砲の一撃で半接続状態から叩き起こされたように我に返る。

口元から血がにじみ、胸元と肩口は飛散した金属片で大きく裂けていた。身体はぐらりと揺れたが、それでも本能のまま明へ飛びつき、半ば抱きかかえるように支えた。


顔を上げたその瞬間、彼女の瞳にようやくはっきりとした意識が戻る。

だが同時に、周囲の現実も突きつけられた。


門は歪み、崩れかけている。

すでに多くの銀海星人が入り込んでいる。

降り続く瓦礫と土煙が現場をさらに混乱させ、その裂け目の向こうからはなお、別の何かが押し寄せようとしていた。


怯えている暇などなかった。

ここに留まれば終わる。

自分も、明も。


その様子を見ても、フィルはすぐには天城琉璃へ手を回さなかった。

彼女は不安定に収束しつつある門を見据え、瞬時に判断を下す。


入ってきた人数が足りない。

圧倒的に足りない。


フィルは片手を上げ、落ち着き払った声で命じた。


「もういいわ」


その一言で、混乱していた場の空気がぴたりと止まる。

地下構造の崩落も、この頃には徐々に勢いを失っていた。遠くで小さな石塊が落ち、空ろな鈍い音を立てているだけだ。


数人の黒服たちが同時にフィルを振り向き、次々とそのもとへ集まってくる。


「侵入済みの者は直ちに隊列を整えなさい。地球側の既存上層部とは円滑な連携関係を築く。行政、軍事、エネルギー――主要ノードの掌握を優先して」


淡々と言い渡したあと、彼女はわずかに言葉を切った。


「それから、あの二人は――」


視線の先では、天城琉璃が明を支え、崩れた通路の反対側へよろめきながら退いていくところだった。

全身を血に染めながらも、彼女は歯を食いしばり、意識を失いかけた明を無理やり引き起こして逃げていく。


「今は放っておきなさい」


フィルはそう言って、かすかに笑った。

まるで、ここから逃げ出せばそれで済むとでも思っているのか、とでも言いたげな笑みだった。


四十八号は鼻梁からまだ血を流していたが、先ほど相沢礼香に叩き込まれた頭突きの奇妙な高揚がまだ抜けきっていないらしい。仲間の死傷などまるで気にも留めず、しかしその言葉には思わず戸惑ったように口を開く。


「ですが、あいつらは――」


「行く場所なんてないわ」


フィルの声はどこまでも平坦だった。


「それに、少し時間をあげるべきでしょう。自分たちのことを、よく考えるための時間をね」


彼女は確信していた。

あの二人も、いずれ理解する。

理解せざるを得なくなる。


そうして再び門に視線を戻した、その瞬間。

裂け目は最後に耳障りな悲鳴を上げ、唐突に閉じた。銀の光は断ち切られた潮のように一斉に砕け、無数の欠片となって消えていく。


門は、閉じた。


その場に残されたのは、砲撃の焦げ臭さと生臭い血の匂い、そしてまだ消えきらない銀色の残光。

それと――祖星へ踏み込むことに成功した銀海星人たちだけだった。


縁には、落下してきた巨石が斜めに突き刺さっている。

その表面には、砕けた標語の文字がいくつか残っていた。


【生は幸運に支えられ】


巨大で、あまりにも悪趣味な皮肉だった。


出発前、フィルは一度だけ瓦礫の山へ視線を向けた。

その下には、生死不明の相沢礼香が埋もれている。


彼女はふっと微笑み、瓦礫へ向かってやわらかな声で語りかけた。


「お嬢ちゃん。あなたはまだ分かっていないのよ」


その声音は、慈悲深いと錯覚するほど穏やかだった。


「私たちにとって数日なんて、長いうちに入らない。けれど、あなたたちにとっては――数日もあれば、いくらでも世界は変わってしまう」


そう言い残し、彼女は背を向ける。

黒服たちが周囲を固め、門をくぐったばかりの銀海星人たち――冷たい視線でこの星を見定めている者たち――と合流し、そのまま闇の奥へ歩み去っていった。


一方、プラットフォームの縁では、天城琉璃が明を引きずるようにして進み、ついに崩落した通路の向こうへ消えていく。


長い静寂のあと――

礼香を埋めた瓦礫が、かすかに動いた。


遠くからは警報、崩落音、交錯する足音が絶え間なく響いてくる。

まるで世界そのものが、見えない境界線の上で、無理やり別の運命へ押し流されていくようだった。


相沢礼香は、そっと目を閉じる。


この先、地球がどう変わるのか。

それは――まだ生きている者たちが、自分の稼いだ時間を価値あるものにできるかどうかにかかっている。


そう願いながら。

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