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プロローグ
車窓の遠景に揺られ1時間
潮騒の香りを頼り、30分
波間をくぐるように配置された石段を駆け降りる
とうとう会いに来たよ、と
初夏に思いを馳せては海に行く
晩夏の寂しさを噛み締めては海に来る
それの繰り返し
幾度となくここへ来ては
少し安心した心持ちで帰路に着く
とても大金とは言えないお小遣いを握りしめてアイスを買う
とっくのとうに溶けているそれを勿体ないな、と思いながら食べていたあの頃が羨ましい
大人になればなるほど
あのちっぽけで、昂るような心の動きを忘れてしまうような気がして
なんだか虚しく思う
おっと、今日は思いに耽けるためにここへ来たのではないのだ
小瓶を取りだし、砂をかき分け、それをそっと置く
中には小さな、小さな鈴蘭の花
今年も逢いに来たよ
-またね
喪に花を手向ける




