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愛の残響  作者: あぜるん
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9. ロザリア: ルカはダンテの物語を語りました。

ルカが私を家に連れてきてから、もう二週間が経っていた。

家の中では、みんなそれぞれの生活のリズムを持っていた。

マルティナ夫人はエリオを定期検診に連れて行き、

食料の買い出しをして、みんなの食事を用意していた。


ルカは仕事のせいで、いつも夜になってから帰ってきた。

父親から引き継いだ会社の社長をしていたが、

その仕事が好きではなかった。ただ、続けていた。

ロッコはいつもルカのそばにいた。

ロッコの弟マッテオは、家を守るために私たちと一緒に家にいた。


私の仕事はエリオの世話だった。

毎日エリオをお風呂に入れて、食事をさせる。

空いた時間には裁縫をしていた。

けれど、材料があまりなかった。

外に出られるのはルカと一緒のときだけだったので、

裁縫道具を買う機会がなかったのだ。


それで、買い物に行くマルティナ夫人に

いくつかの材料を頼んでおいた。

エリオが昼寝している間、私は静かに針を動かしていた。

その生活の中で、気づかないうちに大切に思う時間ができていた。


「こんばんは、乳母さん。ロザリアとエリオはどこだい?」

ルカが家に帰ってきた。


「裏庭です。ロザリアがエリオを外の空気に当てています。」

マルティナ夫人は夕食の準備を終えていた。


ルカが毎晩家に帰ると、最初にしたいことは

私とエリオの顔を見ることだった。

――なんて温かい気持ちなんだろう。


「寝る時間じゃないのか?」

ルカは私の腕の中にいたエリオを抱き上げた。


ルカは家に帰ってきても、

私に「ただいま」とも「こんばんは」とも言わなかった。

ただ、まっすぐ私の方へ歩いてきて、

目が合うまで一度も視線をそらさなかった。

その瞬間、彼の瞳は笑っているように見えた。

何も言わなくても、その静かな温もりがすべてを語っていた。


「もう寝る時間だ。私が部屋へ連れていきます。

エリオが寝たら夕食にしましょう。」

マルティナ夫人が裏庭に来て、エリオを連れて行った。


彼女が去ると、ルカは私の隣のソファに腰を下ろした。

今日はダンテに会う日だった。

時間を見つけては彼に会いに行っている。

毎日というわけではないが、数日に一度は必ず。


「ダンテはどうしてるの?」

私はルカに尋ねた。


「体は元気だが、心はそうでもない。」

ルカは友を思って沈んだ表情を見せた。


「何かあったの?」

私は少し遠慮しながら尋ねた。


「昔のことだ。新しい話じゃない。

ダンテは何年も前、結婚寸前で婚約者を亡くした。

あの日、彼女の遺体が見つからなかったから、

今でもどこかで生きていると信じている。

何年も、彼女を探し続けているんだ。」

ルカはそこで口をつぐんだ。


「婚約者は……幸せな人ね。」

私は静かに言った。


「死んでいるかもしれないのに、どうして幸せだと思うんだ?」

ルカは少し驚いたように聞き返した。


「だって、ダンテがあんなに深く愛してくれた。

何年経っても探し続け、忘れずにいる。

そんなふうに思われるなんて、とても幸せなことだと思う。」

私はそう答えた。


「本当に心からそう言うんだね。

君を愛した人は、いなかったのか?」

ルカが興味深そうに尋ねた。


「わからない。

いたとしても、覚えてないの。

あの日、頭を打って……記憶を失ったの。

十四歳までのことは覚えてるけど、

その後――つまり、青春の時間がすっぽり抜けてる。」

ロザリアの目は、遠く一点を見つめたまま動かなかった。


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