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愛の残響  作者: あぜるん
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58. ダンテ:記憶と痛みのあいだで.

ロザリアと赤ん坊を家に連れてきた。二人を寝室へ運び、あらかじめ用意していたベビーベッドにジョヴァンニを寝かせた。ロザリアはまだ目を覚ましていなかった。だが、ほどなくしてジョヴァンニが泣き出し、その泣き声でロザリアも目を覚ました。


「私の子!」

ロザリアは慌ててベッドから起き上がり、赤ん坊のもとへ向かった。


目を覚ますなり、彼女はまず息子を探した。起きたときにジョヴァンニの姿が見えなかったら、どうなっていたか想像もできない。


「ダンテ、どうしてこんなことをしたの? どうして私たちを連れ去ったの?」

ロザリアは悲しげな声で問いかけた。


「君を連れてきたのは、婚約者を取り戻したかったからだ。……ジョヴァンニも君のために連れてきた。君は、あの子なしでは生きられないだろう」

ダンテは静かに答えた。


赤ん坊は泣きながら目を覚ました。お腹が空いていた。ジョヴァンニのためにミルクも用意していたし、彼が少しでも楽に過ごせるよう、すべて考えて準備してあった。


「ジョヴァンニにミルクをあげないと。外に出て、お願い」

ロザリアは授乳しようとしていた。


彼女が赤ん坊にミルクをあげる間、私は一人にしてリビングで待った。待ちながら、二人で写っている写真のアルバムを眺めていた。ロザリアは授乳を終え、ジョヴァンニを再び寝かせてから、私のいるリビングに戻ってきた。


「ダンテ、何年も経ったのに、写真を捨てなかったの?」

古い写真を見て、ロザリアは驚いていた。


「経っていない。……僕にとって時間は止まったままだ。火事が起きた、あの日から。あの日で、僕の時間は止まった」

ダンテはロザリアを見つめた。


「ダンテ、私たちは別れたの。放して。私はルカの妻よ。お願い、放して」

ロザリアは懇願した。


「別れてなんかいない! 君が僕を捨てたんだ! しかも一言も言わずに!

別れっていうのは、こんな形じゃない。別れるとき、人は言い争いをする。誰かがドアを叩きつけて出ていく。

互いに疲れ果てて別れることもある。

静かに話し合って、納得して別れることもある。

あるいは、どちらかが死んでしまって、別れる。

それが“別れ”だ!

でも君は消えた。別れるとも言わずに消えた! それがどんな別れだ?

これは不公平だ。別れなんかじゃない!

僕は何年も君を探し続けた。探すことに疲れた日もあった。でもそのたびに自分を責めた。

“今、ロザリアは無事だろうか”“今、助けを必要としているんじゃないか”――そう考え続けて、心が休まることはなかった。

僕たちは別れていない。君は僕をズタズタにして、消えたんだ!」


ダンテは悲しそうにロザリアを見つめていた。


ロザリアは黙っていた。私が正しいと分かっていたからだ。彼女は意図的に姿を消したわけでも、わざと私を傷つけたわけでもない。けれど、私を思い出し愛する代わりに、ルカを愛することを選んだ。それだけは、彼女自身の選択だった。

私への想いは、すべて死んでしまったかのようだった。まるで最初から何も感じていなかったかのように振る舞っていた。

私が好きだったもの、彼女が好きだったもの――思い出しては、また忘れてしまった。今度は永遠に。

彼女は私を見ると、視線を逸らした。私の目を、決して見ようとしなかった。それが、何よりも胸を痛めた。


「プロポーズした日のことを覚えてるかい? 君に、いつ僕を好きになったのか聞いた」

ダンテが尋ねた。


「覚えてる」

ロザリアは答えたくなさそうだった。


彼女はまた視線を逸らした。顔は私のほうを向いているのに、目だけは合わせようとしない。答えを覚えているのに、口にしたくなかったのだ。


「“君の目を見たとき。色があまりにも綺麗だったから。澄み切った青空に、薄い霧がかかったみたいな色だ”――そう言ったんだ。……今は、話していても僕の目を見ない」

ダンテの目には涙が浮かんでいた。


ロザリアも苦しんでいた。私の言葉と、私の状態が彼女を傷つけていた。彼女は私を哀れんでいた。


ロザリアは私のすぐ隣に座っていた。近すぎるほど近く、彼女の香りがまた私の理性を奪った。


「どうやってルカを惚れさせた?……輝く栗色の髪で?……哀しげなその瞳で?……雪のように白い肌で?……それとも全部を同時に使ったのか?

僕も、そうやって君に恋をした……」


ダンテは近づき、ロザリアの髪を撫で始めた。


「やめて、ダンテ。お願い!」

ダンテがキスしようとすると、ロザリアは身を引き、顔を背けた。


ロザリアは私を求めていなかった。思い出したくもなかった。触れられることも拒んでいた。

でも、もう遅すぎた。彼女の中で私が愛したすべてが、次々と理性を奪っていった。自分を抑えられなかった。

ロザリアはソファの上で後ずさりした。彼女が下がるほど、私はさらに近づいた。止まれなかった。

腰を掴んで引き寄せ、キスをした。彼女は手で私を押し返し、やめさせようとしていた。だが、私はまるで聞こえていなかった。

立ち上がろうとした彼女を腰で引き戻し、ソファに横たえた。彼女は私を押しながら、叫び、泣き始めた。


「一緒に来い」

ダンテはソファから立ち上がり、ロザリアに手を差し出した。


「どこへ?」

ロザリアは行きたくなかった。


「怖がるな。来い。見せたいものがある」

ダンテはドアのほうへ歩いた。


私が触れようとするたび、ロザリアは叫んだ。それがとても辛かった。私は、今いる場所を見せたかっただけだった。彼女を外へ連れ出した。


「よく見ろ。周りは岩と木と海だけだ。他に家はない。ここには、俺たち以外誰もいない。

叫んでも、誰も助けに来ない。叫べば、ジョヴァンニを怖がらせるだけだ。……

僕は君を傷つけたいわけじゃない。ただ、婚約者で、愛した女を恋しく思っているだけだ」


ダンテはロザリアの手を取り、家の中へ戻った。


ロザリアは黙ったままだった。何も言わず、ただ泣いていた。静かに、声を殺して泣いていた。

彼女に触れたいという気持ちは、欲情や衝動からではなかった。傷つけたくなかった。ただ、どうしようもなく恋しかった。


ロザリアはソファに座っていた。私はゆっくりと彼女に触れ始めた。

ロザリアは微動だにしなかった。まるで死体のように横たわっていた。腕は折れてしまったかのように動かず、天井の虚空を見つめたまま黙っていた。

生気のない体に触れているようだった。体は氷のように冷たく、動かない。目からは、絶え間なく涙が流れていた。まるで、死者が泣いているかのようだった。


そんな彼女の姿が、私の心を引き裂いた。それでも、もう自分の体を制御できなかった。

肌も、香りも、瞳も、美しかった。母になったロザリアは、とてもよく似合っていた。

もう少女の体ではない。美しい、成熟した女性の体だった。


冷たかった。すべてが氷のように冷たかった。

それでも――あまりにも、美しかった。



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