57. ダンテ:取り戻せない選択!
俺は船から脱出していた。高熱と酸素不足で気を失っていたが、扉が開いた瞬間、冷たい空気が顔に当たり、意識を取り戻した。目を開けたとき、ルカはそばにいなかった。助かっていたのだ。ロッコが彼を救い出したのだろう。だが、俺はそこに置き去りにされた。
目覚めて見捨てられたと気づいても、悲しくはなかった。自業自得だったからだ。ロッコの仕事はルカを守ること、その役目を彼は完璧に果たしていた。俺は友としての役目を果たせなかった。二度もルカを殺そうとし、二度も彼に銃口を向けたのだから。
ルカを救い出した者たちが、金属片を動かしてくれていた。それが俺にとっては幸いだった。俺は自分の上に落ちていた金属の下から抜け出すことができた。船が爆発する数分前、必死で岸へと飛び込んだ。船から生還した瞬間、言葉にできないほど奇妙な解放感に包まれた。
もう責任を背負いたくない。
ルカの友人でいたくもない。
敵にもなりたくない。
間違っているかどうかを考えず、自由に生きたい。
ロザリアをまだ愛していることで、自分を責めたくない。
彼女を俺から奪ったのはルカだ。罪悪感を抱くべきなのは俺じゃない。
もうルカに対する友情の義務はない。
今、俺が負うべき責任は、自分自身だけだ。
——奪われたものを取り戻す時が来た。
船での出来事から一週間が過ぎていた。
今日はロザリアを迎えに行く日だ。すべては前もって計画していた。
海沿いの断崖に、人里離れた一軒家がある。ルカはその家の存在を知らない。ロザリアを探していた頃、俺は本当に辛い日々を送っていた。誰もそばにいなかった。すべてから逃れるため、俺はその海辺の家に身を潜めていた。
ロザリアとの小さなアルバムも、そこにあった。俺の家に残されていたロザリアの私物もすべてそこにある。ひとつも捨てられなかった。大切に取ってあった。
ロザリアを連れ去り、そこへ連れて行くつもりだった。
二人の男を連れて行った。本当は必要なかったが、家にはマッテオと乳母がいる。邪魔をさせないために、二人に手を貸してもらうつもりだった。
ロザリアをさらうのは簡単なはずだった。丘の上の屋敷にいる武装した男たちは俺を知っている。家へ向かう道を通ることに問題はない。マッテオは眠らせるだけでいい。
昼時だった。ルカは家にいなかった。いつものようにロザリアを一人で残していた。
家に着くと、部下の一人がマッテオを気絶させた。
ロザリアは、俺が死んだと思っている。
訃報を聞いて、悲しんだだろうか。
ドアをノックする前、俺は考えていた。
「ロザリアは、俺が生きていると知ったら、どんな顔をするだろう?」
「ダンテ!」
ドアを開けたロザリアは、俺を見ると心からの微笑みを浮かべた。
俺が生きていることを、本当に喜んでいた。
もし、俺が彼女をさらいに来たと知っても、同じように喜ぶだろうか。
二度もルカを殺そうとしたことを知っても、俺の生存を喜ぶだろうか。
「助かって本当によかった!生きていてくれてよかった!」
そう言ってロザリアは俺に抱きついた。
「今すぐルカに電話するね!」
嬉しそうに携帯を手に取った。
「必要ない」
俺は彼女の手から電話を奪った。
その瞬間、ロザリアは異変を感じたようだった。後ずさりし始めた。
俺を恐れてはいなかったが、警戒していた。信じきれない、そんな目で俺を見ていた。
助けを呼ぼうと乳母の名前を呼びかけたが、俺は彼女を捕まえ、腕をつかんで引き寄せた。
人生で初めて、俺は彼女に乱暴に接した。
そのことを、俺は決して自分で許せない。
だが、俺は疲れ切っていた。本当に、限界だった。
もう悲しみたくない。
ただ、愛する人を、婚約者を取り戻したいだけだった。
ロザリアが叫んだり抵抗したりしないよう、気を失わせる必要があった。そのために、あらかじめ薬を用意していた。彼女の顔に噴霧した。
乳母は気づいたが、部下たちが彼女とエリオを部屋に閉じ込めた。
俺はロザリアを車に乗せた。
さらう計画を立てる中で、赤ん坊も連れて行くことに決めていた。ロザリアは、ジョヴァンニなしでは一分も耐えられないからだ。
ジョヴァンニは部屋で眠っていた。
クローゼットから数着の服を取り出し、バッグを用意した。
赤ん坊を起こさないよう、そっと腕に抱いて家を出た。
あけましておめでとうございます。今年もよろしく。




