表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
愛の残響  作者: あぜるん
55/73

55. ロザリア: 思い出しても、帰る場所は一つ!

すべてを思い出した瞬間、とても奇妙な感覚だった。思い出したはずの出来事が、まるで自分のものではないように感じられた。まるでそれは、他人の記憶を覗き込んでいるかのようだった。

まるで――ダンテの婚約者だったロザリアは、あの火事で本当に焼け死んでしまったかのように。

ロザリアは炎の中で生き延びることができなかった。ダンテに属していた女性は、そこで死んだのだ。


その代わりに、炎の奥深くから、まったく別の存在が現れた。

新しく生まれた魂――ずっとルカを探し続けていた魂。

その魂はロザリアの身体を借りて炎の中から抜け出し、ルカを見つけた。そして、ロザリアの記憶を返したのだ。


その瞬間、ダンテに対して私が感じていたのは、ただ「哀れみ」だけだった。

それ以外の感情は、何ひとつなかった。

大きな空白。

私は彼のものではなかった。だから、ダンテに対しては同情以外、何も感じられなかった。


刑務所から出たあとにダンテと再会した日から、今日までのすべてが目の前をよぎった。

どれほど辛かっただろう。

愛する人が、別の誰かに恋をしている姿を見ること。

長い間探し続けていた愛する人が、他の人と結婚するのを見ること。

そして、その人の子どもを腕に抱くこと。


ダンテの気持ちは理解できた。

もしルカが他の誰かを愛している姿を見たら、私はきっと死んでしまう。

私はダンテを思い出していたけれど、彼を理解するためでさえ、頭に浮かんでいたのはルカだった。


私たちは、ただ静かに向かい合って座っていた。

ダンテの表情は悲しげで、それでもどこか希望を抱いているようだった。

私は「悲しい」としか言えなかった。

本当に悲しかった。けれど、罪悪感はなかった。

なぜなら、ダンテに属していた私は、もうここにはいなかったから。

私にはなれなかった。

私の魂も、私の存在も、すべてルカのもの。

これからも、ずっとそう。


「……本当に、全部思い出したのか?」

ダンテは、私の口から直接その言葉を聞きたがっていた。


「全部、思い出したわ。ごめんなさい……本当に、ごめんなさい」

ロザリアは泣きながら、ただ謝り続けた。


「……俺のところに、戻ってくるのか?」

ダンテは必死に尋ねた。


「戻れない。だって、私は最初からあなたのものじゃなかった。

あなたと一緒にいた“私”は、本当の私じゃない」

ロザリアははっきりと言った。


その答えは、ダンテをさらに傷つけた。

彼の目には涙が浮かんでいた。

何年もの時間、数えきれない出来事を経て、私たちが交わした言葉は、ほんの二言三言だけだった。


ダンテは立ち上がった。


「……待つよ。

いつか、本当の意味で俺のことを思い出してくれる日を」


そう言い残して、ダンテは扉へ向かい、去っていった。


私はしばらく、ソファに座ったまま動けなかった。

ルカはすべてを聞いていた。

二階の階段に座り、私に時間を与えるために待っていたのだ。


しばらくして、彼は降りてきた。

私が泣いているのを見て、耐えきれずに近づいてきた。

何も言わず、ただ私を抱きしめ、そのまま静かに寝室へ連れて行った。

ベッドに私を横たえ、自分も横になり、後ろから強く抱きしめた。


「全部思い出してくれて、嬉しいよ……

でもね、愛しい人。今度は、その思い出すべてを、永遠に忘れる番だ」


ルカは私の耳元で、そう囁いた。


彼は、私がどれほど彼を愛しているかをよく知っていた。

それでも、記憶が戻ったことに不安を感じていた。

ダンテが去る前に言った言葉も、彼の心を乱していた。

ダンテが嘘をついていないこと、その言葉がどれほど本気だったかを、ルカは分かっていた。

ダンテが、本当に私を待ち続けるだろうということも。


「覚えておくべきことは、ただ一つ。

君が帰る場所なんて、どこにもない。

君の居場所は、俺の心。

俺の思考。

俺の身体。

俺の視線。

そして――俺の隣だ。

覚えておくのは、それだけでいい。愛しい人」


そう言いながら、ルカはロザリアの首元に顔を埋め、そっとキスをした。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ