54. ロザリア:記憶が戻った!
ここ数日、ずっと鼻に煙の匂いがついて離れなかった。何度か「家で火事が起きているんじゃないか」と思って、家中を確認したほどだった。その煙の匂いは夜も私を悩ませ、悪夢を見たかのように飛び起きてしまう。起きるたびに、また家の中をすべて確かめていた。
その様子を見て、ルカは心配し始めていた。子どもたちの世話で寝不足だからだと思っていたらしい。もっと休むべきだと言っていた。でも現実的には、どうにもならなかった。乳母一人では、エリオとジョヴァンニの二人を同時に見るのは無理だったからだ。ルカは新しい乳母を探していた。でもそれは簡単なことじゃない。家に新しい人を迎え入れ、子どもたちの世話を任せ、常に一緒に生活することになる。考えるだけでも怖かった。信頼できる人を見つけるのは本当に難しい。ルカはその役目をマッテオに任せていたが、最終的な判断は自分でするつもりだった。
ダンテは刑務所から出てから、私たちと一緒に暮らしていた。当時の私にとって、ダンテはルカの親しい友人という存在だった。でも、やがてすべてが変わった。私が妊娠していた頃、ルカは私をダンテに託していた。その期間に、ダンテは私にとっても大切な友人になった。
けれどジョヴァンニが生まれてから、ダンテは一度も会いに来なかった。それがとても悲しかった。ルカにとってダンテは最も親しい友人で、命を懸けてもいい存在だったはずなのに、それでもジョヴァンニを見に来なかった。ルカとダンテの間に何かがあったのだと思う。何があったのかは分からなかったが、ジョヴァンニに会いに来ない理由はそれだと感じていた。
ジョヴァンニは成長するにつれて、寝かしつけるのがますます大変になっていた。それでも、眠っている息子を眺める時間が私は大好きだった。ジョヴァンニは目を覚まして私の顔を見ると微笑んでくれる。その笑顔を見るためなら、何時間でも彼が目を覚ますのを待てた。
昼頃だった。ジョヴァンニは数時間眠っていた。目を覚ます時間が分かっていたから、目覚める少し前にそばへ行き、あの愛しい笑顔を見るために枕元で待っていた。
「私の宝物、起きたの?」
ロザリアはジョヴァンニを抱き上げた。
ちょうど目を覚ましたばかりだった。すると、リビングからルカの声が聞こえてきて、私ははっとした。こんな時間に帰ってくることはないから、何かあったのではと不安になり、ジョヴァンニを抱いたまま急いでリビングへ降りた。ルカはダンテと一緒に帰ってきていた。二人とも無事そうだった。
「大丈夫? 何かあったの?」
ロザリアは慌てて聞いた。
「すべて順調だ。今日はジョルダーノの重要な武器倉庫の一つを押さえた」
ルカはロザリアに近づき、ジョヴァンニを抱き取った。
ルカはガブリエル・ジョルダーノの武器倉庫の一つを制圧していた。ジョルダーノは何も疑っていなかった。なぜなら、倉庫を襲撃したのは警察だったからだ。それも計画の一部だった。疑われないよう、偽の警察部隊を使ったのだ。その計画を立てたのはルカだった。自分の部下とイワノフの部下で、偽の警察チームを編成していた。
ダンテは私とあまり話さず、ただ体調を気遣う程度だった。まるで私に対して距離を置いているようだった。
「ダンテ、ジョヴァンニに会いたくないの?」
ロザリアは傷ついた声で言った。
ダンテの様子はとても奇妙で、まるで赤ん坊を見たくないかのようだった。でも私が聞いてしまった以上、彼は仕方なくルカのもとへ近づき、赤ん坊を抱き上げた。
「なんて可愛いんだ」
ダンテはジョヴァンニを腕に抱いた。
私たちはみんなリビングに座っていた。ダンテが赤ん坊を抱き、ルカはその隣に座っていた。私は向かいのソファに座っていた。ジョヴァンニはじっとしておらず、小さな手で何かをつかもうとしていた。ダンテは赤ん坊を見つめ、微笑んでいた。
突然、ジョヴァンニがダンテの鼻に噛みついた。ダンテは声を上げて笑った。その笑い声を聞いた瞬間、まるで頭にナイフを突き刺されたような感覚が走った。脳に電気が走ったかのようだった。
「ロザリア、大丈夫か!?」
ルカは立ち上がり、心配そうに私のもとへ駆け寄った。
記憶が戻ったのだ。ダンテの笑い声が、私の記憶を呼び覚ました。息が苦しくなり、涙があふれ出した。
「ダンテ……本当にごめんなさい……全部思い出したの……本当にごめんなさい……」
ロザリアは泣いていた。
私の記憶が戻ったと分かると、ルカは私を強く抱きしめた。ダンテはその場で凍りついたように立ち尽くし、もう笑ってはいなかった。ルカはジョヴァンニを連れて部屋へ行き、私たち二人だけを残した。




