41. ルカ:病院で火事。
今日はロザリアを病院の診察に連れて行く。
お腹の子はまだ生後一か月。今日が初めての検診だ。
家族が殺されてから、この家は俺にとって墓場になった。
家族は家の正面、前庭で惨殺された。家に帰るたび、目の前には血に染まった家族の墓が広がっているようだった。
家は半分闇に包まれていた。まるで、前庭にある見えない墓地が、家に差し込む太陽の光を遮っているかのようだった。
光も温もりも届かず、家は次第に冷え切っていった。
彼らが生きていた頃、リビングにも書斎にも、ほかの部屋にも、至るところに家族の写真が飾られていた。
だが家族を失ってから、写真を見ることができなくなった。
笑顔の彼らを見ると涙が溢れ、写真の中の景色が歪んで見えた。
写真の中では微笑んでいるのに、頭から血が流れているように見えた。
だから俺は、すべての写真を集めてクローゼットにしまい込んだ。
ロザリアがこの家で俺と暮らし始めてから、すべてが少しずつ変わり始めた。
俺は前庭に出ることすらなかった。
それでもロザリアは、時々わざと俺を前庭に連れ出し、家族が殺された場所で一緒に立った。
「ここは、あなたが家族を最後に見た場所。
ここは、家族と別れを告げた場所。
でも、ここは家族の墓じゃない。
ここは、家族が命と魂を置いていった場所なの。
彼らの墓はここじゃない。魂がここにあるの。
彼らはこの家も、あなたも、決して置いていかないわ」
そう言っていた。
ロザリアは、俺にとって墓場だった前庭を、家族といつでも会える楽園に変えてくれた。
クローゼットにしまった写真も、再び飾ってくれた。
リビングの暖炉の上には、いくつかの写真が並んでいる。
ロザリアはよく、その前に立ち、エリオを写真に見せるように抱いていた。
何も言わず、ただエリオを抱いて写真を見つめ、やがて二人で微笑む。
その光景を見てから、家族の写真はもう俺を苦しめなかった。
むしろ、心を温かくしてくれた。
診察には俺がロザリアを連れて行った。
二人ともとても緊張していた。
俺は緊張以上に、ただただ幸せだった。
父親になる。俺たちの子が生まれる。
でも、俺を本当に幸せにしていたのは別の思いだった。
この家に、ロザリアのような美しい存在がもう一人増える。
ロザリア一人で、俺の人生も、この家も照らしてくれた。
そこにもう一人、彼女の一部である小さな命が加われば、
この家は隅々まで光で満たされるだろう。
病院に着き、診察が終わると、医師は問題ないと言った。
ただ、毎月の定期検診は欠かさないよう勧められた。
医師との話が終わり、ロザリアを休憩室に連れて行き、そこで待つよう伝えた。
俺は外と車を確認するため、一度外へ出た。
車は建物の下のガレージにあった。
車の下、上、中を念入りに確認し、外へ出して病院の敷地内に停めた。
車を降り、ロザリアを迎えに再び病院へ向かおうとした、その瞬間。
三人の男が襲いかかってきた。
銃を持っていたが、なぜかナイフで攻撃してきた。
素早く動き、一人の腕を折り、もう一人の頭を壁に叩きつけた。
残りは一人。
仲間の惨状を見て、その男は銃を抜こうとした。
だが、俺のほうが早かった。
相手が銃を構える前に、俺の銃口はすでにその頭に向いていた。
「誰の手先だ?」
ルカは銃を男の頭に突きつけた。
男はすぐに答えなかった。
数秒待った、その瞬間——爆発音が響いた。
「ロザリア!」
ルカは、病院の二階で爆発した方向を見上げた。
二階が爆発し、火災が発生した。
襲ってきた男に構っている時間はなかった。
俺は男の頭を撃ち抜いた。
爆発を見た瞬間、頭が真っ白になった。
だが、すぐに我に返り、病院へ駆け込んだ。
ロザリアを休憩室に残したのは四階だ。
爆発は二階。おそらくガス漏れだろう。
一階は人で溢れていた。
歩ける人々は外へ逃げ、歩けない患者は助けを求めて叫んでいた。
上へ行こうと階段に向かったが、人の波に押し戻される。
人々をかき分け、無理やり押しのけて進み、階段へ走った。
その時、また爆発音がした。
今度は上の階だった。
二階の階段を上ろうとしたが、その一帯は炎に包まれていた。
何とか三階までは上がれた。
だが同じ側の階段では四階へ行けない。
すべて炎に覆われていた。
三階の廊下を通り、反対側の階段を使うしかなかった。
廊下も火の海だった。
歩いていると、燃えた何かが背中に落ちた。
ジャケットが燃え始めた。
脱ぎ捨て、前へ進んだ。
これほど死を恐れたのは、人生で初めてだった。
今じゃない。
ロザリアと子どもを救わなければならない。
今、死ぬわけにはいかない。
階段に辿り着き、四階へ上がった。
ここも炎に包まれていたが、他の階よりはまだましだった。
ロザリアを置いた部屋は、この階の一番奥にある。
廊下の右側は激しく燃えていた。
左側を進もうとした、その時——
一つの部屋の前で、誰かが俺の足を掴んだ。
「助けて……!」
床で燃える女性患者が、ルカの足を掴んでいた。
俺は足を振りほどき、前へ進んだ。
俺は救助者じゃない。
英雄でもない。
俺は地獄の天使だ。
ロザリアを探す許しを神から得て、地獄から出てきた。
この世界にいられる時間は限られている。
ロザリアを連れて、俺の地獄へ戻らなければならない。
ロザリアは、俺の地獄に吹く涼しい風。
彼女を、ここから必ず連れ出す。




