39. ダンテ: 私はこの家を出られませんでした。
もうこの家に一秒たりともいられない。
あの二人を一緒に見ることは、死しか生まない。
彼らにも、自分にも、これ以上傷を負わせないために、今すぐここを出なければならなかった。
何も持っていかない。
車だけを持って出て行くことに決めた。
刑務所に入る前、車も服も、持ち物はすべてこの家に置いてきていた。
出所したとき、すべてがここにあり、何一つ変わっていなかった。
ガレージから車を出し、私は勢いよくこの家を後にした。
別の街へ行くつもりだった。
もしかしたら、別の国に移るかもしれない。
でも今はただ、ここから離れることが大事だった。
どこへ行くかなんてどうでもいい。
この家から、ルカとロザリアから、遠ざかれればそれでよかった。
ルカは、ロザリアが妊娠していると知ったとき、喜びで飛び上がりそうだった。
頭から離れない最後の光景は、幸せそうに見つめ合い、強く抱きしめ合うロザリアとルカの姿だった。
その映像が目から離れず、私を盲目にした。
あまりにもそれに囚われて、どれほどのスピードで車を走らせていたのか、道を外れたことさえ気づかなかった。
目を覚ますと、病院だった。
そばにはルカがいた。
「ダンテ、大丈夫か?」
ルカは本気で心配している様子だった。
目を開けてルカを見た瞬間、私は生き返った気がしなかった。
目覚めたというより、死んで地獄に落ちたような感覚だった。
「大丈夫だよ」
ダンテは落ち着いた声で答えた。
「何があった?」
何も覚えていなかった。
「交通事故だ。スピードを出しすぎて道を外れて、岩にぶつかった。覚えてないのか?」
ルカは何が起きたのかを説明した。
覚えているのは、
最後にお前がロザリアを抱きしめていたことだけだ。
覚えているのは、俺のロザリアの火傷の跡を、お前が撫でていたことだけだ。
覚えているのは、ロザリアが俺ではなく、お前と結婚するということ。
覚えているのは、ロザリアが俺の子ではなく、お前の子を身ごもっているということ。
でも、そのどれも口には出せなかった。
逃げることはできなかった。
事故はかなりひどかったが、奇跡的に軽傷で済んでいた。
右肩と右足を強く打ち、しばらく歩くのは困難だったが、それだけだった。
その日、ルカは病院で私のそばを離れなかった。
そして翌日、またあの地獄へと私を連れ戻した。
私はあの家から逃げ切れなかった。
ルカの家に戻ると、ドアを開けたのはロザリアだった。
地獄となったその家で、彼女はまるで光のように見えた。
実を言えば、彼女に出会う前から、私はこの家に住んでいた。
その頃は、親友であり、唯一の身内のような存在の家だったから、幸せだった。
この家が地獄になった理由は、ロザリアがここにいるからだ。
地獄に変えたのも彼女で、
私が逃げ出したくなる理由も彼女。
でも、この家にいるとき、私に耐える力をくれるのもロザリアだった。
どうしてこんなことになるのか、自分でも分からない。
今は他に選択肢がなかった。
回復するまで、この家にいるしかなかった。
戻ってきてから、私は一度も自分の部屋を出なかった。
ルカは朝早く出て、夕食前には帰らなかった。
ロザリアは毎朝、私のために朝食を用意して部屋まで運んできてくれた。
腕がまだ治っていなかったため、時には自分の手で食べさせてくれることもあった。
それが愛情からではないことは分かっていた。
ただ、私がルカの一番の親友だから、そうしてくれているだけだ。
それでも、彼女が私の世話をしてくれること、
私の回復のために何かをしてくれることが、嬉しかった。
事故から一週間が経っていた。
ロザリアとルカの結婚式の日が近づいていた。
一週間後、ロザリアはルカの妻になる。
体は回復していくのに、
頭と心は、毎日少しずつ死んでいった。
事故以来、私は部屋から出ておらず、まともに歩いてもいなかった。
「ダンテ、このままじゃ良くならないわ。足が痛くても、少し歩かないと」
ロザリアは夕食を持ってきていた。
彼女は、ルカが帰ってくる前に、エリオに食事をさせて寝かしつけなければならなかったため、
私の夕食を少し早めに持ってきていた。
「君がそばにいてくれるなら、歩いてみるよ」
ダンテは、出所してから初めて微笑んだ。
彼女は、私を一人にしなかった。
ロザリアは立ち上がるのを手伝ってくれた。
足を地面につけると痛みが走り、
彼女は支えるために私の腰に手を回した。
「ダンテ、私に体重を預けて」
私は左手でロザリアの腰を抱いた。
彼女は、シルクのように滑らかな、生地の薄いネイビーのドレスを着ていた。
丈はヒールまで届き、袖は短かった。
布越しでも、彼女の体温がはっきりと伝わってきた。
その瞬間、頭が真っ白になった。
彼女も何か感じたのか、
何かを思い出したのか、
それを確かめたくてロザリアを見た。
でも、何も変わっていなかった。
彼女は私を見てすらいなかった。
ただ、私を歩かせることだけに集中していた。
庭まで連れて行く、それだけが彼女の目的だった。
庭で数分歩いたあと、
家のリビングの窓に、ルカの姿が見えた。
今日は少し早く帰ってきたようだった。
私たちを見た瞬間、すぐに庭へ向かってきた。
ルカは足早に近づいてきた。
その視線は奇妙だった。
まるで、私が誰なのか分かっていながら、それを認めたくないようだった。
「すごく会いたかった」
ルカはロザリアを抱きしめ、キスをした。
私はロザリアに支えられ、彼女の腰に腕を回したままだった。
ルカは近づくと、ロザリアを私から引き離した。
「愛しい人、これからはダンテが庭に出て歩くときは、マッテオが付き添う。
今日、彼にそう言っておくよ。
君は妊娠しているんだ、無理をさせたくない」
ルカは、ロザリアのことを心から案じていた。




