表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
愛の残響  作者: あぜるん
39/73

39. ダンテ: 私はこの家を出られませんでした。

もうこの家に一秒たりともいられない。

あの二人を一緒に見ることは、死しか生まない。

彼らにも、自分にも、これ以上傷を負わせないために、今すぐここを出なければならなかった。


何も持っていかない。

車だけを持って出て行くことに決めた。


刑務所に入る前、車も服も、持ち物はすべてこの家に置いてきていた。

出所したとき、すべてがここにあり、何一つ変わっていなかった。


ガレージから車を出し、私は勢いよくこの家を後にした。

別の街へ行くつもりだった。

もしかしたら、別の国に移るかもしれない。


でも今はただ、ここから離れることが大事だった。

どこへ行くかなんてどうでもいい。

この家から、ルカとロザリアから、遠ざかれればそれでよかった。


ルカは、ロザリアが妊娠していると知ったとき、喜びで飛び上がりそうだった。

頭から離れない最後の光景は、幸せそうに見つめ合い、強く抱きしめ合うロザリアとルカの姿だった。


その映像が目から離れず、私を盲目にした。

あまりにもそれに囚われて、どれほどのスピードで車を走らせていたのか、道を外れたことさえ気づかなかった。


目を覚ますと、病院だった。

そばにはルカがいた。


「ダンテ、大丈夫か?」

ルカは本気で心配している様子だった。


目を開けてルカを見た瞬間、私は生き返った気がしなかった。

目覚めたというより、死んで地獄に落ちたような感覚だった。


「大丈夫だよ」

ダンテは落ち着いた声で答えた。

「何があった?」


何も覚えていなかった。


「交通事故だ。スピードを出しすぎて道を外れて、岩にぶつかった。覚えてないのか?」

ルカは何が起きたのかを説明した。


覚えているのは、

最後にお前がロザリアを抱きしめていたことだけだ。

覚えているのは、俺のロザリアの火傷の跡を、お前が撫でていたことだけだ。

覚えているのは、ロザリアが俺ではなく、お前と結婚するということ。

覚えているのは、ロザリアが俺の子ではなく、お前の子を身ごもっているということ。


でも、そのどれも口には出せなかった。

逃げることはできなかった。


事故はかなりひどかったが、奇跡的に軽傷で済んでいた。

右肩と右足を強く打ち、しばらく歩くのは困難だったが、それだけだった。


その日、ルカは病院で私のそばを離れなかった。

そして翌日、またあの地獄へと私を連れ戻した。

私はあの家から逃げ切れなかった。


ルカの家に戻ると、ドアを開けたのはロザリアだった。

地獄となったその家で、彼女はまるで光のように見えた。


実を言えば、彼女に出会う前から、私はこの家に住んでいた。

その頃は、親友であり、唯一の身内のような存在の家だったから、幸せだった。


この家が地獄になった理由は、ロザリアがここにいるからだ。

地獄に変えたのも彼女で、

私が逃げ出したくなる理由も彼女。


でも、この家にいるとき、私に耐える力をくれるのもロザリアだった。

どうしてこんなことになるのか、自分でも分からない。


今は他に選択肢がなかった。

回復するまで、この家にいるしかなかった。


戻ってきてから、私は一度も自分の部屋を出なかった。

ルカは朝早く出て、夕食前には帰らなかった。


ロザリアは毎朝、私のために朝食を用意して部屋まで運んできてくれた。

腕がまだ治っていなかったため、時には自分の手で食べさせてくれることもあった。


それが愛情からではないことは分かっていた。

ただ、私がルカの一番の親友だから、そうしてくれているだけだ。


それでも、彼女が私の世話をしてくれること、

私の回復のために何かをしてくれることが、嬉しかった。


事故から一週間が経っていた。

ロザリアとルカの結婚式の日が近づいていた。

一週間後、ロザリアはルカの妻になる。


体は回復していくのに、

頭と心は、毎日少しずつ死んでいった。


事故以来、私は部屋から出ておらず、まともに歩いてもいなかった。


「ダンテ、このままじゃ良くならないわ。足が痛くても、少し歩かないと」

ロザリアは夕食を持ってきていた。


彼女は、ルカが帰ってくる前に、エリオに食事をさせて寝かしつけなければならなかったため、

私の夕食を少し早めに持ってきていた。


「君がそばにいてくれるなら、歩いてみるよ」

ダンテは、出所してから初めて微笑んだ。


彼女は、私を一人にしなかった。

ロザリアは立ち上がるのを手伝ってくれた。


足を地面につけると痛みが走り、

彼女は支えるために私の腰に手を回した。


「ダンテ、私に体重を預けて」


私は左手でロザリアの腰を抱いた。

彼女は、シルクのように滑らかな、生地の薄いネイビーのドレスを着ていた。

丈はヒールまで届き、袖は短かった。


布越しでも、彼女の体温がはっきりと伝わってきた。

その瞬間、頭が真っ白になった。


彼女も何か感じたのか、

何かを思い出したのか、

それを確かめたくてロザリアを見た。


でも、何も変わっていなかった。

彼女は私を見てすらいなかった。

ただ、私を歩かせることだけに集中していた。

庭まで連れて行く、それだけが彼女の目的だった。


庭で数分歩いたあと、

家のリビングの窓に、ルカの姿が見えた。


今日は少し早く帰ってきたようだった。

私たちを見た瞬間、すぐに庭へ向かってきた。


ルカは足早に近づいてきた。

その視線は奇妙だった。

まるで、私が誰なのか分かっていながら、それを認めたくないようだった。


「すごく会いたかった」

ルカはロザリアを抱きしめ、キスをした。


私はロザリアに支えられ、彼女の腰に腕を回したままだった。

ルカは近づくと、ロザリアを私から引き離した。


「愛しい人、これからはダンテが庭に出て歩くときは、マッテオが付き添う。

今日、彼にそう言っておくよ。

君は妊娠しているんだ、無理をさせたくない」


ルカは、ロザリアのことを心から案じていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ