35. ダンテ: 見つけなければよかった!
車を降りると、ロザリアはルカではなく、まっすぐ私のほうへ歩いてきた。
彼女は、光沢のあるシルク生地の、長くてストンとした白いワンピースを身にまとっていた。肩は細いストラップで、上に羽織った白い編みのカーディガンは、雲のように軽く、頼りなく肩に乗っているだけだった。髪は下ろしていた。ロザリアは火事の前、いつも髪を結んでいた。下ろした姿を見たのは、ほんの数えるほどしかない。
ロザリアがこちらへ歩いてくるのを見て、胸の奥に小さな希望が灯った。――僕を思い出したのか?
「おかえり、ダンテ」
――ロザリアは優しく、ダンテを抱きしめた。
抱きしめられた瞬間、腕を引くことができず、思わずこちらも彼女を抱き返してしまった。腕は止められなかった。でも、手は一線を越えなかった。抱きしめながらも、手は怯えるように触れていただけだ。
理性は、まだ完全に手とのつながりを失っていなかった。触れてはいけないと、手だけは分かっていた。
ロザリアはもう僕のものではない。今の彼女は、親友の婚約者なのだ。
この事実を、僕はようやく「手」にだけ伝えることができていた。
それでも、目はロザリアを愛おしさと切なさで見つめていた。彼女を目にした瞬間、心臓は胸から飛び出しそうになり、胸に残る火傷の痕は、熱い炭を押し当てられたように痛んだ。
頭が追いつかない。ただ、手だけを止めるのが精一杯だった。
彼女に抱きしめられたまま、香りを胸いっぱいに吸い込んだ。その瞬間、意識は完全に迷子になった。
カーディガンの肩がずれ、彼女の肩があらわになる。視線を抑えることができなかった。
ロザリアの肩に残る火傷の痕が目に入った瞬間、涙が数滴こぼれ落ちた。
彼女の髪が、僕の涙がその傷口に落ちるのを遮った。
ロザリアは、私の涙に気づくこともなく、そっと離れてルカのもとへ向かった。
彼女は僕を思い出したわけではなかった。ただ、礼を言いたかっただけだ。
つらい時期、ルカを支えてくれてありがとう――その気持ちを伝えるために、抱きしめただけだった。
私たちは皆でキッチンへ向かった。そこにいたのは三人だけだった。乳母とエリオも家にはいたが、乳母はエリオを寝かしつけに連れて行っていた。
私が出所したので、ルカは数日間、仕事を休んでいた。代わりにロッコとマッテオを行かせていたのだ。
キッチンに入ると、テーブルの上にはさまざまな料理が並んでいた。
すべてロザリアが用意してくれたものだった。正確には「私のため」ではなく、「ルカの友人であるダンテ」のために。
私たちは席に着いた。喉に何かが詰まったようで、とても食べられる状態ではなかった。
ロザリアは私が何も口にしないのを見ると近づき、皿に料理を取り分けてくれた。
彼女を無下にはできず、数口だけ食べたが、喉を刃物で切られるような痛みだった。
「もう刑務所を出たんだ。これからは、婚約者探しを続けられるな。でも今度は、一緒に探そう」
――沈黙を破ったのはルカだった。
「そのうち考える」
――ダンテは、話したくなかった。
「そうね。一緒に探せば、きっとすぐ見つかるわ」
――ロザリアが続けた。
「誰も探したくない!」
――ダンテは手にしていたフォークをテーブルに叩きつけ、ロザリアに向かって声を荒げた。
ロザリアとは、何年ぶりかでようやく再会したばかりだった。まだ何一つ、きちんと話してもいない。それなのに、僕は彼女に怒鳴ってしまった。
ロザリアとルカは黙り込んだ。
怒鳴ったことを、激しく後悔した。これ以上、その場にいることができず、庭へ出た。
「私が行くわ」
――ロザリアはダンテの後を追おうとした。
「行かないで、愛しい人。きっと、一人になりたいんだ」
――ルカはロザリアを引き止めた。
「本当につらい人ほど、ひとりではいたくないのよ」
――そう言って、ロザリアは庭にいるダンテのもとへ向かった。
裏庭のソファに腰を下ろし、虚空を見つめていた。
ふいに目の前に彼女が立ち、驚いた。怒鳴ったのは僕なのに、彼女は怒っていなかった。
「ごめんなさい、ダンテ」
――ロザリアは、ダンテの隣に座った。
謝る必要なんて、彼女にはなかった。本当にすべきことは、僕を思い出すことだった。手を取って、一緒にこの家を出て行くことだった。
「君は、何も悪くない。声を荒げたのは僕だ。ごめん」
――ダンテは、ロザリアの目を見つめていた。
「少しは落ち着いた?」
――ロザリアが尋ねた。
どうして平気でいられる?
まるで地獄の真ん中に突き落とされた気分だ。
君が僕を思い出してくれさえすれば、それだけで救われるのに。
――そんなこと、口に出せるはずもなかった。
「大丈夫だ」
――ダンテは答えた。
「私は中に戻るわ。ルカを呼んできたほうがいい?」
――ロザリアはソファから立ち上がった。
今、一番会いたくないのがルカだった。顔を見るたび、怒りは募るばかりだった。
ルカは家のリビングから、窓越しにこちらを見ていた。
「行かないで。もう少しだけ、ここにいてほしい」
――ダンテは、ロザリアを引き止めた。
「婚約者を探したいんだと思っていたけれど」
――ロザリアは、再びダンテの隣に腰を下ろした。
「誰よりも、見つけたい。でも……見つけた時、もし彼女が別の誰かを愛していたら。その時、僕はどうすればいい?」
――ダンテは、ロザリアのほうへ向き直った。
「とても難しい質問ね、ダンテ。心から愛しているなら、取り戻そうとするべきよ。それが叶わないなら……彼女のいない道を歩いていくしかないわ」
――ロザリアは、ダンテのことを心から案じていた。
どうやって、ロザリアを取り戻せばいいのか――自分自身に問いかけた。
君の言うようにはできない。君を取り戻そうなんて、できるはずがない。
君は、かけがえのない親友が愛した女性で、今はルカの婚約者だ。
ルカに対して、そんなことはできない。
確かに、君を奪われたことへの怒りは尽きない。
でも、ルカが君に恋をした時、君が誰なのかを知らなかった。
ルカもまた、僕と同じくらい、どうしようもなく追い詰められているのだから。




