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愛の残響  作者: あぜるん
33/73

33. ルカ:ロザリアは愛を証明した!

ジョルダーノは俺たちと“遊んで”いた。

どれだけ憎んでいても、あの男が約束を破らないことは知っていた。

残酷で冷酷でも、一度言ったことは必ず守る──そのことで裏社会では有名だった。


ロザリアがあの短剣を手に取り、自分の体に突き立てれば、ジョルダーノは俺を生かして帰す。

だがロザリアに傷がつくなら、俺が生き残る意味なんてなかった。


男が短剣をロザリアへ差し出した瞬間、血の気が引いた。

ロザリアは迷わずやるつもりだった。

俺を助けるためなら、迷いなく自分の命を差し出す覚悟だった。


ロザリアはゆっくり立ち上がった。

その姿は本当に“勇敢”に見えた。

いつもの「仕方なく」ではなく、今回の彼女は誇りと覚悟に満ちていた。

まるで自分の血で愛を証明できることが、ロザリアにとって“美しい行い”のように。


彼女は短剣を受け取ると、胸と腹の間あたりの柔らかい場所に迷いなくあてがった。

そして俺を見つめた。

瞳には、一切怖れがなかった。

むしろ、俺を救えるかもしれないという希望で満ちていた。


ロザリアはまばたきもせず、その短剣を自分の腹へ突き立てた。


あの刃が俺の心臓に刺さればよかった。

愛を証明するためにこんなやり方をする必要があるのなら、せめて俺がやりたかった。

ロザリアがこんな痛みに耐える姿など、二度と見たくなかった。


彼女は短剣を深く突き刺し、そのまま抜いた。

白いカーディガンが一瞬で真っ赤に染まった。

血の出る傷を手で押さえながら、その場に膝をついた。

それでも瞳の中の“希望”と“安堵”は消えなかった。

短剣も手から離さなかった。


ガブリエル・ジョルダーノは約束を守った。

俺は殺されなかった。


俺はロザリアの腕の中へ走り寄った。

ロザリアはまだ意識があった。


「愛しい人、車はどこに置いた?」

ロザリアを抱きかかえ、走りながら俺は必死に声をかけた。


「道の…終わりの…左側…ぶどう畑の…奥…」

ロザリアは半開きの目で、傷口を押さえながら弱々しく答えた。


そう言い終えた瞬間、彼女の瞼が閉じた。


ロザリアの目が閉じたとたん、俺の世界は真っ暗になった。

ロザリアは俺の“光”だった。


「だめだ、愛しい人、行くな! 行かないでくれ!

俺から全部奪って行くな!

まだ俺に色のついたシャツを作ってくれるって言ったじゃないか!

俺のタンスを黒一色のままにするつもりか!?

夢も、誇りも、お前に全部預けたんだ!

せめて俺の涙だけは返してくれ。

俺に家族をくれるはずだっただろ…。

こんなふうに全部盗んで、泥棒みたいに消えるなんて許さないぞ…!

首についた俺の涙を返せ。

預けた夢も返せ。

約束してくれた家族も、子どもも返せ。

色も、光も…全部返してくれ!!」


俺はロザリアを抱えたまま車に向かって走った。


ロザリアを病院に運び込んだが、出血がひどく絶望的だった。

すぐ手術に入った。

数分後、輸血が必要だと言われた。

幸い、俺の血液型が合った。


手術後も数時間は目を覚まさなかった。

だが医者は「この状態なら正常です」と言った。

やっと呼吸が戻った気がした。

やっと息ができた。


ロッコを呼び出し、仕事を数日任せ、俺はロザリアのそばを離れないことにした。


ロザリアが目を覚ましたのは、その数時間後だった。

俺はベッドの横に座っていた。

彼女が瞳を開いた瞬間、暗闇だった世界が一気に明るくなった。


「愛しい人…生きてる…。無事で良かった…」

ロザリアは微笑んで俺を見た。


キスしようとして身を寄せてきたが、俺は彼女を制した。

俺の方からそっと顔を寄せた。


「だめだよ、愛しい人。動かないで。今、輸血してるんだ。休まなきゃ」

俺は彼女の頬にそっと触れてキスをした。


「あなたが…血をくれたの?」

ロザリアは腕を見つめた。


「そうだよ、愛しい人。」


あれほど出血して、今も傷が痛むはずなのに、彼女は本当に幸せそうだった。


「どうしてそんなに幸せそうなの?

深い傷なんだぞ?

あれだけ血を流したんだ…痛いはずだろ?」

俺は彼女の頬に手を添えて聞いた。


「幸せじゃない理由なんてないよ。

あなたが生きてる。

無事にそばに居る。

それだけで十分。

しかも今、私の血管を流れてるのはあなたの血なんだよ。

私の心臓は、あなたの血で動いてる。

こんなに素敵なこと、他にある?」

ロザリアは微笑んだ。


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