表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
愛の残響  作者: あぜるん
21/73

21. ロザリアとルカ: 今日も誰かが死んだよ!

1. ロザリア


ルカが戻ってくるまで、もうあまり時間がなかった。

彼が帰ってきたらすぐに出かける予定だったから、待たせないように服だけは先に用意しておいた。

どこへ連れていかれるのか分からなかったので、私は黒のベルベットのワンピースを選んだ。

ベルベット特有のほのかな光沢があって、そこに淡いピンク色の小さな花の刺繍が繊細に施されていた。

丈は長すぎず、膝から数センチ下。胸元は四角く開いたデザインで、袖は短いが肩はきちんと隠れる形。

靴は黒のローヒールで、つま先のとがったクラシックなものにするつもりだった。


「準備できたか、愛しい人?」

ルカが私の部屋へ入ってきた。


考え事をしていて、彼が来たことに気づかなかった。

ドレスも用意してあったので、待たせることなく着替えてすぐ部屋を出た。

ルカは私を、クラシックでとても雰囲気のあるレストランへ連れて行った。

中央にある二人席に座り、私たちがメニューを見ていたちょうどその時——

一人の女性がテーブルへ近づいてきた。


私たちと同年代くらいの女性。

黒の、体にぴったり沿う細身のドレスを着ていて、胸元はストレートにカットされ、肩から細いストラップが落ちていた。

黒く波打つ髪に、青い瞳。

彼女はルカへ声をかけながら、胸を強調するようにテーブルに寄りかかり、身を乗り出した。

まるで豊かな胸元を見せつけたいかのように。

ルカはその声に反応して、メニューから顔を上げ、彼女の顔をまっすぐ見た。


「ルカ・バルディーニ! 寂しかった?」

身を乗り出したその女性が甘えるように言う。


「寂しくなんかない。」

ルカは明らかに不快だった。


「相変わらずほんと冷たいんだから。」

彼女は髪を横へ払った。


「席へ戻れ。二度と近づくな。」

ルカは静かだが鋭い声で言った。



2. ルカ


「元カノ?」

ロザリアはもうメニューどころではなかった。


「違う。ただ酔ってたときに数回関係を持っただけだ。」

ルカはロザリアの表情が曇ったことにすぐ気づいた。


どうして今夜あいつが現れたんだ。

あの女なんてどうでもいい。

だがロザリアがあいつに嫉妬しているのを見るのは胸が痛む。

俺にとってロザリアより価値があって、美しくて、上品で、魅力的な女なんて存在しない。

ロザリアがそれを分かってくれさえすれば…

分かっていれば、きっとこんな嫉妬はしないのに。


「何回恋をしたの?」

ロザリアが気になったようだった。


「二回。最初はかなり若い頃、大学時代だ。二回目はその後。」

今日は正直、こんな話をしたくなかった。


「最初の子を好きだった理由は?」

ロザリアはワインを一口飲み、落ち着いた声で続けた。


「俺が若くて、彼女は綺麗で魅力的だった。ただそれだけだ。」

ルカも自分のグラスにワインを注いだ。


「じゃあ二人目は? どうして好きだったの?」

ロザリアはさらに聞いた。


「趣味も好きなものもよく似ていて、一緒にいると楽しかったからだ。」

ルカは淡々と答えた。


ロザリアの表情はすっかり沈んでしまっていた。

彼女と祝う初めての誕生日のはずが、台なしになりつつあった。


「じゃあ、どうして私を好きなのか…聞かないの?」

ルカはたまらず尋ねた。


「聞けない。」

ロザリアはまたワインを飲んだ。


「どうして?」

ルカは驚いた。


「だって…一度も“好き”って言ってないもの。」

そう言ってロザリアは席を立ち、トイレへ向かった。


ロザリアが言った瞬間、胸が締めつけられた。

俺は本当に、一度も“愛してる”と口にしていなかった。

その事実に気づいた途端、とても大事なものを落としてしまったように感じた。

埋められない溝が、俺たちの間にできてしまったような感覚だった。

ロザリアを愛することに必死で、その気持ちを伝えることを忘れていた——

そう気づいた。


彼女が戻ってくるのを考えながら待っていたが、数分経っても戻らない。

不安になり、トイレへ向かった。

扉には小さな窓があり、中を覗くことができた。


ロザリアはうつむいて、バッグの中を探していた。

だがその後ろに、さっきの元カノが立っていた。

小さな拳銃をロザリアに向けて、今にも引き金を引こうとしていた。

ロザリアは気づいていなかった。


「ロザリア、外で待ってろ。」

俺がトイレに入るやいなや、あの女は驚いて銃をバッグに隠した。


ロザリアには、出て行ってほしいとだけ言った。

彼女は黙って出ていき、扉を閉めた。

だがその顔には、怒りとも悲しみとも言えない、複雑な感情が浮かんでいた。


「何をするつもりだった?」

俺は静かだが怒りを抑えた声で言い、右手で女の腰をつかんで引き寄せた。


「何もしてないわよ、落ち着きなさい…ねえ。」

女は俺の肩に腕を回し、髪に触れようとした。


ロザリアがまだ行っていないことは分かっていた。

洗面台の鏡に、扉の小窓の映り込みが見えたからだ。

ロザリアはそこから、失望した目でこちらを見つめていた。

その視線はまるで

「やめて、ルカ…その女に触れないで」

と叫んでいるようだった。



3. ロザリア

彼があの女とあんなに近くにいるのを見た瞬間、まるで世界が崩れ落ちたみたいだった。ルカが今にも彼にキスするんじゃないかと一瞬思って、心の底から震えた。ルカを見つけたあの日、銃を持った男たちに連れ去られそうになったときでさえ、こんな恐怖は感じなかった。


ルカは右手で女の腰をつかんでいた。それから、左手を上げて彼女の髪を後ろへ払った。ルカがその女に触れるたびに、私の世界は少しずつ壊れていく気がした。

でも、そのとき気づいた。ルカの左手が後ろへ伸び、腰のホルスターから銃を抜いたのだ。そして女の頭を撃った。

女の血が洗面所の白い照明を真っ赤に染めた。


「行くぞ。」

ルカは洗面所を出ると、私の手をつかんでその場から連れ出した。


もうすっかり雰囲気は台無しだった。レストランでは何一つ口にしないまま、そのまま帰ることになった。ルカは車をいつもより速く走らせていた。

できるだけ早く家に戻りたいのだろう。

しばらく私たちは黙っていた。


「どうしてあの女、銃なんて持ってたの? あの人もマフィアなの?」

沈黙を破ったのは私だった。


「違うよ。」

ルカはその質問に、思わず声を立てて笑った。

「銃を持ってる人間が全員マフィアってわけじゃないさ、恋人。」

そう言って、にこっと私を見た。

「彼女とは夜のクラブで知り合ったんだ。いつもクラブに入り浸っていてな。酔った連中に絡まれることがよくあったから、護身用に銃を持ち歩いてただけさ。」

ルカは淡々と説明した。


「でも守れなかったね。かわいそうに。」

私はほんの少しだけ微笑んだ。


「……もしかして、あの女を殺したこと、嬉しかったのか? 俺の勘違いか?」

ルカは驚いたように私を見た。


「合ってるよ。だってこれで、あなたに触れられる女がひとり減ったんだもの。」

私は車の窓の外を見ながら言った。


「君が幸せでいられるなら……俺はローマでだって大量虐殺ぐらいやってみせる。」

ルカはその女を殺したことを、微塵も後悔していなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ