21. ロザリアとルカ: 今日も誰かが死んだよ!
1. ロザリア
ルカが戻ってくるまで、もうあまり時間がなかった。
彼が帰ってきたらすぐに出かける予定だったから、待たせないように服だけは先に用意しておいた。
どこへ連れていかれるのか分からなかったので、私は黒のベルベットのワンピースを選んだ。
ベルベット特有のほのかな光沢があって、そこに淡いピンク色の小さな花の刺繍が繊細に施されていた。
丈は長すぎず、膝から数センチ下。胸元は四角く開いたデザインで、袖は短いが肩はきちんと隠れる形。
靴は黒のローヒールで、つま先のとがったクラシックなものにするつもりだった。
「準備できたか、愛しい人?」
ルカが私の部屋へ入ってきた。
考え事をしていて、彼が来たことに気づかなかった。
ドレスも用意してあったので、待たせることなく着替えてすぐ部屋を出た。
ルカは私を、クラシックでとても雰囲気のあるレストランへ連れて行った。
中央にある二人席に座り、私たちがメニューを見ていたちょうどその時——
一人の女性がテーブルへ近づいてきた。
私たちと同年代くらいの女性。
黒の、体にぴったり沿う細身のドレスを着ていて、胸元はストレートにカットされ、肩から細いストラップが落ちていた。
黒く波打つ髪に、青い瞳。
彼女はルカへ声をかけながら、胸を強調するようにテーブルに寄りかかり、身を乗り出した。
まるで豊かな胸元を見せつけたいかのように。
ルカはその声に反応して、メニューから顔を上げ、彼女の顔をまっすぐ見た。
「ルカ・バルディーニ! 寂しかった?」
身を乗り出したその女性が甘えるように言う。
「寂しくなんかない。」
ルカは明らかに不快だった。
「相変わらずほんと冷たいんだから。」
彼女は髪を横へ払った。
「席へ戻れ。二度と近づくな。」
ルカは静かだが鋭い声で言った。
2. ルカ
「元カノ?」
ロザリアはもうメニューどころではなかった。
「違う。ただ酔ってたときに数回関係を持っただけだ。」
ルカはロザリアの表情が曇ったことにすぐ気づいた。
どうして今夜あいつが現れたんだ。
あの女なんてどうでもいい。
だがロザリアがあいつに嫉妬しているのを見るのは胸が痛む。
俺にとってロザリアより価値があって、美しくて、上品で、魅力的な女なんて存在しない。
ロザリアがそれを分かってくれさえすれば…
分かっていれば、きっとこんな嫉妬はしないのに。
「何回恋をしたの?」
ロザリアが気になったようだった。
「二回。最初はかなり若い頃、大学時代だ。二回目はその後。」
今日は正直、こんな話をしたくなかった。
「最初の子を好きだった理由は?」
ロザリアはワインを一口飲み、落ち着いた声で続けた。
「俺が若くて、彼女は綺麗で魅力的だった。ただそれだけだ。」
ルカも自分のグラスにワインを注いだ。
「じゃあ二人目は? どうして好きだったの?」
ロザリアはさらに聞いた。
「趣味も好きなものもよく似ていて、一緒にいると楽しかったからだ。」
ルカは淡々と答えた。
ロザリアの表情はすっかり沈んでしまっていた。
彼女と祝う初めての誕生日のはずが、台なしになりつつあった。
「じゃあ、どうして私を好きなのか…聞かないの?」
ルカはたまらず尋ねた。
「聞けない。」
ロザリアはまたワインを飲んだ。
「どうして?」
ルカは驚いた。
「だって…一度も“好き”って言ってないもの。」
そう言ってロザリアは席を立ち、トイレへ向かった。
ロザリアが言った瞬間、胸が締めつけられた。
俺は本当に、一度も“愛してる”と口にしていなかった。
その事実に気づいた途端、とても大事なものを落としてしまったように感じた。
埋められない溝が、俺たちの間にできてしまったような感覚だった。
ロザリアを愛することに必死で、その気持ちを伝えることを忘れていた——
そう気づいた。
彼女が戻ってくるのを考えながら待っていたが、数分経っても戻らない。
不安になり、トイレへ向かった。
扉には小さな窓があり、中を覗くことができた。
ロザリアはうつむいて、バッグの中を探していた。
だがその後ろに、さっきの元カノが立っていた。
小さな拳銃をロザリアに向けて、今にも引き金を引こうとしていた。
ロザリアは気づいていなかった。
「ロザリア、外で待ってろ。」
俺がトイレに入るやいなや、あの女は驚いて銃をバッグに隠した。
ロザリアには、出て行ってほしいとだけ言った。
彼女は黙って出ていき、扉を閉めた。
だがその顔には、怒りとも悲しみとも言えない、複雑な感情が浮かんでいた。
「何をするつもりだった?」
俺は静かだが怒りを抑えた声で言い、右手で女の腰をつかんで引き寄せた。
「何もしてないわよ、落ち着きなさい…ねえ。」
女は俺の肩に腕を回し、髪に触れようとした。
ロザリアがまだ行っていないことは分かっていた。
洗面台の鏡に、扉の小窓の映り込みが見えたからだ。
ロザリアはそこから、失望した目でこちらを見つめていた。
その視線はまるで
「やめて、ルカ…その女に触れないで」
と叫んでいるようだった。
3. ロザリア
彼があの女とあんなに近くにいるのを見た瞬間、まるで世界が崩れ落ちたみたいだった。ルカが今にも彼にキスするんじゃないかと一瞬思って、心の底から震えた。ルカを見つけたあの日、銃を持った男たちに連れ去られそうになったときでさえ、こんな恐怖は感じなかった。
ルカは右手で女の腰をつかんでいた。それから、左手を上げて彼女の髪を後ろへ払った。ルカがその女に触れるたびに、私の世界は少しずつ壊れていく気がした。
でも、そのとき気づいた。ルカの左手が後ろへ伸び、腰のホルスターから銃を抜いたのだ。そして女の頭を撃った。
女の血が洗面所の白い照明を真っ赤に染めた。
「行くぞ。」
ルカは洗面所を出ると、私の手をつかんでその場から連れ出した。
もうすっかり雰囲気は台無しだった。レストランでは何一つ口にしないまま、そのまま帰ることになった。ルカは車をいつもより速く走らせていた。
できるだけ早く家に戻りたいのだろう。
しばらく私たちは黙っていた。
「どうしてあの女、銃なんて持ってたの? あの人もマフィアなの?」
沈黙を破ったのは私だった。
「違うよ。」
ルカはその質問に、思わず声を立てて笑った。
「銃を持ってる人間が全員マフィアってわけじゃないさ、恋人。」
そう言って、にこっと私を見た。
「彼女とは夜のクラブで知り合ったんだ。いつもクラブに入り浸っていてな。酔った連中に絡まれることがよくあったから、護身用に銃を持ち歩いてただけさ。」
ルカは淡々と説明した。
「でも守れなかったね。かわいそうに。」
私はほんの少しだけ微笑んだ。
「……もしかして、あの女を殺したこと、嬉しかったのか? 俺の勘違いか?」
ルカは驚いたように私を見た。
「合ってるよ。だってこれで、あなたに触れられる女がひとり減ったんだもの。」
私は車の窓の外を見ながら言った。
「君が幸せでいられるなら……俺はローマでだって大量虐殺ぐらいやってみせる。」
ルカはその女を殺したことを、微塵も後悔していなかった。




