13.ルカ:キスさせてくれないんだよ!
1.
ここ数日は本当に息が詰まるようだった。
ロレンツォ・フォンタナがとうとう会社の仕事の邪魔をし始め、頻繁に攻撃を仕掛けてくるようになっていた。
ロレンツォは私を怯えさせたいのだ。大手企業たちが彼ではなく、私と契約を結んでいるせいで、彼はこの数ヶ月まともに取引を取れず、大きな損失を抱えていた。
そのせいで、ここ数日はロザリアとエリオにほとんど構ってやれなかった。
だが、今日は珍しく早く帰ることができた。
家に入ると、静まり返っていた。
乳母がエリオを抱いて二階へ上がっていくところだった。エリオは眠っていた。起こしたくなくて声をかけなかった。
ロザリアの姿が見えない。部屋にいるかと思い、私も二階へ上がった。
階段を上がって廊下に入ったとき、彼女が見えた。廊下の端にある書斎にいた。顔を本棚の方へ向け、何かを手にしてじっと見つめていた。
何を見ているのか気になり、音を立てないように近づいた。
彼女の手には、私が笑っているときに撮られた写真があった。モノクロで、背景には高層ビルが映っていた。
「そんなに…俺の笑顔、好きなの?」
ルカはそっと後ろからロザリアに近づいた。
「綺麗なものは、誰だって好きよ。」
ロザリアは写真をそっと机に戻した。
静かに近づいたはずなのに、ロザリアは驚かなかった。
彼女が机から身を離れようとした瞬間、その前に回り込み、両手で彼女の腰を掴んで軽く本棚の方へ寄せた。
彼女は何も言わず、ただ私の目を見つめていた。
彼女は淡いローズピンクの滑らかなシルクのドレスを着ていた。その上に、同じピンク色の薄いチュールのようなトップスをふわりと重ねていた。
まるで透けるように薄くて、肩は見えていたが、火傷の痕を隠すにはちょうどよかった。
「エリオの様子を見に行かないと。」
ロザリアはそう言って、私の手をそっと外した。
彼女は、私がキスする間も与えず、するりと身を抜いた。
「……その分、あとで覚えてろよ。」
ルカは微笑みながら、去っていくロザリアの背中を見つめていた。
2.
ロザリアがエリオの部屋へ行ったあと、私も自分の部屋に戻った。
とても眠くて、そのまま横になったら、目を覚ましたときには夕食までまだ三十分ほどあった。
エリオはもう起きているだろう。ここ最近は本当にやんちゃで、なかなか時間通りに寝てくれなかった。
エリオの顔を見るために階下へ降りた。
「乳母さん、エリオは起きた?」
ルカはキッチンに入った。
「はい。ロザリアが部屋でお風呂に入れてますよ。」
乳母は夕食の支度で忙しそうだった。
エリオの部屋へ向かうと、聞こえてきた声に思わず足を止めた。
バスルームから楽しそうな音がしていた。
ロザリアがエリオを洗っているんだろうと思い、ノックもせずにそのまま入った――だが、実際は二人一緒に入っていたのだ。
扉を開けた瞬間、ロザリアは湯船の中で裸のまま、エリオを抱いていた。
まるで遊んでいるように、エリオを半分ほど水につけたり、また持ち上げたりしていて、エリオは大喜びで笑い声を上げていた。
笑い声が部屋いっぱいに響いていた。
「エリオ、いつもこんなふうに風呂に入ってるのか?」
ルカはそのまま浴室に入った。
「ルカ!?」
ロザリアはノックもなく入ってきたことに驚いて目を見開いた。
彼女をそんな姿で見るとは思ってもいなかった。
けれど、悪くない驚きだった。
私の姿に気づいたロザリアは一瞬で混乱し、どうしていいか分からない様子だった。
タオルは湯船から離れた場所にあり、胸元を隠そうとして、エリオを水から引き上げて抱え込んだ。
「エリオだけ洗ってるのかと思ったよ。」
ルカは笑いをこらえきれなかった。
「一人で洗うと暴れちゃって、私までびしょ濡れになるの。だから一緒に入ってるのよ。」
ルカの声に気づいたエリオは、ロザリアを押して私の方へ戻ろうとした。
「なるほどな。いつもあんなに楽しそうなのはそのせいか。」
ルカは面白そうに言った。
「甥っ子に会いたかったんだ。ちょっと抱かせろよ。」
そう言って湯舟に近づこうとした。
「タオルを取ってくれない?」
ロザリアはとにかく早く体を隠したかった。
「無理だ。時間ないから。エリオにキスしたらすぐ行く。」
ルカは湯舟から離れようとしない。
可哀想なロザリア。
小さなエリオの体で必死に胸元を隠そうとしていた。
ついに観念したように、エリオをそっと私に差し出した。
私がエリオを受け取ると、ロザリアは急いで両腕で胸を覆った。
さっき書斎でキスさせてくれなかった。
逃げた分の仕返しをするには、絶好の機会だった。
「服が濡れたから着替えたいの。エリオをお願い。」
ルカは湯舟から数歩下がり、ロザリアが立ち上がるのを待った。
「早くしろよ。風邪ひくぞ? エリオが冷えたら、お前のせいだからな。」
ルカは楽しそうにからかい続けた。
わざと湯舟から距離を取り、ただ彼女が上がるのを待ち続けた。
ロザリアは本当に困っているようだったが、その困り方が妙に愛しくて――
できることなら、ずっとこのまま見ていたかった。
私が動かないのを悟り、ロザリアは決心したようにゆっくり湯舟から出た。
その瞬間、ほんとうに不思議なことが起きた。
彼女は私の正面に立ち、まっすぐにこちらを見つめていた。
あの、どこか悲しげな瞳が、また私の心を攫っていった。
ロザリアは目の前で裸のまま立っていたのに、
私はただ、その瞳から目が離せなかった。




