豚も木から落ちるってどこの言葉だよ
ラブコメ要素少なめ(三木→裕太←恵子)な、
とある日の昼休みの話。
それでも良い方どうぞ↓
いつもどおりの変わらない学園生活。
このラブコメ世界に転生して十七年。
未だに俺は、
「大明!お昼食べよ!」
「おー。」
裕太がラブコメ主人公で、モテモテなのが納得いかない。
「ねー、大明。」
「んだよ。お前、今日弁当は?」
「忘れてきたんだよねぇ、それが。だから、来る前にコンビニ寄って買ってきた。ほら。」
そう言って置かれるのはお湯を注ぐタイプのインスタント麺。
「…………お湯は?」
「……………………あ。」
今初めて気づきましたと言わんばかりの表情に、ますます疑問に思う。
なぁ、なんでコイツがラブコメの主人公なの?
つうか、コンビニ寄ったんならもっと別の選択肢あっただろ?
「食堂でお湯もらって来いよ。俺先食ってるから。」
「んー、まぁ食べられるし大丈夫でしょ。」
「は?食べられるって……。待て待て待て。え、そのまま食うの?」
「乾燥麺だから食べられるよ。」
パンのごとく麺にかぶりつき、パリパリと良い音を響かせる男。
「スナック感覚でカップ麺食うやつお前くらいだっつうの……。」
良いの、ソレで。
お前、本当に良いの?
いやまぁ、食えるなら止めないけどよ……。
「味気ない……。」
「そりゃそうだろ。」
「んー、なんでだろ。」
「カップ麺そのまま食ってるからだろ。」
「あ、そっか。」
「納得したか。」
「粉末かけてないからだ。」
ペリッと袋を破り、乾燥麺に粉末(出汁)をかける。
「あ、塊落ちた。」
「…………。」
「ん、さっきより味がする。けど、身体に悪そうな味がする。」
「…………そりゃそうだろ。」
それ、お湯で溶かして食うヤツだから。
誰もそのまま食べるなんて想定してねーから。
「もう少し商品の改良が必要だよね。」
「聞くが、どこに改良の必要を感じたんだ?」
「味が濃いだけで、美味しくない。」
「ソレはそのまま食うことを想定して作られた商品じゃねーからな。」
インスタント麺をパリパリと食べる悪友を眼の前にしながら弁当を食べる。
「ね、大明。」
「んだよ。」
「おかず交換しよう。」
「何と交換するんだ?」
「この麺をあげるから、お弁当全部頂戴。」
「いらねーよ!それもうおかず交換の域超えてるし!!つうか、素直にお湯もらいに行け!」
なんで、こんなバカのために俺の普通の弁当を取り上げられなきゃならん。
「もー、ケチ。」
「好きに言え。ぜってー、ヤダ。」
「わかった。仕方がないから古今東西ゲームで負けたほうが購買にパンを買いに行くで手を打とう。」
「自分で買いに行け。」
「大明だってお弁当食べた後にパンくらい食べるでしょ?」
「そりゃあまぁ……あれば食うが……。」
なんせ育ち盛りの男子高校生。
腹減るのは仕方がない。
「だよね!じゃあ負けたほうのおごりね!!」
「いや、勝手に決めるな!つうか、お前の昼飯だろーが!」
「ヤダなぁ。僕は別にこのままインスタントを美味しく頂いても良いんだけど、大明がかわいそうかなって。」
「なんでそうなる?」
「だって…………そのお弁当食べ終わったら何も残らないんだよ?お腹空いてる大明がひもじい思いしてるとこなんて、僕……見てられないよ……。」
「裕太くん……!優しい……!」
「やっぱ裕太って最高に優しいよね!ちょっと加藤!アンタ裕太の勝負受けてあげなさいよ!」
「いや、なんで俺が……、つうかどっから湧いた。」
「失礼ね!ずっと居たわよ!」
「そうですよ、加藤くん。私達同じクラスなんですからいつも一緒に居ます!」
ダメだ、このバカの味方が増えた……!!
これだからラブコメは……!!
「裕太くん、古今東西ゲーム得意なんですか?」
「もちろん!僕が古今東西ゲームで負けるなんて、豚が木から落ちるくらいにありえないよ。」
「豚は木から落ちるだろ。」
「え?」
「猿も木から落ちるですよ、裕太くん。」
「え?豚もあったたよね?」
「豚に真珠のことか?」
「あはは、大明バカだなぁ。豚は真珠なんて食べないよ、基本穀物なんだから。」
「…………。」
このバカに古今東西ゲーム負けるの絶対ヤダなぁ!!
「じゃあ、公平を期すために私達が審判してあげる!」
「うん、よろしく。三木さん、恵子。」
「しっかり判定してくれよ。贔屓はなしで。」
「もちろんです。任せてください。」
「じゃあ、ルール説明!お題にそってリズムよく答えるように!以上!じゃあ、最初のお題は……。」
「ふふ、“四字熟語”にしましょう!」
「あ、さっきの授業でやってたね。」
「はい。これなら裕太くん有利です。」
「だね、大明寝てたし!」
もう既に不公平なんだが?
「はぁ……。俺、弁当食いたいだけなのに……。」
「先攻後攻はどうする?」
「ココは勝負を仕掛けた僕からやるよ。大明にも考える時間が必要でしょ?」
「はいはい、ありがたいお心遣い感謝します。」
「じゃあ……古今東西ゲーム、お題は“四字熟語”で、スタート!」
パンパンと手を鳴らす。
裕太「十人十色」
俺「日進月歩」
裕太「一朝一夕」
俺「古今東西」
「アウトでしょ、ソレ!」
「なんでだよ。」
「納得行かない!!ね、審判の判定は!?」
「セーフ!」
「なんで!?」
「当然だ。ほら、続けるぞ。」
パンパンと不服そうに手を鳴らす悪友。
裕太「四苦八苦」
俺「森羅万象」
「ずるい!ソレ、僕の!!」
「そんなルールねぇ。」
パンパンと手を打ち鳴らす。
裕太「九面楚歌!」
「アウトだ。はい、お前の負け。諦めて行け。」
「審判!」
「セーフです!」
「なんでだ!!!?」
「ちょっと鼻詰まりですね。裕太くんはちゃんと四面楚歌って言ってましたよ。」
「そうよ。加藤ってば、裕太に負けるの嫌で文句つけてるんでしょ〜?」
「く……!この状況がまさに四面楚歌なんだが……!?」
「じゃあ続けようか。審判がセーフって言ってるんだし。ほら、大明からだよ。」
「審判の交代を要求する!」
パンパンと笑顔で手を打ち鳴らす裕太に頭痛がする。
「おい、審判!お題の変更を要求する!」
「えー?どうする?」
「良いと思いますよ。」
「じゃあ、今回だけね。裕太もソレで良い?」
「うん、良いよ。大明がかわいそうだもんね。」
コイツら……!!
「次は恵子ちゃん、お題を決めてください。」
「え?んー、じゃあ…次化学だし元素記号で!」
「それでは、古今東西ゲームお題は“元素記号”で加藤くんからスタートです!」
俺「H(水素)!!」
「………ふぅ、僕の負けで良いよ。」
「一つも出てこなかったのか!?」
何にせよ、勝った!
「大明、何が良い?」
「焼きそばパン。」
「珍しいね。」
「パシリの代名詞だろ。」
「次は僕が大明に焼きそばパンを買ってきてもらうよ。」
「言ってろ。」
ようやく弁当を食べられる。
「裕太くん、私も飲み物買いたいので一緒に行っても良いですか?」
「あ、私も!審判してたら喉渇いちゃった。」
「じゃあついでに買ってきてあげるよ。何が良いかな?」
「「…………。」」
「三人で行って来いよ、バカ。」
きょとんと不思議そうな顔をする悪友。
「はぁあ……。」
俺もう、本当コイツヤダ……。
読んでいただき、ありがとうございます
感(ー人ー)謝