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第113話 呂布、四度

 呂布奉先。

 三国志最強の漢。数多の猛将を粉砕してきた破壊の化身。

 それを今日で4度。相手にして生き残っている僕は幸運と言うべきか。それともそこまで命を狙われる不孝と言うべきか。


 それでもやることは1つだ。


 むざむざ殺されてやるものか。


「全軍、南に向かって駆ける! 歩兵は森を使って迂回! ラス、頼んだ!」


「イリスちゃん、分かったよ!」


「でもイリス、逃げられるの!? 相手はあの赤兎馬でしょ」


 誾千代が不安げに叫ぶ。


「大丈夫だ、行こう!」


 呂布は確かに馬の中の馬と呼ばれた赤兎馬に乗っている。

 けど今の彼は軍を率いる将だ。その軍の馬が全て同じ性質を持っているわけじゃない。軍のスピードに合わせるなら、そのスピードは殺される。

 それを嫌って突出してくれば、5千対1だ。一騎当千とはいえ、全滅させるには5倍足りない……とは言いきれないけど、それでも呂布の軍を正面きって相手するよりはマシだ。


「ちょっと待って、相手、少なくない?」


 確かに誾千代の言う通りだ。

 呂布の軍。後続が見て取れるけど、多くて3千。あるいは1千の規模なのかもしれない。


「だとしても逃げる。相手は一騎当千。つまりあの人数足す1千。なら兵数は互角だよ」


「なんて滅茶苦茶。私の雷神でぶっとばせればいいのに」


 確かにそれは魅力的な提案だった。

 けど先のローカーク門近辺での戦いで、呂布が空を飛んだという報告がある。それを考えると迂闊なことはできない。そう思えた。


 だからそこからはすぐに撤退の動きに入った。

 いくら何でも呂布と真っ向勝負するつもりはないからだ。


 敵は釣り出せた。

 他のみんなと合流し、あとは最後の決着をつけるだけだ。


 ラスは歩兵を率いて迂回する動きに出ている。馬には速度と持久力で勝てないとはいえ、移動の制限に限りがない。

 木の密集している林や森には、馬は容易に入り込めない。少なくともあの速度は維持できない。地面は不安定だし、木の枝が搭乗者に大きな制約を設けるからだ。

 だからラスには木を盾にして敵から逃げる策を教え込んでいる。

 仮にそちらに呂布が向かえば、僕は取って返して敵をつつくふりをすればいい。もちろん本気で呂布相手に突っ込まない。ただそのそぶりを見せれば、挟撃のマズさは呂布も分かっているはずだからラスに構っていられなくなるだろう。


 そうやって時間と距離をを稼ぎながら他の軍と合流する。

 それができる自信が僕にはあった。


 ――そのはずだった。


「イリス、前に敵が!」


 敵!? 前!? 待ち伏せ!?

 分断か。待ち伏せに僕らの相手をさせて、その間に呂布が歩兵を狩る。あるいは待ち伏せで墓kるあを一時止めて呂布が後ろから襲う。


「進路を東に! ラスと合流する!」


 一旦、1つになってその後の対処だ。


 だが敵の方が一手、いや、五手ほど先。


「いや、前……それに後ろにも!」


 東に向いた先の前。そして後ろ――つまり西。

 呂布が北、待ち伏せが南とすれば……。


「包囲された!? 狙いは――僕らか!」

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