第7話 モルスの異世界講座
モルスが床に手をかざす。
瞬間、すべての電源が落ちた。
いや、床にある地図は依然と光り輝いている。
電源が落ちたのではなく、周囲が消えたといった方が正しい。
壁も、窓も、暖炉も、食器棚も机も椅子も何もかも、暗黒に飲み込まれたようにして一瞬にして黒に消えた。
あるのは床一面に広がる地図。
それを見下ろすように、僕とモルスは座っている。
その座っている、という感覚も何もないものに腰かけているのだから違和感が半端ない。
立ち上がってみても、どこが床なのかもわからず、おかしくなりそうなので考えるのを辞めた。
そんな僕の心境を知ってか知らずか、モルスは淡々と話し始める。
「この世界は約20の国で成り立っている。大陸の覇者『アカシャ帝国』が、領土を部下たちに分配して領主として管理させたわけだけど、数百年が経って、各地で力を蓄えた領主たちが国を自称し始めたんだね」
「典型的な乱世だ」
「そう、そんな地方を東西南北で区切って紹介しよう」
それからモルスの説明があったが、まとめるとこうだ。
北は騎馬民族でそれなりに領土は広いが冬は寒い。
東は貿易港などがあるが、治安が悪かったり耕作に適さなかったり。
南は温暖で肥沃。デメリットもほぼない。
離島は狭い、格差、攻めづらい三拍子。
そして西は大国、中央は混沌。
……いや、これもう一択じゃね?
基本、こういった状況でどれか選んでいいよ、となったら、
1つ、国がそれなりに豊かであること。
2つ、敵国と接している場所が少ないこと。
3つ、攻めこみやすく、攻め込まれにくいこと。
これが初心者おススメの3か条だ。
それを考えると、もう一択で西の大国になる。
周囲は山や川に囲まれて出口は東だけだが、逆に言えばそこに兵力を集中できるということ。
領土も開けた場所もそれなりにあるし、山と川に守られて攻め込まれづらいから、後ろを気にせず戦える。
しかも隣国が当代の首都があるアカシャ帝国の帝都ってところがいい。
そこを攻め滅ぼせば、巨大都市を抱え込むことになる。
その時点で大小乱立した国に囲まれるが、それだけの人口、つまり兵力を抱え込んだ時点で勝ち確だろう。
「ふむ……」
「悩んでるねぇ」
「そりゃ、ね。自分の人生がかかってるわけだし」
ゲームをやり倒した身からすれば弱小国プレイの方が燃えるけど、ここはコンティニューの効かない現実。
そんなことをして真っ先に滅亡したら目も当てられないわけで。
「いや、君、さっき迷ってるみたいなことを言ってたのに、もうやる気満々じゃないか。うん、いいことだ」
「あ……」
確かに、今、思いっきり参加する気満々で考えてた。
いや、こんな地図見せられたら誰でもそうなるって。うん。だから僕は間違ってない。まだ決めてない。それだけ。
「ま、いいけどさ。じゃあもうちょっと詳細情報を展開してみようか」
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