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挿話54 項羽(ゼドラ国将軍)

「白起め、俺をダシに使いやがったな」


 あの男。白起に使われること。それ自体は別にどうでもいい。

 もともと、叔父殿の下で戦っていたのだ。誰の下で戦うとかはどうでもいい。


 だがそれが俺の気にくわぬ内容なら、白起を叩き潰して勝手にやらせてもらうが。

 まぁあの異能は少しばかり脅威だが、なに。こちらが別に異能を使わずとも斬り殺すくらいのことはできる。

 今のところ、そうする必要は出てきていないのはあいつの幸運だがな。


 敵の左翼。そこに突撃すると見せかけて、戦場を縦断。そのまま呂布らが戦っている敵右翼の一軍。その横腹を一直線に貫き通す。それで相手の右翼は壊滅するはずだ。


 ただもちろんそれに手間取れば、俺が無視した敵左翼に後ろを取られる。

 だから白起の本陣がそちらの押さえに回り、さらにこちらの後軍を切り離す。


「では項羽殿、御武運を」


「言われずとも」


 そう言って巴が約半数の7千を連れて左翼の押さえに回った。

 敵の旗、そして軍の氣からして、あの軍はおそらく昨日の関羽とかいう奴。それに一番向こうの大軍を含めれば、巴と“空の白起軍”では荷が重い。


 だが一瞬でいい。

 一瞬、そいつらを足止めし、俺と呂布が敵の右翼を壊滅させればそれで勝ちだ。

 そしてそれがなくても、あの男が皇帝を殺せばそれで全てが終わる。


 俺が敵右翼を食い破って、そのまま皇帝をぶち殺すのが一番だがな。


「敵、こちらに気づきました!」


 ほぉ。いい反応だ。

 だが遅い。


「食らいつぶす!!」


「はっ!!」


 加速した。歩兵はほぼ巴に預けた。こちらは俺の鍛え上げた騎兵がほとんど。だからそのまま行った。


 敵。こちらに気づいて目を見開く。恐怖に怯えた顔。それを叩き潰した。そのまま槍が届く限りを手当たり次第に薙ぎ払う。すいも共に駆ける歓喜を表すように、敵を踏みつぶしては前に進む。


 弱い。所詮は雑兵。しかもこちらの動きに気づいたとはいえ覚悟の完了していない弱兵だ。

 だから当たるを幸いに敵を殺しながら進む。それも半ばまで到達すれば次第に敵の抵抗も厚くなってくる。


 まぁだからといって、俺の敵ではないが。


 さらに数人を屠っていると、


手前てめぇ! 項羽!!」


 声。そして殺気。いや、攻撃が来た。

 剣。いや、刀というやつ。


 槍で弾く。

 そのまま槍を突き出した。歩兵。男だ。どこかで見た覚えがある。

 だがそれもどうでもいい。そのまま突き殺す。それだけのこと。


 だが男の姿が消えた。


「なにっ!」


 槍の穂先が空を切る。

 消えた? いや、懐に飛び込んだのか。


「どこを見ている」


 背後の声。

 先の男と同じ声。いつの間に。そう思う前に体が動いた。突き出した槍。その石突きを背後に突き出す。手ごたえありだ。


「ちぃ! 高杉ぃ!!」


「僕に命令するな、土方!」


 土方? いや、次の殺意。すいが動く。直後、頭部の背後。そこに銃弾が通り過ぎる。


 ふっ。さすがはすいだ。俺のすべきことを全てわかっている。


 それにしても土方。そうか。この男。

 帝都の時に、あの岳飛、そして林冲と共にいた男だ。その時も土方と呼ばれていた。


 2人。土方という羽織の男と、高杉と呼ばれた銃を持った男。

 どうやらここの率いる将ということか。面白い。岳飛といい、林冲といい。あの腐れ亭長(劉邦)との戦いではまともにぶつかってくる奴らはいなかったからな。

 こうしてまともに潰しに来る。それこそが、この世界の男たち。


 ならば徹底的に潰す。

 それが礼儀というものだろう。


 だから――


「面白い、貴様ら!! この覇王を倒せると思うてか!」

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