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挿話15 坂本龍馬(ゴサ国相談役)

 納得できん。

 こがなことを容認して、前途ある若者を見殺しにして、その先に未来なんてものがあるわけがない。


 すでにイリスは拘束され地下牢に。清盛さんと公瑾さんは動き出している。

 おそらく明日。日が出るまでが勝負。


 コダマリさんにも自重するよう手紙を出したが、それで収まるような状況は過ぎちゅう。仮にコダマリさんたちが収まっても、御用商人の方が黙っとらん。激突は必死じゃ。


 じゃからなんとしてでも今夜のうちになんとしてでも手を打たないと全てが終わってしまう。


 政庁を出た足で姫さんの屋敷に急いだ。


 この状況。ひっくり返せるとしたら、姫さんの存在。


 屋敷は静まり返っとる。イリスのお仲間はここに軟禁ということじゃから、人の気がせんのは当然じゃがどこか違和感。

 それでも訪いを入れると、屋敷を取り仕切る老人が出て姫さんのもとに案内してくれた。


「姫さん! 一大事じゃ!」


 イリスの仲間を集めた広間に姫さんはいると聞く。そこのドアを開け、中にいる姫さんを呼ぶが――


「でね! その越智おちって人がちょっと気になってー」


「おお、戦場の恋ってやつなのですわね!」


「うぅむ。兄君が亡くなったのは悲しいことだが、それを補うのが真の愛ってことだね」


「はぁー、素敵だわー。私もそんな恋がしたいわ」


「ユーンはまずはお嬢離れからっすねぇ。で? やっぱどっちが強いって感じでバトるんすか?」


「うふふ。残念だけどお近づきになる前にここに来てしまったの。だからちょっと残念だけど……でも、寂しくないわ。だって、そのおかげで皆さんと会えたんだもの!」


 予想以上の女子おなごたちの熱気に、どこか肩透かしをくろうた気分。


「えっとー、姫さん?」


「あら、坂本のオジサン。どうしたの?」


「どうしたのっちゅうか……姫さんこそ、なにをしちゅうが?」


「嫌だわ。乙女の秘め話に、不用意に入ってこないでよね!」


「えぇ……」


 なにが起こっちゅうんじゃ……。


 と、そこで気づく。

 イリスの仲間。その数が前と違うことに。確かあの巫女装束をした千代女とかいう忍者がいた気がするが……。


「ああ、千代女さんとサラさんね。あの2人にはお願いをしてもらって出てるわ」


「で、出てる……!?」


 イリスの仲間は全員軟禁。それが清盛さんが出した命令じゃ。

 それを破って外に出るなんて、何を考えちゅう。


「うん、きっとそろそろだから。私たちも行きましょうか」


「え? 行くって姫さん?」


 わしの心配をよそに、イリスの仲間たちが腰を浮かせて準備に取り掛かる。

 彼女たちは完全に余所行きの格好で、しかもどこから持ち出したのかそれぞれが完全に武装してしまっちょる。軟禁されているはずの人間が、ありえるはずのない格好。


「やれやれ。あの子はいつまでもわたくしの足を引っ張りますわね」


「まぁカタリアくん。それがイリスくんの魅力ってことだよ」


「会長、それってフォローになってないですよ?」


「そーそー。お嬢に対抗できる唯一の面白素材なんだから、イリスっちは」


「ま、仕方ないからわたくしたちが助けてあげないとってことですけど……って、サン!? どういう意味ですの、今の!」


 呆然とするしかないわしをしり目に、姫さんはこちらを向き、


「あら、何をするかなんて1つしかないじゃない」


 そしてニコッと、太陽のような眩しい笑顔を向けた。


「イリスを奪還して、清盛のおじ様を止める。無駄な争いはやめてもらいましょう。あら、3つになっちゃったわね」


「…………」


「どうしてかなんて聞かないでよ? イリスは鶴の大事な友達。清盛のおじ様は大事な家族。どちらも傷ついてほしくないから、鶴は戦います。それで? 龍馬のオジサンはどうするの?」


 こんお人は。

 さすが伝説に聞く、大祝の姫武者ということじゃ。すべてを守るために戦い、すべてを守って命を絶つ。それほどの気概を持ち、それほどの胆力を持つお人。


 その覚悟を聞いて、体の内に渦巻くものを感じる。それは熱。かつて一度は体感した、未来に向けて駆ける情熱。


 姫さんがそのつもりなら、わしも黙ってるわけにはいかんな。


「じゃったらわしがやることは1つ。薩摩と長州、なんとしてでも手を結んでもらい……さらに幕府も交えての大団円じゃ! 新しいゴサ国、わしが洗濯しちゃるぜよ!」

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