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第28話 コレクトコール・通話中

「――ガチャ。はいはい、こちらお客様相談室。ご用件はなんでしょう?」


「おい」


「あっ…………只今、留守にしております。ピーという発信音が鳴りましたらお名前、ご住所電話番号を記載の上、下記の宛先まで送ってね。当選者の発表は発送をもって返させていただきます。ピー」


「訳の分かんない居留守をかますな! 今、“あっ”って言ったろ。“あっ”って! やましい気持ちありありじゃないか! てか下記の宛先ってどこだ! テレビでしか通じないボケかますなっての!」


「はぁ……やっぱり蓮くんか。なにかな。これでもボクは忙しいんだよ。死者の整理だったりアニメみたりゲームしたり漫画読んだり」


「遊んでんじゃん!」


「あ、ちょっと待ってよ。あと少しで『真・っとできた! 初めてのおつかいちゃん~暗殺編~』が始まっちゃうから。というわけでばいばーい」


「ふざけるなよ!?」


「もうー、なんだよー。いきなりハイテンションで耳元で怒鳴られる身にもなってほしいもの――」


「『軍神』」


「え?」


「あの『軍神』ってスキル。超強いんだけど」


「なんだ、それは良かったね。というか強いことによるクレームって初めてだね! もしかしてもっと強いのが欲しいって話? 力が欲しいか? ならばくれてやるってね?」


「血を吐いた」


「ん?」


「血を吐いたんだよ。あと原因不明の頭痛とか。どういうことだよ」


「…………」


「答えろよ」


「大丈夫、それは血じゃなくてケチャップ。演出上の問題だよ。そのケチャップはあとでスタッフが美味しくいただきました」


「誰が再現VTRの注意書きみたいな答えをしろって言った!? 知ってんだよ。スキル説明文『ただし、発動中は時間経過とともに寿命が減少していく。※副作用に吐き気、頭痛、関節痛、吐血などを発症する場合があります。』だとさ。これ、どういう意味?」


「あー、調べちゃったんだ。説明書読むタイプなんだね、君」


「お前な……」


「あーあー分かりました。そうですよ。そのスキル『軍神』。それには反動があるんだよ。強すぎる力を使うには、君のその体は耐えられないってこと。てかそのスキルでいいって言ったのは君じゃんか」


「こんな副作用のことなんて聞いてない」


「言おうとしたら、君がそれでいいって言ったんだよ」


「え?」


「えっと、どこいったかな。うーーーーんと、あ、これだ。その時の録音ファイル。再生っと。『うーん、あ、そうだ。この『軍神』なんていいんじゃないかな。ちょっとデメリットが強いけど――』『それでいい! 早く!』。ね?」


「…………」


「あれれー? どうしちゃったのかな? 急に黙り込んじゃって。もしかしてあれ? 返金レベルの誤認だと思って消費者庁にトツったら、まさかの仕様で法律上問題なくて悪いのはしっかり注意分を読まなかった自分だったから赤っ恥かいたとかそういうこと? ね、ね? そういうことでしょ? 今どんな気分?」


「う、うるさいな! てかデメリットあるなら早く言えよ! あの時は急ぎだったんだよ!」


「うわー、あまつさえは逆切れだよ。ボクはなんも悪くないのになー」


「…………」


「自分の勘違いで悪くない相手を一方的に糾弾するなんて、人間ってそんな厚顔無恥にできていたっけ? あー、そうか君ってそういう人間だったよねー。勘違いだろうがなんだろうが、しつこく糾弾して相手を黙らせるタイプ。うーんでも普通、こういう時にどうすればいいのかな? はい、ごめんなさいーが聞こえない!」


「悪かったよ! 聞いてなかったのが!」


「はい、よくできましたー。うんうん、ちゃんと間違いを認める。それが人間の美徳だよ」


「……なんだろう、この釈然としない気分」


「それが大人になるってことさ。いや、大人を“やる”ってことかな」


「人外がなんか語ってるぞ」


「だって僕、神だからね」


「うるさい。はぁ、最悪だ。てか何? 発動中は寿命が減っていくとかなんとか」


「まぁ簡単に言えば使ったら使った分だけ、寿命が削られるってこと。ご利用は計画的にー」


「ふざけんな!?」


「だから言ったじゃん。ちょっとデメリットが強いって」


「寿命削るのは“ちょっと”のデメリットじゃねぇ!!」


「大丈夫大丈夫。減るっていっても、発動1分につき1日くらいだから。人生500年の人間なら短いもんでしょ」


「なにその高利貸しの利子みたいなの。トイチとかトゴレベルじゃねーよ!? つかいつから人間は神の仲間入りした?」


「おかしいね。確か人間族ってのは長寿じゃなかった? ほらいるだろう? 人間の中でも耳が長くて、弓矢が得意な」


「は? なにそれ」


「ほら、あれだよ……そう、エルフ。人間族のエルフ種は何百年と生きるって聞いてるよ。ボクは物知りなんだ」


「二次元と三次元の区別くらつけてこい!」


「え、違うのかい? おかしいな、ちゃんと勉強したのに。ほら、ここにあるよ『エルフ王国物語』って」


「完全フィクション!!」


「なんなんだい、さっきからケチばっかりつけて! まるで君が焦っているのを知りつつ、あえて寿命が減るのを知ってて勧めて血反吐を吐きながら苦しむさまを見て楽しむボクが悪者みたいじゃないか!」


「え?」


「ん?」


「今、知っててって?」


「……あ」


「あ、じゃねぇ! つかなんだ、その裏話! 最低最悪だな!」


「違う! そう、違うんだ。これは、そう妹のせいだ!」


「非実在妹を引っ張り出すんじゃない! どうせ画面の中にいる妹とかだろ!」


「いや、いるよ!? へそ曲がりでツンデレで天邪鬼で性格が悪くて兄を兄と思わなくて今回の実験場にも色々手を加えて人が争い苦しみ悶えるのが大好きな超ドSでも本当は優しいのをボクは知っている最高の妹だよ」


「僕には最悪の存在にしか聞こえないけど」


「わ、分かった! 分かったから! えっと、ちょっと待って。……まずシステムサーバにアクセス。それから切野蓮のパーソナルベースを検索。これか。開けたけど……あぁ、やっぱりロックが。なんの、入り口をちょっといじくって、こっちにブロックかませて……ダメか。いや、方法は悪くないはず。ならこっちに一旦データを移してから、改ざんしたデータを逆に流し込めば……ビンゴ! はっは! ハッキングのスキルでボクに勝てると思うなよ、ダメシスター!」


「……なんか色々危険なワードが聞こえてきたけど……うん、聞かなかったことにしよう」


「はい、というわけで。君に新しいスキルを追加したよ。スキル名『軍師』だ。知力政治面での超パワーアップってことだね。『軍神』スキルと組み合わせると、もう完全無欠のパーフェクトじゃん? ……まぁその代わりに寿命はもっと削れるけど」


「ダメじゃん!」


「そんな君に超朗報! なんと『軍神』スキルと『軍師』スキルによるリンク効果で、新しいサブ効果が発動したんだ。すなわち『泰山封禅たいざんほうぜん』。他の国を攻略すると、なんとその国の大きさに応じて寿命が伸びる! 全部の国を滅ぼして天下統一すればプラス100年! これでスキルをバンバン使っても、50年は生きられるね!」


「……えっと、どういうこと?」


「ま、つまりー。新しいスキルでめっちゃ強くなったんでー。的なー? イイ感じに全員ぶっとばして天下統一しちゃえばー。もうすっごいボーナスでー、ヤバくてー、パない感じに長生きできるよねーってこと」


「そのイラっとくる言い方やめてくんない?」


「はいはい。でもこれくらいの説明。ゲーマーの君なら分かってくれると思ったんだけどなー」


「あいにく僕はちゃんと説明書を読んでチュートリアルは全部やる派なんだよ」


「さいですかさいですか。まぁ、あとは習うより慣れろってことで。じゃああと寿命が317日と3時間48分19秒だからよろしくねー」


「…………おい、今何て言った?」


「え、だから寿命が317日と3時間48分19秒、いや13、12、11……」


「317日って1年もないじゃん!?」


「いやそこはしょうがないよ。もともとあのイリスって子はあそこで死ぬ予定だった、寿命だったんだよ。だからこの1年はボーナス。さっきちゃちゃっと改変してあげたんだから。感謝してほしいよね、君があんなことしなければ、こんなややこしいことにはならなかったんだから」


「でも1年は365日だろ!?」


「君、自分のやったこと覚えていない? あの騎士と戦ったり、囮で戦ったりと八面六臂の活躍だったけど、その分、寿命も減っちゃったんだよ」


「あ……」


「そういうこと。だからご利用は計画的ってね」


「ぐっ…………ええい、分かったよ! つまりこういうことだろ! 1年以内に他国を攻略していって、寿命伸ばしながら天下統一目指せって! くそ、満足かよ」


「そういうこと。やっぱり初志貫徹、死ぬときは前のめり! というわけで期待しているよ、軍神スキルと軍師スキルを持つ君には。うん、軍神で軍師――いや、軍神ちゃんで軍師ちゃん、かな」


 切野蓮の残り寿命317日。

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