第066話 ちょっと照れる
12月29日ー後書きを更新いたしました。
「貴様ら、どこへ行く気だ!」
シャポーら五人と一精霊が、塔の外へ急いでいると、魔導師団の男に声をかけられた。
非難するような強い口調の男は、眉間に深い皺を寄せ、シャポー達を不信の目で見ている。
「研究院に所属する魔導師には、塔の防衛に協力するよう通達がいっているはずです」
もう一人の男が、シャポーらの行く手を阻むように両腕を広げた。
彼の表情もあからさまに険しい。
「連絡を受けていませんの?私達は、前線に合流するために急いでいましてよ」
一歩前に出たミシルパが、道を開けるようにと手を横に振る。
「そのような話、聞いてなどいない!戻れ、これは命令だ!」
最初に声をかけてきた男が、ゲージを確認することも無く、シャポー達の後方を何度も指差す。
礼を欠いた物言いに、ウォーペアッザは反論するため前に出ようとしたのだが、ミシルパがやんわりと手で制した。
「緊急の事態ですもの、この様な事もありますわ」
ミシルパはウォーペアッザに小声で伝える。
敵が首都の内部にまで攻めてきているのだ。魔導師団の者が、殺気立っていてもおかしくはないと、ミシルパは心構えているのだ。
「敵の迫っているなか、塔外に出ると言うならば、敵前逃亡とみなしますよ。研究員の魔導師といえど、処罰の対象になります」
この男の言葉に、ミシルパの表情が硬くなった。
「研究院の魔導師には、あくまで協力の要請が出ているだけでしてよ。魔導師団の統制下に置かれたわけではありませんわ。誰からの指示が出ていますの?」
ずいと詰め寄ったミシルパに、二人は半歩後ろへとたじろぐ。
「う、上からに決まっているだろう。協力とはいえ我々の指揮下なのだから、命令には――」
「どのレベルですの?」
「命令に――」
「どのレベルからの指示ですの?」
気迫十分な声で、ミシルパは男の言葉を遮る。
有無を言わさぬ威圧感に負け、男は短く答えた。
「超総合庁舎塔サーペンの防衛部隊長、だ」
聞いたミシルパは、呆れたように大きく息を吸うと、眼光鋭く目を見開いた。
「ゼーブの名において厳命します。現場指揮官の一存で、要請の内容を変えぬように。今すぐ上官に伝えなさい!」
右手を前に突き出し、ミシルパは言い放つ。
高圧的な方の男は「大貴族ゼーブ家!?」と驚き、慌ててゲージを取り出した。
「そして、我々の行動についても確認なさい!エルダジッタ部隊に合流する者がいると!」
口調が丁寧な方の男を指差すと、ミシルパは語気を強めた。
そちらも慌ててゲージを確かめ「五名、間違いなく」と背筋を正す。
「私たちは行きます。が、くれぐれも研究院の魔導師には、敬意を忘れぬように」
ミシルパが通り過ぎざまに言うと「はっ!」と敬礼して魔導師団の者達は道を譲った。
足早にその場を後にする五人だったが、ウォーペアッザはチラリと振り返る。
見送るかの様に、魔導師団の二人は敬礼を続けていた。
「何だろうな。さすが大貴族家って言うよりも、ミシルパが凄いんだよな」
ウォーペアッザは、家名を出すよりも前に彼等を黙らせたことを指し、感心しきった様子で言った。
「ですですね。ミシルパさんは、とってもかっこいいのです」
「ほんとに、ほんとに。若いのに偉いねぇ」
「痺れる、憧れる」
「ぱぁ!」
小走りしながら、シャポー達が口々に褒める。
「ちょっと皆さん、妙な所で時間を取られましたのよ!無駄口を利いていないで、急ぎますの。それに、ピョラインさんは、お年寄りみたいなことを言わないでほしいですわ」
少しだけ頬を朱に染めつつ、ミシルパは前を向いて速度を上げるのだった。
ー2024年12月29日更新ー
投稿予定を12月29日(日曜日)の夜としていましたが、体調が戻らず、投降が出来なくなってしまいました。申し訳ありません。
次回投稿予定の1月5日(日曜日)には、アップしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
年末年始、忙しいとは思いますが、体調には十分お気を付けください。
良いお年を。




