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アスタリスク(1)  作者: 原上 一
1/1

高橋寛太編

初心者なので文章が拙いですが、

ぜひ、楽しんでください。

アスタリスク 原上 一


靴を買った。

以前の俺には買うことのできない、上等の靴だ。

妻にはいつも言われた、靴は良いものを

足は一番使う一歩歩むためのものだから。

黒光りした靴は俺には合わない

という長さで俺を守っている


妻の小言を未だに守るなんて恥ずかしいな。

今日は久しぶりに妻に会いに行く。

早く君の笑顔がみたいな。

階段を上るスピードが上がっていく。

着いた。

ガタンゴトン、ガタンゴトン

電車が重厚感ある鳴き声をあげる。

東京の都会の景色が広がっている。

ここは屋上。

俺は天国の妻に会いに行くことにした。

フェンスに足をかける。ハードル走を思い出す。

死ぬ前に浮かんだ最後の言葉はハードル走か。

笑いながら俺は空に飛び出した。





第一章 未来の記憶



【アスタリスク】


意味のないもの、必要のないもの



「ハァッ、ハァッ…」

また予知夢みたいなことが起きた。

こういう予知夢を見るようになったのは

あそこにはいって一年してから。

人が今日自殺する予知とかがほとんどで

たまに遅刻する夢を見て、本当に遅刻した時も

あったけど、こんな他人の主観的な予知は初めてだ。

私の予知夢の事を知っている班長に知らせなきゃと

携帯を探して……

あっ忘れたんだ携帯…絶望の事実に気づく…

そして時計は無情にも出勤の三十分前…


* * * * * * * * * * * *


私は警視庁所属警察官

なみや   あいる

名宮 逢瑠

警視庁特殊捜査班という

普通の警察官とは全く別の方法や変わった捜査を

行う班で

私は世間自殺行為防止班 PSPT

(Public suicide prevention team)

に所属している。名は体を表すとの通り、

世間の自殺を防止することが私達の仕事であり、

そのために私達は全力を尽くしているつもりだ。

やっぱり最近は減ってはいるものの一年に

2万人もの人が自分で自分の命を絶っている。

この事実は許せない気持ちとかいうものじゃなく

仕方なく、でもどうにもできない事で

心の底から沸き上がる絶望と行き場のない怒り

その感情に耐えきれなくてこの班に入った、

そしてその頃から私は予知夢を見るようになった。

この見てると苦しくなる予知夢を…

まあ不幸中の幸いというかこの頃から自殺件数を

少しずつ減らせている。

なんてったって私の見る予知夢は9割自殺する人の予知夢で、しかもそれがとても鮮明に映るから

とてもグロい、、、

その鮮明さは場所がどこか分かるほどで

それを頼りにその場所に行って自殺を防いでる。


その人生を途絶えさせないために、、、


* * * * * * * * * * * *


「ガチャッ!」

ドアを激しく押して入る

「遅いねー。遅刻だよ。」

伸ばしぎみに話す白髪とシワが異様に多い

おじいさんという感じの人が

若村 稲造 PSPTの班長だ。

若村さんは私をある地獄から拾ってくれた

私の恩人だ。

「遅れた分、僕の煎れるコーヒー飲みなさーい」

「えっ良いんですか~」

若村さんはコーヒーを煎れるのが趣味だが

この人のそれは趣味の領域をはるかに越えている。

奥さんもコーヒー好きで奥さんのために

コーヒーを調べている。

今までにコーヒーのためだけに

80か国を訪れている。更にPSPTには

いつでも私のお気に入りのブラジルの酸味と苦味の

バランスが良いサントスという豆を含む、

最低50以上の豆が用意されているのだ。

ここで忘れてはいけないのが、これは全て

彼の趣味の範囲であるということ。

そしてその隣に広がるのはいくつもの

画面。そしてそこに映し出されるのは

都内全ての屋上の監視カメラの映像。

自殺が行われる中で96%は屋上で行われている。

この事実を知ったのは私もつい最近なのだが…

そして更に追加の情報として言っておこう。

都内には約3000箇所の屋上がある。

屋上というのは案外どこにも防犯カメラが

あるものなのだ。そしてこのPSPTには

それらすべての防犯カメラを見る事の出来る

モニターが入口、すぐ前方に126個もの数

そのモニターが配置されている。

これらの画面は人の動きを察知し人の気配に

気づいて126ものモニターのうちの

ビッグモニター10個に映されるわけだ。

それで、それを私達の目で判断し危険だと思えば

そこに私ともう一人の現場担当員が向かう。

もう一人って誰って思ったでしょ。

あいつにとって私はどれほど敬われるべき

存在か。君に教えt……。

「どうも~稲さ~ん!なみや~ん!」

は~。来ちまった。あいつが……


* * * * * * * * * * * *


私より甲高いんじゃないかと思うくらいの

高音で叫んで班部屋に入ってきた

少し長い黒髪のまるで高校生のような

涼しい見た目のあいつが私と同じ

           すどう   そうた

もう一人の現場担当員の須藤 奏汰だ。

二十一歳だというのに警察学校を

特案(特別案件)扱いで通過していった

おかしい才能の持ち主。

けど、その才能は社会に活かされず

2歳年上の私にこの態度をとる。

それだけで済まず自分より四半世紀は生きている

若村さんにも私と同じ態度をとる。

ホントあり得ない。でも、彼は別ですごい才能が

ある。それはまた後で話そう。

「奏汰く~ん。君も名宮くんと同じで遅刻だよ。」

決して私と須藤を同じにしてほしくない。

という気持ちをどうにか抑えて笑顔で

「須藤くん。どうしてこんな遅いの?えっ?」

と優しく問いかける。

「なみや~ん!うっす!

あっ、昨日、髪切りました?」

こやつは先輩の質問を遥か彼方に無視し

逆に自分自身も質問で返してくる。

「君はね。人と話すべきだよ。須藤くん。」

私が二重で"脅し”をすると、彼は耳を貸さずに

左手で握ったリモコンでテレビをつける。

そしてテレビから流れるニュースの音。

『速報です。東京都江戸川区のショッピングモールにて爆破事件が発生、警視庁などから警察官が…』

彼の身勝手さに手を焼くのに退屈し、

私はスマホをいじり始める。


『ヴーン、ヴーン、ヴーン、ヴーン』

険しくなるサイレン音。

これは緊急出動命令のブザー私達は駆け出す。

「名宮く~ん!奏汰く~ん!場所は

 東京都文京区の家電量販店!

 位置情報送信。ポチッとな。」


* * * * * * * * * * * *


「現場に着きました!」

「そこの屋上!服はベージュのコート!」

階段をかけ上がる。エレベーターは降りてこない 可能性の方が高いから。

鉄製のドアを開けるとそこには

自殺志願者の髪の毛が長く整った男がいた

「何してるの、止めなさい!」

私が声を出す間も無く、影が飛び出した。

須藤だ

彼は男の両肩をつかんでプロレス技のように

後ろへ倒した。

「は、放せよお前!俺は死にてぇんだよ。」

男が暴れている。体を揺らすが奏太の

体重は筋肉があるから普通の人間より

重いだろう。

「なんで……俺を死なせろよっ!」

男は焦点を失った目で奏太を見る

「家族は死んだんだよ!もうなにもねえんだ……

仕事なんて手につかねぇ。家族に会いてぇ。

なぁ離してくれよ。放せよ!」

「奏太、こいつ呼吸が不安定だ。

早く拘束しないと。」

しかし、私の発言を奏太は無視して

ただ、手で押さえつけている。

「ねぇ!聞いてるの!?」

奏太は私に向かって人差し指を立てた。

「お前は何で死のうとしてるんだ。

そもそも何で家族は死んだんだ。」

不精ひげを生やした男の口が震えながらしゃべる。

「俺の家族は、麗奈は、」

「ゆっくりで良い。落ち着いて話せ。」

男が一呼吸置いて話し出す。


「俺には妻がいた。本当に、本当に麗奈は、妻は

可愛かった。優しくて料理は上手って

ほどでもなかったけど。たまに失敗した

焦げたハンバーグを二人で笑いながら食べて。

そんな麗奈との日々が毎日が

本当に愛おしかったんだ。でな、そんなある日に

麗奈が俺に言ってきたんだよ。

"こどもができた"ってな。

その時はどんなに嬉しかったか。

君ら若いもんにもいつかは分かるさ。

愛する者と自分の二人で作ったものって

どんなに小さくても、とっても愛くるしいんだ。

何か愛が増えていく感じでな。

その時、俺は彼女がなにかを話す前に

迷わず泣きながら彼女に抱きついてさ。

"産もうよ"って言っちまったんだよ。

でもな。それが間違ってたんだ。

彼女はもうその時、がんだったんだよ。」


* * * * * * * * * * * *


「あいつはさバカだから産もうって

頑張っちゃってさそのせいで癌は

悪化しちゃってステージ2からステージ4まで

上がっちゃってさ。もう余命が分かるくらいになってその頃に麗奈の医者が俺に言ったんだよ。

麗奈は癌になったって。どう感じたか分かるか?

あのときの俺が。正直俺は人殺しなんだよ。

麗奈の親御さんはな麗奈が高校生の時に

死んでてな。親御さんが俺になんて言うか。

怖くて怖くて、毎年行ってた墓参りも行かなくなったよ。でもな、麗奈の顔見ると笑ってんだよ。

それでいつも俺は笑っちゃうんだよ。

もう麗奈は二年も生きれないってのにな。

麗奈は無理してたんだと思う。

髪の毛も抜けてきてさ、そんな風に抜けてきても

あっ髪整えなくて良いんだーって

俺の前ではずっと楽しそうにしてるんだよ。

でもな医者によるとそのときから、

胸とかは激痛だったんだよ

もう何が何だか。」

もうこの人の声しか私の耳に入ってこない。

周囲の雑音は私にとってどうでもよくなった

「でな、そんなある日に麗奈が言ってきたんだよ……」

もう私はこの話から逃げられなくなった。


* * * * * * * * * * * *

ここまで読んでくださりありがとうございます。

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