ルーツ 俺の祖先はどこの人?
20年ほど前の話である。
川久保 明、36歳。独身。
ある日、会社で由緒正しい家柄の人が俺は17代目だ、とか話しているのを聞いてふと自分の先祖が気になった。まずは父親に聞いてみた。
「うちの死んだ爺さんのその爺さんとかってわかる?」
「いい質問だ。それがわからんのだ」
父親の話によると、うちの爺さんは7歳の時に継母と仲が悪く家出をしたらしい。
小学校も行ってないので、字は書けないし、何言ってるかもよくわからない人だったそうだ。明治17年生まれだったそうだ。
父親の4歳年上おじさんがいるので、久しぶりに遊びに行って聞いてみた。
「うちの死んだ爺さんのその爺さんとかってわかる?」
「いい質問だ。それがわからんのだ」
なんじゃそりゃ?おんなじじゃねえか。爺さんは初婚だったが、婆さんは再婚だった。
「婆さんの連れ子、正雄おじさんは実は父親が違うんだよ」
へえ、そうなんだ。正雄おじさんてすごく偉そうな人だよね。
「偉いぞ、生きている中では筆頭だからな。ただ、本当に一番偉いのは正巳、お前のおやじだよ。唯一高校に行って銀行に勤めたのだから」
うちの父親よりも20歳も年上の正雄おじさんに色々と聞いてみた。
「うちの死んだ爺さんのその爺さんとかってわかる?」
「いい質問だ。それがわからんのだ」
あんたもかよ。おいらはどうしたらいいんだい?
たださすがに正雄おじさんは色々と知っていた。
「45で結婚して子供二人作ったのか。やるな爺さん」
「いや、作ったのは4人だ。2人は子供のころ亡くなってる」
爺さん絶倫かよ。
「明。新宿の墓は知ってるか?」
「たまに墓参り行くけど」
「その墓石を見てみな。名前が彫ってあるから。そこにお前の探してるヒントがあるかもよ」
お墓は靖国通り沿いにある古いお寺の中だ。
近くの花屋さんでお花を買って、井戸で水を汲み、お寺でお線香を買った。
お墓に水をかけて、掃除をして花を飾った。さあここからだ。
墓石をみた。川久保 源三。爺さんだ。ん?じゃあこの墓を作ったのは誰だ?
爺さんより前に死んだ人の名前が彫ってあった。若林 志穂。そうか、継母だ。
結局ここまでしか追うことができなかった。爺さんどこから家出してきたの?
その後俺は結婚して子供ができた。仕事は静岡で転勤がなさそうだったので中古住宅を買った。安くていい物件だった。ハンコを押し、土地の登記簿を見たら 字川久保 という住所だった。
ま、まさか。
おしまい