012 レントン地下迷宮1
少しダンジョンの話が続きます。
ハラヤギ街のギルドで先程の戦闘について報告をし、討伐依頼表を確認していると。
「アーシェ、これなんてどーだ?」
「どれどれ?」
エリュが見つけたのは[ダンジョン最奥の秘宝]と書かれた依頼書だった。
「えーと、レントン地下ダンジョンに眠る虹の宝玉を持ち帰った者に百万の褒美を与える。って、エリュはダンジョン目当てでしょ?」
「おう!ダンジョンなんて暫く潜ってねぇからな。久々に行きたくなっちまった」
「私達はこんなことしてる場合じゃないのよ?」
「良いじゃねぇか。1日だけ、な?」
「しょうがないわね。明日の朝から夕方までなら良いわよ。その時間に達成出来なければ地上に戻るわよ」
「よっしゃ!そー来なくっちゃ」
ダンジョンの依頼は、任務達成出来なくても違約金は発生せず、むしろ持ち帰った宝を売れば損をすることはない。にも関わらず、この依頼書が残っていると言うことは難易度が高いか、はたまた厄介な魔物が出現するかのどっちかだ。
エリュに押される形でダンジョン探索を行う羽目になってしまった私は、依頼を請けると受付に報告と、潜るならエリュの冒険者登録を行わなければならないのでついでにやってもらった。
一番下のEランクのタグを受け取り、明日に備えて買い物と宿探しを。
翌朝、待ってましたと言わんばかりに目的のダンジョンへ飛翔したエリュ。
あっという間に着き、早速潜る事となった。
「さぁ、何が出てくるか楽しみだぜ!」
「一層目は大した魔物は出てこないわよ。それにしたって狭いわね」
「あぁ、これじゃあ竜に戻れないな」
一層目は岩壁に囲まれた通路となっており、狭くてとてもじゃないが竜など通れるはずがなく、人化したまま先を進んでいると。
「ネイキッドだわ」
「ダンジョンでしか見ない奴だな!何十年ぶりに見たぜ」
ネイキッドとは、全裸で彷徨くアンデッドの一種で、ゾンビ系と同じ噛みついたりしてくる。
ただゾンビと違って、すこぶる脆い身体と燃えやすいのが特徴だ。
こんな連中じゃあ何体居たってエリュの敵ではなく、狭い通路にひしめくネイキッド達を炎魔法で消し炭に変えた。
「ドロップ品は…亡者の爪ね。一応拾っとうかしら」
「なんか役に立つのかそれ?」
「私は使わないけどギルドで買い取ってくれるのよ。毒薬に使えるからって」
「ほぉーん、金になるんじゃ拾っとくか」
かさ張らずに売れる物なら拾っといて損がない。
倒しては拾って倒しては拾ってを繰り返す内に、一層目のボス部屋へと辿り着いた。
やる気満々のエリュが飛び込んで行き、中央に佇む[ドラウグル]へ炎をぶつける。
肉体強化が使えるアンデッド系上位種のドラウグルも、エリュの魔法では一溜まりもなく丸焼きにされてしまい、立っていた場所にはドロップ品だけが残された。
「一層目じゃこんなもんだよな」
「可哀想なドラウグル。安らかに」
「どっちの味方だよ!!」
[ネイキッド]
全裸で徘徊するアンデッド。
男女とも存在するが、見た目が見た目だけに興奮は覚えない。
ドロップ品は亡者の爪。毒薬に使えるので買い取りを行っている。
[ドラウグル]
肉体強化が行え、腕力だけで人間の頭を吹き飛ばせる。
また、スピードと物理防御も向上するが、魔法耐性だけは向上しない。
ドロップ品は売れもしない腐肉。当たりの場合は一時的に肉体強化が使える魔法石。




