Dance on the moon.
主人公ージェーン・フランツカ
黒長髪に黒目の女性
ニーナを護衛している女性、昔、護衛中に右腕を失い義手になっている。
ヒロイン:ニーナ・アドラミス
金髪に赤目の少女
とある秘密を持っているフランツカの護衛対象であるお嬢様、フランツカの事をジェフと呼んでいる。
例え、周りのみんなが君を君として認めなくても私は君を認める……いや、認める事しかできない。例え君が人を傷つけるのが嫌で、その地位にいるのが嫌で、道具としてしか使われてなくても君は君はと言う存在で生まれて来た。それを否定する事は僕にはできなかった。
「…………………………」
だから、今日君が敵に捕まったと聞いてふざけんじゃねぇと思った。薄暗い廊下を歩きながらキリッと歯を鳴らす。目の前にガタイの良い男が現れる。
「あ"あ"ん、てめー誰だ、どうやってここに入って来た!」
「そりゃ……ぶっ倒して来たからに決まってるだろ」
無造作に鳩尾に一発拳を入れる。それまで余裕な表情をしていた男の顔が歪みありえないと言う顔になる。あぁ、そりゃそうだよなぁ、こんなにも体格差あるのに内臓に激痛が走ったんだよな普通はあり得ないようなそんな痛みがよ。
「うご…………」
「ただの生身の人間でかなうと思うな」
その一撃だけで男は気絶し、白目を剥くとその場に伏してしまう。この右腕はあの日お嬢を救う為に失って、義手になった。その為生身の人間は一発で気絶させることができる。そのぐらい強い力を発揮できる。けど、それにささやかな不安もある。でも、それでも、あの子を守る為には必要な力なんだ。
「さて……お嬢は、いや、これじゃ他の奴らと同じか、ニーナ様は……」
手をパンパンと叩きながら歩いていると、厳重にドアをロックしている扉を発見する。それを見つけるやいなや扉の前まで行きふぅーと息を吐きながら一気に腕を後ろに振り扉に打ち付ける。
「はぁぁぁぁぁぁぁ」
バギンっと言う音がなり一発で扉が粉々になり警報音が鳴るが誰一人駆け寄ってくる気配はなかった。部屋の中を見ると薄暗く中には椅子と机と机の上にある燭台だけで、誰かがいるように見えなかった。
「おーい、ニーナ様いる?」
一歩踏み入れるとガチャンっと言う音がなり、横の壁が開き鉄球が勢いよく飛び出してくる。反射的にその鉄球を確認することはできた。
「くそっ、罠か」
不意をくらった為身動きが出来ず、右腕でその鉄球を受け止める。しかし、勢いを少なくする事はできても、相殺できなかった。そして部屋の中に吹飛ばされると同時にガキッという変な音が右腕から鳴る。地面を何度か打ち付けられたあと鈍い痛みが右腕に走る。
「いっっっっこんの、野郎……」
体の節々が痛いのを我慢しながら起き上がろうとして右手を動かそうとするが、ピクともしなくなってしまう。いくら脳で指示しても動かなかった。
「うっそだろ……まさか、ぶっ壊れたんか」
何度指示しても右腕は動く気配はなく沈黙を保っていた。
「んなけねー、動け動け、動けっての……っちくしょう……なんで、なんでここでぶっ壊れんだよ、こんちきしょう!!!」
動かなくなった右腕左手で支えつつどうにかして立ち上がると、入り口から少し筋肉質の男が一人入ってくる。
「そうかいそうかい、ここの部屋は罠があるから人が来なかったんだな」
吹き飛ばされた反動で少しおぼつかない足取りで居ると、無言のままその男が突っ込んでくる。
「くそっ」
避けようにも足取りがおぼつかない為、頰にその男の拳の一撃が入る。普通の拳の痛みと何か鉄っぽい物に殴られた感じがする。
「おいおい、メリケンサックなんてせこいじゃねーか」
よりによって武器使ってくるのかよ。せこいじゃねーかこ野郎。後ろに何歩か踏鞴を踏み、追撃するように男が懐に入って来て何度も殴り込んでくる。全て腹で受け止める。胃の底から何かが込み上げてきた。鉄の味と嘔吐した時に感じる痛みを感じながら口に手を添えながら膝をついてしまう。
「ウボ……ウグ……」
指の合間から胃液と血の混じった液体が床にポタポタと落ちる。
「何か言い残す事はあるか」
目の前に立った男がそう冷酷に聞いてくる。それに対してふっと嘲笑する。
「お前こそ、何か言い残す事は無いのか」
「では、死ね」
思いっきり拳を振り上げ打ち付けるタイミングを狙い、横に避ける。そこから部屋の中にあったテーブルの上にあった蝋燭の燭台を掴み男に殴りかかる。それを男は両手でガードする。
「俺はこんな所で死ぬわけにはいかねーんだよ、俺には俺の守らなきゃいけねー奴がいるんだ」
「では尚更死んでもらいます」
膠着した状態からお互い下がり、無言のまま相手の様子を伺う。少しの間無言で対峙する。対峙する男の目はなにかを突き通そうとする意志の強い燐光が灯っており一歩も譲る気が無いのを感じ取れた。
「そうか……」
でもな、私は負けるわけにはいけねーんだよ、あの子ーーお嬢を守る為にはどんなことでもしてやる。
「なぁ、あんた、家族はいるか」
沈黙を破り聞くと男は少し驚いた顔になって、ふむと少し悩み顔になる。
「いるが、それがどうした情緒か?今この状況で敵の心配してどうする、どう見てもお前の方が不利だぞ」
「いや、不利だなんて考えてない、今はもう勝つことしか頭にない、だからお前を殺すか殺さないか、決める為に聞いてるんだ、誤っても殺さない為にもな」
睨みつけて燭台を構える。それを合図にして、あちらが先に仕掛けてくる。
「はぁぁぁっ!!!」
メリケンサックを振りかぶりながら突っ込んでくるのを避けて近くにあった椅子に飛び乗る。そして、こちらを見て突っ込んで来たと同時に燭台を使い思いっきり男の頭を叩く。
「うぐっ……」
それにより脳震盪を起こした男を追撃するように燭台を捨て椅子から飛び降り、その溝打ちに一撃入れる。そして数歩下がった男に今度は蹴りを入れる。
「これで、どうだ!」
蹴りによって吹き飛ばざれた男はそのまま地面に倒れ動かなくなる。
「ふぅ……うぐ……ふぅ……ふぅ……」
込み上げてくる血の味を耐えながら男の所に行き、脈拍を測り生きていることに安堵する。そこから男のポケットを漁る。すると、男の服のポケットからこの屋敷の地図とお嬢を監禁している部屋の印とカードキーを見つける。
「はっ、なんちゅー運の良さだよ、本当」
今の一戦でかなり体力等を奪われたものの、今の男が最後だったらしくそのあと敵が現れる事はなくなった。最近は右腕に頼ってばかりだったから生身の身体の方も鍛え直さないとと思いつつかったるい体を引きずりながらどうにかして監禁部屋の前までくる。
「ここか……」
少しの震える左手でカードキーを使い、ドアを開ける。部屋の中はベット一つしか無くベットの上に手を縄で縛られている金髪の少女しかいなかった。
「ニーナさま、ようやく見つけました……」
「……なんで、どうして来たの、ジェフ」
ボロボロの服を着て、金髪の少女……ニーナさまがが驚いた顔をしながらこちらを見る。
「ニーナさま、よくご無事で」
どうにかして笑みを見せるとお嬢は眉をひそめて泣き顔に近い顔になる。
「よくぞご無事でじゃないわよ!」
それまるでこちらを心配してる様に言ってくるお嬢を他所に私は腰のベルトから十得ナイフを取り出し、縛っていた縄を切りてを自由にしてあげる。十得ナイフをしまうと手を取り地面に降りてもらう。
「なんで、なんで、ここに来たの、私は……私は……っっっっ」
「ただの、身代わりと、でも……言いたいのかい?」
その言葉目の前に立ったニーナ様は顔を俯かせる。確かに今目の前にいるニーナ様は本物のお嬢じゃない、今雇われている人のお嬢の身代わりとして育成された別人のお嬢だ。ずっと、身代わりとして生き、誰にも何も祝われずずっと一人ぼっちだったもう一人のニーナ様。
「私は、ずっと、二人の、お、嬢を身代わりではなく、お嬢として、見てきました」
ずっと誰にも見られず、生きてきた負の役しかあてがわれてなかったお嬢であり、今日はそのお嬢の初めてお嬢としての誕生日を、祝う為に家族総出で外出をした。その矢先、祝われるはずのお嬢だけ攫われると言う事が起こった。ずっと負の役しかやってこれなかったこのお嬢がやっとの事で一時的にでも表に出れる機会だったのにそれを潰してくれたクソどもがここに居るのを知り殴りこんだのである。
「だから、私から言わせて下さい」
そこで一旦息を止めニーナお嬢様の目と合わせる。
「初めての、誕生日おめでとうを、さ…」
そこで涙腺が崩壊をしたのが、ニーナ様の目から涙から流れ始める。
「……なんで、なんで、ジェフはそんなに優しいの」
「私は優しいんじゃありません」
「だったら、なんで、なんでそんなにボロボロになって右腕も動いていないのに、血を吐いてるのに。どうして、どうして私を助けに来たの、私なんかの為に……」
「お嬢、それ以上言ったら、怒りますよ!私は、私は、ただ……ただ……」
貴方と言うお嬢に恋をし、支えたいんです。ただそれだけの事なんです……そんな事は面と向かって言えない為思わず口籠ってしまう。
「ただ……?」
「ふぅ……いいえ、気にしないでください、こんな傷お嬢が居なくなるのに比べたらどうって事は無いですよ」
それから溢れて出ていた涙を左手で取り出したハンカチで拭き取りはじめる。少しの間ひゃっくりをして、泣いていたお嬢が収まるの待つ。
「逃げますよ、お嬢」
「………………うん」
だいぶ泣き止んだお嬢を見ながら言うとお嬢は頷く。ただ、やっぱ捕まった不安とかが払拭されていないお嬢を見るとなんか胸が苦しくなる。やっぱ、言い方を変えよう、もっとこう安らぐような言い方に……
「いや、言い方を、間違えたな」
「ん……?どうしたの?ジェフ?」
真正面に立ったまま膝をつき、手を差し伸べる。それからお嬢の顔を見て目を合わせる。
「Shall we dance on the moon?」
一瞬だけ驚いた顔になりそれから笑みをこぼす。そして自分の手にお嬢の手が重なる。
「Yes,my partner.」
その後、無事に逃げ出す事はできだのだが、身勝手な単独行動したとして自分は雇い主からめちゃんこ怒られましたとさ。