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需要と供給

作者: 黒猫

ある不運続きのパン職人が、占い屋にいる。


「……それで、ガラスが何もないのに割れるなどの出来事の原因を、占って欲しい、と」

「ええ、あのパン屋にはお化けがいるなんて噂も出て、店の営業どころじゃありませんよ、早くなんとかしたかったところに、偶然チラシを見かけて、それでこちらにお邪魔した、というわけです」

「なるほどなるほど、…………、ほう、こりゃアレですよ、お化けとかそういう類のもんじゃない、泥棒かなんかにやられてるだけですな、大したことじゃございません」

「泥棒って、じゃあ警察を呼ぶしか…」

「いやいや、そう焦って警察沙汰にしても、悪い噂が経つでしょう、ここはひとつ、私の知り合いにお任せ下さいな。ほら、このビルのひとつ上の階に探偵事務所があるでしょう。元警察官なんですが、私の古い友人でしてね。心配なら紹介状の一枚でも書いておきますよ。お題は半分にまけておきますから、、早く行っていらっしゃい」


ある不運続きのパン職人が、探偵事務所にいる。


「なるほど、話はわかりました。では早速明日から、うちのものを数人見張りに向かわせましょう。もし何かあっても、身内が警察ですから、噂にすることもなく内々に済ませましょう。全くパン屋の営業の邪魔はいたしませんから、ご安心ください。何、私の勘じゃあ、一ヶ月もあれば万事解決しますよ。」

「じゃあ、是非よろしくお願いします。店にカメラを付けたりなどは…」

「いや、全く必要ありませんよ。あなたの店は、全くいつも通りに一ヶ月過ごしてくだされば良いのです」

「ありがとうございます。それで、お代の方は…」

「とりあえずこれだけ支払っていただいて、仕事が長引いたらまたいただきます。解決した時には、成功報酬をいただくことにしております」


不運続きだったパン職人が店にいる。


「いや、あれだけ色々なことが起こっていたのに、この二週間、何にも起こっていないんです。本当にありがとうございます」

「ありがとうございます。やはり、見張りの成果が出ているんでしょう。」

「その見張りなんですが、いつもどこにいらっしゃるのでしょうか。営業に集中できるのは良いのですが、いつもどこにいらっしゃるんだろうと思っているんです」

「そりゃあ、皆さんに気づかれないように犯人を牽制するのは、プロの技でございますから。警察仕込みは伊達じゃないですよ」

「いやそうですか、流石はプロですよ。感服しました」

「ありがとうございます。ただ、まだ根本的解決とはいかず、もうしばらく時間をいただきたいのです。そこで、…」

「追加のお金でしたらすぐ用意できますから、是非お願いしますよ」

「そうですか、それは良かった。それじゃあ、また続けさせていただきますよ」


不運続きだったパン職人が、探偵事務所にいる。


「結局二ヶ月もいただいて、申し訳ない。ただし、犯人はきっちり、誰にもバレないように警察に引き渡しましたから、もう心配いりませんよ」

「いや本当にありがとうございます。これでまたお客も来るでしょう。本当に、なんとお礼を申し上げたら良いか…」

「いやいや、そんな、仕事ですから、礼には及びませんよ。私どもとしては、きっちり報酬がいただければ、きっちり仕事をいたしますよ」

「それはもう、もちろんきっちり報酬は差し上げますよ。本当に、あなた方には感謝しているんですよ。あなたを紹介してくれた占い師の方にも」

「そうですか、彼は信用できる男ですから、また何かありましたらウチ共々、よろしくお願いしますよ」

「もちろんですよ」


評判の占い師の男が、知り合いの探偵事務所にいる。


「いやはや、今回は結構なカモでしたねえ。延長しても、何も疑わなかったそうじゃないですか」

「ええ、丸々二ヶ月分いただけましたよ。また折半でいきましょう」

「ええ、もちろんですよ。いつも多く仕事してくださって、申しわけありませんね」

「そんな、まず占いで仕事してくれなくちゃあ、このやり方はうまくいきませんから。『占いで出た』というのは、結構人の心を縛るものですよ、特に困った時に、チラシが入っていたとはいえすぐ占いに頼るような人の心は、ね」

「確かに、その通りです」

「でも、見張りの人員について聞かれた時は、ひやっとしましたよ。何せ、うちは挨拶に行かせた以来、一切見張りなんて出してないんですから。まあ、なんとかごまかしましたが」

「いや、事前の仕込みもバッチリでしたよ。怪奇現象だって、怖がってました。やっぱり、元警察の空き巣専門は伊達じゃないですよ。」

「伊達じゃないですねえ。勢いで警察を飛び出して探偵事務所を開いたは良いものの、全く売れなかったところに、いわば救いの手を差し伸べてくれたのはあなたですから

「うちも苦肉の策だったんですから、お互い様ですよ。まあ、今時、ニーズはこっちから作りに行くものですから」

「全く、その通りですよ。流石です」

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[良い点] 流石はプロなてん。
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