3話 新たな仲間たち
もう一話投稿します
俺はレベルアップして分かったことをその場の全員に伝わるように黒板に書いた。
それを見てよりやる気を出すのは、やはりまだレベルアップしたことがない彼らだ。
と、思ったら2人ほど女子がいた。しかも同学年で知っている人だった。
「水瀬に新川もいるのか。大丈夫か?」
「こんな時にジッとなんてしてられないからね。ね、葵」
「うん!その通り!」
水瀬 葵と新川 七海は中学生の頃から知り合いで、SMWでのフレンドでもある。
水瀬は魔導師、新川は剣道部を生かして侍の職業でやっていた。
「そうか、頼むな。奏多、友紘、どんな話しをしたんだ?」
「まず、順番に1人ずつレベルアップをさせてその後少しずつ生徒を増やしていき、先生達も頑張って貰って-IONに突入するという計画だな」
「中学校も気になるんだけど、流石に自分の身を呈しても意味なく終わりそうだからね。出来ることからやるつもりだよ」
「そ、それで私が魔法使い、無ければ生産的職業を選ぶことになってるよ!」
水瀬も話に入ってきた。たしかに水瀬は物作りが得意だったな。ということは、
「武器の目処が立つかもしれないのか」
「ああ、そうなれば幾分か楽になる」
みんなでレベルアップする順番を決めている間に3人で詳しい話をする。
「新しいスキルを取得した。『鷹の目』と『自動収集』だ」
「鷹の目は想像つくけど、自動収集って?」
「自分がトドメを刺したモンスターの魔石を自動的に集めてくれるスキルだ。ということでやっぱり魔石は重要なものだと思う」
「だろうな。まだ何に使えるか分からないが、モンスター全てが魔石を持つとしたらその数は膨大。もしかしたら魔石が通貨として成り立つかもしれないぞ」
なるほど、数に対しての使い道として通貨か。十分あり得る話だな。
そうして話していると順番が決め終わり、最初は翔になった。
「方法は2人にやったような感じでいいのか?」
「それなんだが、毎回矢を使っていると消耗が激しいから、理緒さえ良ければ魔力弾の方でやってくれ」
友紘からの話を聞き、即座にメリットデメリットを考える。
『魔力弾』の存在が知られる代わりに、矢の消耗は無くレベル持ちの人を増やすか、
『魔力弾』の存在を隠す代わりに、矢の消耗してレベル持ちを増やすか、か。
考えるまでもないな。
「『魔力弾』を使ってやろう」
「いいのか?」
「矢が勿体無いし、使える回数が分からなければ脅威であるには変わらないだろう。むしろ見せつけることで抑制にもなる」
現在『魔力弾』はMPが80あるので40発撃てる計算となる。
1人につき多くても2回ぐらいだろうし、使えばレベルも上がって回数も少なくて済むようになるだろう。
友紘と残りのメンバーは校舎内に残り、俺と奏多、翔の3人で外に出る。
翔には持っていたという金属バットを持たせる。
作戦的にはモンスターを探し、俺が狙撃し、奏多が友紘から借りたさすまたで抑え、翔が殴り殺すという流れになる。
『気配察知』、奏多の『敵意感知』を頼りにしながら探すと、犬型モンスターを発見した。
「翔、準備はいいか?」
「どんとこい!」
「じゃあ行くぞ」
『隠密』で姿を隠しながら『魔力弾』で『狙撃』する。見事に脚に命中した。奏多が『高速移動』を使用しながら近づくが、先に立ち上がりそうだったのでもう一発。
《スキル『魔力弾』のレベルが上がりました》
お、いい調子だな。奏多はすでに地面に押さえつけている。
翔が近づくと頭目掛けて金属バットを振り下ろした。だが、一撃では死なず何度も振り下ろす羽目になった。
翔が吐きそうになっていたが、堪えていた。やる前に覚悟は決めたのだと言ったのだから乗り越えてくれることを祈るだけだ。
気持ち悪そうにしているが、とにかく一旦校舎内に戻る。
ほかのメンバーが集まってくるが、翔の吐きそうな様子に驚いていた。
友紘が声を聞いた確認すると、頷いたのでメンバーたちの顔に笑顔が浮かんだ。
念のため友紘が聞いた。
「殺すという行為は思っているより心にくるぞ。それでもやるか?」
その問いに躊躇なく頷いたのは意外にも女子2人。男子は考えるようにして、頷いた。覚悟が決まったのだろう。
「じゃあ次は……水瀬か」
「よ、よろしくね!理緒くん、奏多くん!」
水瀬は力が翔ほどあるわけではないので、奏多の包丁付き竹刀を持たせて出発する。
先ほどと同じ要領で探し、狙撃する。『魔力弾』のレベルが上がったからか、一発で立ち上がれなくなった。
威力的には130kmの硬式野球ボールから、160kmぐらいまで上がった気がする。音にすると「ドンッ!」から「ズドンッ!」だ。
念のため奏多が抑えて、水瀬が首元に包丁を差し込む。
少し吐き気がしたようだが、大丈夫のようだ。
……翔の時はミンチになったからな、初めてがアレじゃあしょうがない気がする。
急いで校舎に戻り、確認する。
「ちゃんと声聞こえたよ!ステータス!わっ!あるよ!鍛冶士」
やけに高いテンションで教えてくれる。その中に目的のものがあり、嬉しいのだろう。
一応友紘が確認する。
「魔法使いのような職業はないんだな?」
「うん、あるのは学生と鍛冶師と裁縫師、料理人かな」
「4つもあるのか!?」
友紘が驚いたのと同時に俺も奏多も驚いた。
ちなみに翔は「棍棒使い」という職業についていた。ゴブリンの持ってた棍棒を見せたが、金属バットで行くそうだ。次からはホームランするから大丈夫と言う。そういう問題か?
次は新川で、新川は「侍」の職業についたそうだ。カッコいいな、おい。
他のメンバーも無事に誰一人欠けることなく、レベルアップすることができた。
その最中で俺はレベルが4に、スキルは『狙撃』と『魔力弾』と『隠密』、『空間認識能力』がそれぞれレベルアップ。奏多はレベル3に、スキルは『高速移動』と『身体能力強化』のレベルが上がったそうだ。
俺は新しく取得可能になった『奇襲』を取得した。相手に気付かれず攻撃した場合、威力が上昇する狙撃手らしいスキルだ。
今後はこの場にいる18人が中心となるため、グループ名をつけようと奏多が言い出した。度重なる議論の結果『救世主』となった。ちなみにこれ、SMWのクラン名でもある。
こうして『救世主』主導による、千歳にある高校レベルアップ計画が始まった。
◇
役割分担は『救世主』のリーダーは満場一致で奏多に決まった。
参謀は友紘で、俺は最高戦力なのだという。ちなみにこの空き教室が現段階での本部らしい。
友紘は水瀬と一緒に鍛冶師の力を調べることになり、戦闘職についた新川を始めとする14人は生徒たちのレベルアップ活動始め、リーダーである奏多は先生方を担当している。
俺は上手くいけば『魔力弾』だけでモンスターを倒せるようになったので、MPをある程度減るまで自分のレベル上げをするように言われた。
屋上からやるよりかは、外に出てやる方が距離が近いため威力が増す。
『隠密』で隠れながら、『気配察知』を使いながら探して、『奇襲』の『魔力弾』の『狙撃』で倒すというパターンが成立した。
近場のモンスターは生徒たちが倒しているので、俺は中学校側に行き倒すことに。
中学校では外に出て活動している様子はなかった。
そのため狩り放題なのだが……
「レベル5がやけに必要な経験値が多い気がする」
既に10体以上倒しているが、まだレベルアップしない。『狙撃』と『空間認識能力』はレベル4に、『奇襲』と『自動収集』はレベル2になったが……いや、むしろここまで順調過ぎただけかもしれない。そう思って行動した方がいいだろう。慢心や油断は死に直結する。
俺は引き続き倒そうとしたところで、中学校内から悲鳴が聞こえた。
無視は流石に出来ず、自分の命最優先で行動すると心に決めて、鍵のかかっていない職員玄関から侵入した。
《スキル『隠密』のレベルが上がりました》
《スキル『気配察知』のレベルが上がりました》
丁度いいタイミングでレベルが上がってくれた。
音に気をつけながら歩いて行くと、声は体育館から聞こえるようだった。
体育館のドアは流石に閉まっているため、一旦階段を登り、二階の窓から屋根を伝って体育館の二階に潜入した。
こっそり見てみると、そこには女の子の生徒数人を近くに起き、大人の先生たちは円の中心に、その外側に男子を、更に外側に女子を並ばせて座らせていた。
「肉壁って訳か」
中心に近いほど力が強い人が固まっているので、反撃しようとしたら女子の肉の盾で時間を稼ぎ、見せしめに近くに置いている生徒を殴ったりしたのだろう。
一人の女の子が顔を腫らして倒れていた。
「さて、どうするか」
解放するのはさほど難しいことじゃない。なんなら、『狙撃』一発で終わる。
しかし問題はその後。学校単位の人数を世話できるほど余裕があるわけではない。
SNSを使って『救世主』のグループに相談をする。
明らかに通信速度が遅くなっていたが、なんとか送らさり、その後の問題は解決させるから、とりあえず解放して信頼できる大人にステータスやスキルのことを話す事を頼まれた。
了解とおくり、スマホを仕舞う。
「殺したらトラウマだろうから、『奇襲』はやめとくか?いや、レベル持ちの可能性があるんだよな……まずは脚、反抗し始めたら腕、四肢を使い物にならないようにしたら大丈夫だろう」
結局現段階最大の攻撃を左太腿にぶつける。
「ぐわぁぁ!!」
突如撃たれたことにより、両手で太腿を抑える遠藤。
「降参なら手を頭につけ、うつ伏せになれ」
二階から突如現れた俺に多くの人が驚く。
痛みに喘いでいる遠藤にもう一度勧告する。
「降参なら手を頭につけ、うつ伏せになれ。さもなくば次は右の太腿を撃つ」
「うるせぇぇぇぇ!『狂戦士化』!」
赤い光に包まれると理性を失ったように近くのものを攻撃し始める。
「クソ、やっぱりレベル持ちか」
近くにいた女の子が殴られそうなところを『魔力弾』で腕を撃ち抜く。スキルの影響か、痛みに鈍いらしくそのまま動こうとするので右太腿と反対の腕も撃ち抜き、動かないようにする。
動けなくしたところで先生方の方に話しかける。
「抑えつけときたいんで、ロープとかありますか?」
「あ、あぁ……」
半ば呆然としながら、ロープを渡してくれる。というか、先生方はロープで手を縛られていたのか。
遠藤を立てないようにロープで縛り付ける。もしかしたらこれでもスキルを使えば抜けれるかもしれないので、油断は出来ない。
今の北海道で油断は、したものから死んで行くのだ。
先生方に順番に見張りに着くように頼み、本題を話し始める。
「俺はここの近くの高校在学の3年生白波です。少し前に保護した平田 翔馬君ら4人の証言から救援に来ました。現在高校では『救世主』を中心とした活動をしています。この中で最も信用出来る先生は誰でしょう?」
すると先生方は1人の男の先生に目線を向ける。その先生は視線を受けると、前に出て来た。
「体育教師の金田だ。話をする前に中学校代表として感謝を言いたい。助けてくれてありがとう」
体育教師だからなのか大きな声でお礼を言い頭を下げると、他の先生方や生徒たちも俺に向かい頭を下げる。
目立つの好きじゃないんだけどな。
「頭をあげて下さい。自己満足でやったにすぎないですから気にしないでください。こんな状況ですから、早速話をしましょう。外にモンスターがいることは?」
「知っている。校内に入ってきたやつを遠藤先生……遠藤が倒した瞬間、急に笑い始めてなにやら指を動かすと「俺の時代だ」とか言い始めて、他の先生方を殴り始めた。俺も止めようとしたんだが、妙に力が強くてやられてしまった。後は君が知る通りだ」
「ではまずレベルアップ、ステータスとスキルについて説明します」
俺が言うことを最初は信じれないようだったが、現状と俺が遠藤を遠距離から倒した事を言い納得してもらった。大事なのはここからだ。
「俺がなぜ信用できるという金田先生だけに言ったかというと、遠藤のように力を手に入れたら暴走する奴が出るかもしれないからです。特に生徒はそういう特別な力に憧れるものでしょう」
「ああ、その通りだな。白波君の忠告、感謝する。良かったら他にも現状を教えてくれないか?」
金田先生に北海道のみでモンスターが発生している事、ダンジョンと呼ばれる穴からモンスターが出てきている事、-IONがシャターを閉めて入れない事を教えた。
また何かあったら連絡しようということになり、連絡先を交換した。
いつまでスマホが使えるか分からないけどね。
と、思っていると奏多からラインが来た。
えーっと……げっ、マジかよ。
奏多からの要望に顔をしかめていると、女の子の1人が話しかけて来た。丁度今送られてきた内容について。
「あ、あの!『救世主』ってなんですか?」
「あー……『救世主』とは高校生18人で結成された団体で、この未曾有の事態の中で救命活動を中心として活動する団体です。SNSが使える限り、『救世主』に連絡くれれば、救助しに向かうので是非覚えていて下さい。連絡先は金田先生に教えたので、後で教えてもらって下さい」
最後の言葉以外、奏多から送られてきた内容を喋っただけだ。なにが広報活動しろだ。そんな余裕あんのかよ。
現代の中学校にはスマホの持ち込み可能な為、多くのというか全員が連絡先を登録していた。
俺も登録してある。ライン、ツイッターを中心として活動するらしい。ご丁寧にURLまで貼ってある。
ちなみに多くの女子生徒や、男子生徒が俺に群がってきたのでささっと退散した。
そして入った入り口である職員玄関から出て、高校に戻ろうとした時だった。
中学校のグラウンドの穴、ダンジョンから他の犬型モンスターとは一線を画す、一つの体に二つの頭を持つトラックほどの大きな体躯のモンスター、『オルトロス』が現れたのは。