第7話 微睡みの中で
本日一回目の投稿です。よろしくお願いします。
私は休日をほとんど寝て過ごした。この世界に存在している人間で、布団の魔力に抗える人はいないんじゃなかろうか。私は暖かさを絶え間なく与えてくる布団様(?)に潜りつつ、そんなことを考えていた。休日も終わり今日は登校日。そろそろ起きなければならないが、体が言うことを聞いてくれない。
嗚呼、このまま心地よい眠りにつきたい。
ふわふわとした意識の中、布団を巻き付け芋虫のような恰好になっていると部屋の扉が開いた。
「お姉ちゃん、朝だよ。起きて?」
無慈悲な宣告が降りそそぐ。私はそれを聞かなかったことにして、もう一度夢の世界に旅立とうとした。グッバイ妹、また会おう。
そんな私を見た妹は腕を組み、何かを考えるそぶりをする。そしてこちらに近づき、なぜか布団の中に入ってきたのだった。
…ふむ。
私を起こしに来たはずなのにお前も寝るんだね。私は心の中でそう呟いた。
妹は聖域の侵入に成功すると、手と足を絡ませて私の背中に抱きついてきた。私の体はがっちりとホールドされ、二つのマシュマロが襲ってくる。妹のたわわな感触によって頭は覚醒したが、体を固定されているため起き上がることができない。身動きをとれない私に追い討ちをかけるように、うなじに顔を近づけクンカクンカ匂いを嗅いできた。
妹様よ、やめてください。
布団の暖かさによって少し汗をかいてるエリーナ。そんな状態で匂いを嗅がれるのはたまったもんじゃない。私は抱きついている妹ごと体を起こした。
「リリー。起きるから匂いを嗅ぐのはやめて。汗をかいてるし恥ずかしいわ。」
私は早口で妹にお願いした。
「えぇ〜。いい匂いだし気にする必要ないよ。」
そんなことを言って嗅ぎ続ける妹。
「はぁぁ…癖になりそう。」
トロンとした顔で私にそう告げる。なにそれ怖い。緊張して冷や汗が流れる。
ペロッ
首筋に流れた私の汗を舐められた。ゾクゾクッと電流が流れたような感覚が背筋を襲う。
「んにゃっ、ひょえっ?」
背筋を伝って脳天に叩き込まれた衝撃に、私は背を激しく仰け反らせながら声を漏らした。
「ちょっ!! やめっ、やめなさい!」
「……?」
リリーはキョトンとした顔になる。
心の中では、どうしてやめなきゃいけないの?お姉ちゃんは私のモノ。お姉ちゃんから排出されたものなら、汗でもなんでも全て欲しい。そんなクレイジーなことを考えていたが、エリーナにはそんな考えなど気付けるわけがない。
身の危険を感じたエリーナはベッタリくっついている彼女を引っぺがし、朝食をとるためリビングに向かうのだった。
朝食をとったあとすぐに家を出た。急いで学校に向かう。
ふぅぅ〜。
教室に着き自分の席に座ると疲れがどっと出た。まだ来たばかりだが、今朝の出来事が濃厚過ぎたのだ。生気の抜けた顔をしながらボーッと正面を見つめると隣の席から声をかけられた。
「エリーナさん、なんだか随分と疲れてるね。」
笑顔を見せながら聞いてくるのはルーシェさん。私はそうなのよ、と言葉を返す。
「そんなあなたの疲れを癒してあげよう。」
ルーシェは偉ぶった口調でそう言いサリッサを呼んだ。
「じゃあサリッサさん。エリーナさんが疲れてるらしいので、あとはお願いしますね。」
そう言って彼女はどこかに行ってしまった。サリッサはルーシェの後ろ姿を呆れた様子で見送りつつ私の方を向いた。
「それで?疲れてる原因は?」
サリッサは私を探るように目を細めながら聞いてきた。大した理由じゃないし精神的な疲れだから気にしないで、と誤魔化す。納得していないような顔つきのサリッサだったが、それならいいと言葉を返した。
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昼休みになりサリッサから一緒に昼食をとろうと誘われた。以前私が誘ったとき断ったことを気にしていたのだろう。私は了承し、それなら屋上で食べようと誘った。サリッサはなぜ屋上?という顔をしていたがいいよ!と言ってくれた。
屋上に誘った理由は以前名前を教えてもらえなかった彼女に会えるかもしれないと思ったからだ。それに包容力のあるサリッサを連れていけば名前を聞けるかもしれないという打算もあった。
屋上に到着し、私は扉を開く。そして彼女の姿を探した。
姿は見えなかったが、おそらく彼女の荷物と思しきものが置かれている。
(ここで待ってれば会えるよね)
私はサリッサに声をかけて昼食の準備をするのだった。
――どうしよう。
その頃ミアは物陰で頭を抱えていた。
お花を摘みに席を外していた間に、どうやらエリーナが屋上に来てくれたようだ。以前のような態度を取らないように頭の中でシミュレーションしつつ彼女に近づこうとした。
しかし知らない声が聞こえて思わず足を止める。どうやらエリーナは友達を連れてきたようだ。
エリーナが屋上に来てくれたのは嬉しいがまさか友達を連れてくるとは思わなかった。エリーナと一対一ですら緊張して素っ気ない態度を取ってしまったというのに、自分の知らない人までいるのはハードルが高すぎる。
(小心者な自分に勇気をください)
ミアは手を組み神に祈るのだった。
1、2、3という形でタイトルを付けていましたが中身が分かりづらいと思いました。なので時間があるときにタイトルを変えたいなと考えています。




