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第5話 シニカルな笑み -ミア視点-

本日3回目の投稿です。

 

 私の名前はミア。今年セリーヌ学園に入学したばかりの一年生だ。


 ミアは今登校中なわけだがその足取りは重かった。


 学校は憂鬱(ゆううつ)だ。


 お父さんっ子だった私は父の影響で男性的な口調になってしまった。しかも私はキツイ喋り方をするらしく人と話すと相手に恐い印象を与えてしまうのだ。そのため友達がおらず学園生活も肩身狭い思いをしていたのだ。


 足を止めて溜息を吐いていると後ろから足音が聞こえた。振り返ろうとすると、


「きゃッ」


 走ってきた女性とぶつかりそうになり普段の私なら絶対言わないような女の子みたいな声を出してしまった。まあ私は女の子なんだけどね。


 少し恥ずかしくなった私は思わず、


「チッ……。おい、危ないだろ。もっと前見て歩けよ。」


 と舌打ちして強い言葉を吐いた。相手の女性は怯み、すみませんでした!と謝り逃げるように去ってしまった。


 やってしまった。


 いくら何でも舌打ちはマズかったな…と後悔する。こんな調子だから友達ができないのだ、と自分を責めつつ重い足取りで学園に向かうのであった。



 ----------------------------------------------------



 いつものように屋上で食事をとる。


 教室の空気に耐えられない私はいつも一人でここに来るのだ。初めて屋上に来たときは入り口に鍵がかかっていたのだが身体強化の魔法をかけて強引に開けた…というか破壊した。これ先生にバレたらやばいな…と思いつつ、誰もいない屋上は中々快適なので何度も利用している。


 そんなとき扉が開いた。


 先生が来たのかと思い隠れようとしたが、物音を立ててしまう。


 しまった!ミスをした私は心の中で叫ぶ。


 私が立てた音に気づいたらしく、屋上に入ってきた人がこちらを見てきた。


「「あっ」」


 先生じゃない。今朝ぶつかりそうになった人だ。


 目を合わせてしまったのでとりあえず話しかける。


「お前…今朝の奴か。何だ、私と同じ学校だったのかよ。」


 恐がらせないように自分にできる最高の笑顔をしながら。

 だが相手はなぜか(おび)えた顔つきでこちらを見て今朝のことを謝ってきた。解せぬ。


 私は謝らせるつもりで言ったんじゃないのに…と少し傷付いたのはここだけの話である。


「…別に気にしてない。」


 私は拗ねたようにそう言って相手の顔を見た。


 …ふぅん。


 今朝はすぐに去ってしまったので相手の顔をしっかり見ていなかったが、ずいぶんと整った顔立ちをしている。私好みの顔だち、そして美しい髪に思わず見惚れてしまった。


 そんな私に不審げな顔をした彼女から話しかけられた。


「あ…あの…なんですか…?」


 やばっ見つめすぎてた!?と動揺する。あなたの顔に見惚れてました…なんて馬鹿正直に言えるわけがない。彼女を見ていられなくなった私は視線をそらし、何でもないと誤魔化したのであった。


 そのあとお互い何か言うわけでもなかったが、一緒に食べる流れになった。

 まだ友達ではないが、誰かと一緒に食べるという行為は初めてだったので嬉しかった。


 何か話しかけたかったが話題が見つからず中々話しかけられない。目の前の彼女も特に話しかけてこなかった。

 無言の時間が続く。どうしようと軽くパニックになりつつパンをちびちびと食べるのだった……。


 結局何も話せなかった私は少し落ち込んでいた。そろそろ授業が始まる時間だ。

 ゴミを片づけていると彼女が振り返り私を見つめてきた。


「そういえば名前を聞いてなかったわ。私はエリーナ。あなたは?」


 驚いた。


 確かに名前を聞いていなかったが、あまり良い印象を与えなかったであろう彼女から名前を聞いてくるとは思わなかったのである。


「さてね……好きに呼べば?」


 自分の名前を言おうと思ったが何故か口からは正反対の言葉が出てくる。しっかりと人付き合いをしてこなかったせいか慌ててしまうと思い通りの言葉を発することができない。


 こういうところがダメなんだ…。


 訂正するのも恥ずかしいと思った私は、屋上から駆け足で出ていった。

 突然のことに頭が処理しきれなくなったのだ。


 暫く走っていると気分が落ち着いてくる。


「くそっ、思わず逃げちまったけれど変に思われたかな…。」


 突然出ていったことを気にしながら歩く速度を緩める。

 充分離れたところまで来た私は足を止め、屋上がある方向に目を向けた。


「エリーナ……か。」


 ボソッと教えてもらった名前を口にし、もう一度会うことがあれば今度こそ自分の名前を教えようと思うのだった。





読んでいただきありがとうございます。

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