第4話 シニカルな笑み -エリーナ視点-
ブクマや評価ありがとうございます!やる気が出ます!!
いつもより遅く起きたため、遅刻しないように早足で学校に向かう。今日の授業は興味のないものばかりなので睡眠が捗りそうだ。そんなことを考えながら走っていると曲がり角で人とぶつかりそうになった。
「きゃッ」
ぶつかりそうになった相手が小さな悲鳴をあげた。そして私を睨み付け、
「チッ……。おい、危ないだろ。もっと前見て歩けよ。」
と舌打ちしつつ怒ってきた。
強い口調に怯んだ私はすみませんでした!と謝りすぐにその場を離れたのであった。
----------------------------------------------------
朝にハプニングがあったけれど、授業中しっかり寝たおかげで気分は絶好調。昼食の時間になったのでサリッサと一緒に食べようかと思ったのだが…。
「今日は部長と学園祭についての打ち合わせがあるから…ごめんね。また明日誘って。」
サリッサは申し訳なさそうな顔で断ってきたのであった。それなら仕方がないとルーシェを誘おうと探したが既に教室にはいなかった。
「たまには1人で食べよう。」
私はぼっち飯に苦痛を感じない人間である。地味だった私は空気みたいなものだったからね。しかし今の自分は前と違って周囲の人から注目を集めやすい。じろじろ見られるのも気まずいので、人がいないであろう屋上に向かうのであった。
「あ、鍵が閉まってたらどうしよう。」
エリーナはそう思ったが、閉まってたら無理やり開ければいいや…とそのまま向かうのであった。屋上の入り口にたどり着き鍵がかかっているか確認すると、鍵が壊された跡があった。おそらく屋上を利用しようと思った先人が鍵を壊して入ったのだろう。
壊す手間が省けました。
感謝感謝。
顔も名前も知らぬ先人たちに感謝をしながら、屋上に足を踏み入れる。
空気がおいしい!日差しがまぶしい!気持ちいい!
心の中で感想を呟いていると、ガサッと物音が聞こえた。気づいていなかったが、どうやら先客がいたようだ。
「「あっ」」
私と目の前の少女の声が重なった。この娘の顔は見覚えがある。今朝ぶつかりそうになった子だ。
「お前…今朝の奴か。何だ、私と同じ学校だったのかよ。」
シニカルな笑みを浮かべながら男性的な口調で話しかけてくる彼女。私は今朝と同様に怯んでしまった。
「あっ、あの!今朝はごめんなさい。」
思わずまた謝るのであった。彼女は別に気にしてないと言い、私の顔をジッと見つめてきた。あまりにも無遠慮に見つめてくるので思わず私は、
「あ…あの…なんですか…?」
と言葉を漏らすのであった。彼女はハッとした顔になり、
「別に。何でもない。」
と視線をそらして言うのであった。
せっかくなので二人で昼食をとったのだが食事中にお互い喋ることはなかった。それにしてもパンを食べる姿が可愛い。一口が小さいためか啄むように食べている。無言の時間は不思議と気まずく感じなかった。
昼食も食べ終わりそろそろ帰る時間になったが、一つ聞いておきたいことがあった。
「そういえば名前を聞いてなかったわ。私はエリーナ。あなたは?」
そう、私は名前も知らない相手と昼食をとっていたのである。聞くタイミングが掴めず結局このタイミングになったのだ。
「さてね……好きに呼べば?」
彼女はそっけない返事をして屋上から去っていった。
1人になったあと、私は彼女が出ていった入口を見つめた。
口調はキツイがちゃんと返事をしてくれたし嫌われてはいないようだな、と勝手に思った。
名前は教えてもらえなかったが…。
これは直感だけど、
彼女とはまた屋上で会える気がする。
もし出会えたらもう一度名前を聞いてみようと思った。




