第16話 話が違います
学園祭二日目の話です。
おはようございます。エリーナです。
初日はハプニング?も少々ありましたがサリッサと楽しく出店を回ることができました。
今日サリッサはメイド喫茶の当番なので教室には既にいません。
早く様子を見に行って冷やかしたいです。
ちなみに二日目から一般公開ということで外部の人たちが学園祭に来るようです。
妹のリリーも見に来てくれるらしく気合が入ります。
まあ私は部活動に参加してないので何もないんですけどね。
「さて、そろそろリリーを迎えに行こう。」
朝、家を出る前に学園祭を一緒に回りたいから校門の前で待っていてとリリーにお願いされた。
まだ早いので来ていないかもしれないが、遅れるよりは早い方がいいので問題ない。
「我ながら妹想いの姉。全世界の姉の鑑ですわ。」
そんな戯れ言を言いながら教室を出て階段を降り一階を目指す。
昇降口を出て校門を見るとまだ柵が閉まっていたが既に人がチラホラ集まっていた。
「皆、結構早くから来るんだなぁ。さて、リリーはいるかな。」
周囲を見渡すと見覚えのある可愛い顔を発見、リリーだ。
「おーい、リリー!…待たせたかしら?」
「お姉ちゃん!ううん、私も来たばかりだよ。」
「そう。それなら良かったわ。」
まさかこんなベタなやり取りをする日が来るとは思わなかった。
クスッと笑ってしまった私の顔を見てリリーはキョトンとしていたが何でもないと誤魔化す。
リリーと少しの間言葉のやり取りをしている間に校門付近にどんどん人が集まって来た。短時間で一気に増えたので人波に押されないよう場所を移動する。早めに来たおかげでスムーズに合流できたけど、もう少し遅かったら探すの大変だったかも。
「まだ校門が柵で閉まっているけれど、あと少しで開演よ。リリーはどこに行くか決めてる?」
「ん〜、特に決めてないけどお姉ちゃんと一緒ならどこでもいいよ?」
ほうほう、可愛いこと言っちゃって。今日は精一杯甘やかしてあげよう。
始まるまで姉妹同士でじゃれあっていると鐘の音が空に響き渡った。
「あ、鐘の音。やっと始まったね。お姉ちゃん、早く行こ!」
「わわっ!ちょっと引っ張りすぎ!」
開始早々テンションマックスで校舎内に入ることになったのだった。
出店が並ぶ中しばらくキョロキョロして歩いているとリリーが何かを見つけ大きな声を出す。
「どうしたの?リリー。」
「あれ!お化け屋敷だって。一緒に入ろうよお姉ちゃん。」
「えぇ〜〜お化け屋敷かぁ……。」
私は怖いものはあまり好きではない。R18指定されたグロテスクなゲームは出来たけど、幽霊とかそっちの類は何故か出来なかった。
しかし言い淀んだ私のことなど御構い無しにどんどん進んで行く。少し抵抗してみるとリリーはこちらを見てウルウルした瞳でこちらを見つめてくるおかげで止まることができない。
(もう覚悟を決めよう。)
腹を括った私は妹に並びお化け屋敷に挑戦することにした。まあ学生クオリティーだからそんなに怖くないだろうし。盛大にフラグを立てたエリーナ。
二人の少女達がお化け屋敷に入ったあと中から叫び声が響き渡ったのだった。
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「はあ、お化け屋敷入らなきゃよかった……これの何が楽しいんだよぉ。」
「そぉ?私は楽しかったよ?」
ヘトヘトの自分とは正反対の元気いっぱいの妹。これが若さ…若さなのか。
とにかく癒されたい。
「リリー、次に行くところは私が選んでもいいかしら。」
「いいよ。どこに行くの?」
「それはね、メイド喫茶よ。」
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妹を連れてメイド喫茶を訪れると足を止めて驚いてしまった。凄まじい完成度。外から中の様子を伺って思ったのだが中の内装や接客が極まっており、元の世界に帰ってしまったかのような錯覚を覚えた。
これは入るしかない。
扉を開けるとフリルをフリフリさせながらメイドさんが近づいてきた。サリッサだ。
「いらっしゃいませ、お嬢さ…って遅いわよエリーナ。もっと早く来るかと思って待っていたのに。」
「ごめんなさい。リリーとお化け屋敷に行ってたから遅くなったの。」
予想以上に可愛いメイド姿に思わずほっこり。この世界にカメラがないことを呪った。脳みそにこの光景を焼き付けるためジロジロ見ているとサリッサの視線が横を向く。
「あら妹さんも来てたんだ。リリーちゃん、久しぶりね?」
「……。」
返事しなさい妹よ。
私の背に隠れてしまったリリーを見て苦笑しつつも席を探す。大盛況のようでほとんどの席が埋まっていた。
しばらく待たされるかな?と思っていたが2人席がタイミングよく空いたので座ることにする。
「注文を聞く前に…エリーナちょっと来なさい。部長がさっき呼んでいたわ。」
「部長さんが?何の用だろう。」
「さあ?来てみれば分かるって言ってたけど。」
呼ばれる理由は分からないけど早く言ったほうがいいだろう。
リリーに行ってくると一言残して私は部長の元に行くのだった。
このあと全く予想していないことが待ち受けていることにも気付かずに…。
読んでいただきありがとうございます。
次で学園祭の話は終わります。




