第13話 不純な動機で
本日2回目の投稿です。
クラスメイト達の話し声。
混ざり合った言葉が溶けて音楽のように鳴り響く。
喧騒の中に包まれた私はぼんやりとその光景を眺めていた。
最近、校内が騒がしい。
お淑やかな女生徒が多いこの学園にしては珍しいと思った。
賑わってる理由をそれとなくクラスメイトに聞いてみたが、えっ?という顔をされる。何故だ。
「学園祭が近いからみんな忙しいのよ。エリート帰宅部のエリーナ様とは違ってね。」
近くにいたサリッサがやれやれとした顔で答えた。
準備に忙しいためかサリッサの機嫌が悪い気がする。カルシウム足りてますか?
それにしても学園祭か〜〜。元の世界、大学1〜3年のとき漫画研究会に所属していたけれど、自分の描いた同人誌を展示するだけだったから準備も何もなかったな。それも4年生になって引退してからはその年は参加しなかったし。
「あー、それなら私には関係ないか。」
この学園では殆どの学生が部活やサークルに所属している。毎年、各部活ごとに出し物をしているので、クラスメイトたちはその準備をしているようだ。まあ私はどこにも所属していないエリート帰宅部なので関係のない話だけれど。
それにしても、エリート帰宅部…。うんっ!良い響き…!!
私の頬は緩み、思わずニヤニヤしていると頭を叩かれる。
「急にニヤけて気持ち悪いわよ。……っ!そうだわ!放課後ヒマなら準備手伝ってくれない?人手が足りないの。」
サリッサが所属してるのは魔導研究会。何してるのかは分からないがサリッサは熱心に通っているようだった。
「それはいいけど…何の出し物をするの?」
内心面倒だな、と思ったエリーナではあったが、幼馴染の頼みは断れなかった。否、断りたくなかった。
「射的よ。」
キリッとした顔で言い切る。
「魔導研究と射的って何も関連性が…なんでもないです。」
そこから先は口にするなと言わんばかりに睨まれたので、言葉を濁す。
「射的…うん、面白そうね。でも準備で手伝えることあるのかしら?あれって景品並べるだけでしょう?」
「その並べる景品を何にするか考えてるの。なかなか決まらなくて困っていてね…。部屋の飾り付けや看板制作、射的に使う銃を作らないといけないから考えてる時間がないの。」
なるほど。私の得意分野を活かすなら看板制作とかの方が良いけれど、景品のアイデアを求められているのならそちらを考えるべきだな。
「サリッサと一日デート券なんてどう?」
「却下。真面目に考えなさい。」
私の案は一瞬で蹴られた。ひどい。
でも知ってるんだぞ。私と違ってサリッサは結構…というかだいぶモテるよね。
そんなことを考えてみるが、自分自身もかなりモテることに気付いていないエリーナだった。
「う〜ん、それじゃあ食べ物とかは?」
「食べ物は管理が難しいから……いや、でも日持ちする焼き菓子とかならあるいは…。」
考え始めてしまったサリッサ。
「いっそのこと射的をやめて他のことをやればいいんじゃない?」
「えぇっ、そこから? 別に射的に拘っているわけじゃないけど…何かいい案はあるの?」
もちろん。私は胸を張ってそう言い、学園祭では定番のアレを言った。
「メイド喫茶だよ。」
「めいど…きっさ?なにそれ。」
この世界にはどうやらメイドさんがいないらしい。私はメイドの良さをサリッサに細かく、それはもう丁寧に説明した。
「まっ、まあそのメイド?の良さは分かったわ。飲み物やお菓子くらいなら管理も簡単だし出来ると思う。」
少し引き気味になりながらも考えをまとめていく。そして部長に相談することになった。
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あれから部長のアリーチェさんと会うことになり私とサリッサの3人で話し合いをすることになった。
「君がエリーナ君かな?メイド喫茶というものをサリッサに提案したそうだね。」
「ええ。内容をまとめたものがあるので読んでみてください。」
私はサリッサに言われ書類に詳しくまとめておいたのだ。
「ふむ…。面白そうじゃないか、採用だ!!」
「「軽っ」」
部長のあまりの即断即決に二人でハモってしまうのだった。
「お菓子や飲み物は調理部に提供して貰えばいいし衣装は…まあ何とかなるだろう。それにしてもこの資料に載ってるメイド服とやらは可愛いな!早く着てみたいよ。」
最後に本音が漏れている。部長さん、メイド服が気に入ったようだ。
「それでは早速取りかかるとしよう。エリーナ君よろしく頼むよ。」
「任せてください!」
可愛い娘が多いから凄いクオリティーになりそうな予感。
サリッサのメイド服が見たくて提案してみたがこんなに簡単に決まるとは思わなかった。
わくわくと心が弾む中、準備を手伝うのだった。
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