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第11話 荊棘の先には

ルーシェは生きていました。

10話の続きです。よろしくお願いします。


「………こ…こは…どこ…?」


眼が覚めると私は見覚えのない場所にいた。全身傷だらけで体のあちこちが痛い。


生きていた。


私は生きていることに安堵し、痛みに顔を歪めながら腰のポーチを探る。


「マズイですね…荷物が消えてます。」


傷を癒すポーションを用意していたがどうやら落としてしまったらしい。

これからどうするか考えを巡らせていると、側から声が聞こえた。


「あら、起きたの?」


私はハッとしてそちらの方を向く。

そして相手の顔を確認し息を飲んだ。

声をかけて来たのはなんと樹木の精霊であるドリアード。滅多に人の前には姿を現さないレアな存在だ。

それにしても随分と露出が高い格好をしている。私は目のやり場に困り視線をグルグル動かしてしまった。


「あの状況から助けてくれたのはアナタですか? もしそうであればありがとうございました。」


「いいのよ。気分はどう?」


「……最悪ですよ。キマエラに追いかけられて身体中が痛いです。」


顔をしかめながら愚痴をこぼすとドリアードはあらあらと言葉を漏らし、しょんぼりとした顔をした。


「キマエラが貴女に近付いていたことに気づいて警告はしたのよ? でも久し振りに声を出そうとしたせいか掠れてうまく話せなかったの…。」


「ああ、あの声はアナタだったんですね。あれがなければ私は丸焦げになっていました。それに慢心していた自分が悪いので気にしないでください。」


私はしょんぼりしたドリアードを慰めてふと、聞き忘れていたことを思い出した。


「そういえばキマエラはどうなったんですか?」


恐る恐る先ほどの化物について聞いてみると、ドリアードは満面の笑みで答える。


「倒したわ!」


当然といった様子。なるほど、流石は精霊様。しゅごい。


ドリアードはそんなことより、と私の頬に触れた。


「あのね、貴女にお願いしたいことがあるの。」


「お願い…ですか。何でしょう?助けてもらいましたし、可能な範囲であれば大丈夫ですよ。」


ドリアードは頬から手を離し、人差し指を合わせモジモジし始めた。



「私ね、この街から人がいなくなってからもずっとずっとここにいた。本体である木から離れられないからね。別にそれは仕方のないことだけど、ひとつだけ我慢できないことがあったわ。それは、話し相手がいないこと。とっても寂しかった。」


でも、とドリアードは言葉を続ける。


「そんなとき貴女を見つけた。」


頭に手を置かれナデナデされる。くすぐったいけれど嫌な気はしなかった。


「たまにここを訪れる貴女を見て思ったわ!すっごく可愛い、話してみたいって。私は人間じゃないけど…貴女とお友達になりたい。なりたいわっ!」


顔をずいっと近づけてきた。吐息が触れる距離。完成された造形。私の瞳は釘付けになり、心臓は壊れてしまうんじゃないかというほどドキドキしてしまった。


「もっ、もちろん!むしろ私からお願いしたいくらいです。ぜひお友達になってください!」


手を差し出すと握ってきた。そして引っ張られハグをする。


「ありがとう。貴女は優しい人の子ね。」


「いっ、いやそれほどでも……痛っっ!!」


キマエラに与えられた傷がズキリと痛み思わず声に出してしまった。

ドリアードは慌てた様子で離れ、私の傷の具合を見る。


「私は痛みを感じないから失念してたわ…。すぐに治してあげるわね。」


そして顔を傷に近づけ舐め始めた。


舐め始めた。


大事なことなので二回言いました。


(はぇ?)


ドリアードの行動に一瞬頭がショートしたがすぐに正気に戻る。


「ドッ、ドリアードさん!一体なにを!?」


「私の体液には癒しの力があるのよ。こうやって怪我をしたところにつけると…ほら。」


指をさしたところに注目をすると確かに。傷なんて無かったと思わせてしまうくらい綺麗に治っていた。


「じゃあ続きをするね?」


もうどうにでもなれ。


私は身を任せ、美しい精霊に全身を舐められるのであった……。




全身を清められ(?)私はドリアードに感謝の言葉を送りそろそろ帰りますと告げた。


「ずっとここにいればいいのに…。」


悲しそうな目で私を見つめる。うっ。やめてください。


「帰らないと家族が心配してしまいます。また時間を作って会いにいきますのでそれまで待っていてください。」


約束よ、とドリアードにキスをされる。友達というより恋人みたいな別れ方だな…。私の脳裏にそんなことが浮かんだが気にしないことにした。


そして指切りをして私は薄明の街から出ていったのだった…。



いつもありがとうございます。

次の話どうしよう。

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