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大竜相撲五月場所

 初レビューをいただきました。

 ありがとうございます!

 励みにしてこれからも頑張っていこうと思います。


 今話は海李に視点が戻ります。

 「ワタツミ、まだ生きてるか?」

 「あぁ、なんとかな。」


 やっと助けが来た。ランスロットのおかげで体力が回復したとはいえ、あれからかなりの時間が経っていた。後五分と持たなかっただろう。体中がふっ、と軽くなる。


 「丸三十分締め付けられ続けることがこんなに苦しいとは思わなかった。二度とごめんだな。」


 立ち上がって、肩を回した。どうやら、骨は折れていないらしい。良貴とカリオレルが俺を助けに来たということは、ユキとランスロットも無事だということだろう。


 「よしっ、すぐに出るぞ、おらぁ!」

 「状況が全く掴めないんだが、どこへ向かうんだ?」

 「かなり急いでるから、走りながら話すぞ。」


 二人は俺を置いて走り出した。


 「待てって!俺は走れないんだ。」

 「悪いっ、待てない。とにかく、祭壇に迎え。」


 くそぅ、置いてけぼりか。まあ焦っても追いつけるわけでもないし、歩いて祭壇に向かうとしよう。あいつらだけでもなんとかするだろう。



ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー



 空一面を埋め尽くす竜たち。地上から立ち向かうエルフたち。辺りの家々は焼かれ、ランスロットと良貴は苦戦を強いられていた。


 俺が見るはずだった景色なのだが、現実は全く違っていた。


 【やっと来たね。手一杯で困ってたんだよ。】


 二匹の竜が目の前に落ちてくる。大空を黄緑の閃光が駆け回り、黒竜の大軍を撃墜していくのだ。既に祭壇の周りにはおびただしい数の竜が転がっていて、全てから魔物表示が現れない。すなわち、この数は俺が来るまでにランスロットが倒した数なのだ。


 「状況はいまいちわからないが、竜を殲滅すればいいな?加勢するぞ。」

 「どこで道草食っていやがった。雑魚の相手は鎧女で事足りるから、お前はあいつを叩き落とせ。」


 カリオレルは大木を生やして、生い茂る葉を傘のようにして祭壇を守っていた。指差す方向には、他の竜より明らかに大きな竜が飛んでいた。周りを他の竜が囲っていることから集団のボスであることがわかる。よくある、ボスを倒せば付属の敵は消えるってやつだろう。


 「あいつってあの竜に乗ってるエルフだよな?」


 ボス黒竜の背に金髪の誰かが乗っているのは見えるが、遠くてそれ以上はわからなかった。


 「私ののマネアンです。である私に似て優秀なのですが、神樹を守るという我々エルフの種族としての使命を捨て、さらには守るべきの神樹を襲撃しています。ワタツミさんには彼女を止めてもらいたいです。」


 マネアンはアレオンじゃなかったか?やたらと兄だの妹だの強調していたが、妹より姉のほうが余程ましだと思うぞ。妹系ラノベの主人公でもあるまいし三次元の妹にロクな妹なんているはずがない。そういえば、あいつは今生き延びているのだろうか・・・・とそんな場面でもないな。今俺がすべきことはマネアンを止めることだ。


 「槍斧乱射ハルバートスクランブル。」


 巨大な槍斧をいくつも作って、マネアンを乗せた黒竜に向けて飛ばした。かなり距離があるから細かい操作はできないが、ただの竜程度の胴体なら簡単に貫く威力と硬さはある。槍斧は吹き荒れる風を削りながら、一直線にボス黒竜を狙う。


 強く澄んだ笛の音が空に響き渡る。それまでランスロットの圧倒的な火力の前に蹂躙されるだけの竜たちだったが、笛の音で戦うことを思い出したかのようだ。四匹の竜がボス黒竜の前に並ぶ。俺の槍斧を防ぐ壁となったのだ。槍斧は黒竜たちを貫くが、巨大な体格に威力を殺がれボス黒竜に届かない。


 「くそっ、厄介な笛だな。これだけの人数でも手こずるわけだ。」


 ボス黒竜の飛ぶ高度が高すぎる。ランスロットやエルフたちもまともに近づけるのだろうが、ボスに群れる黒竜で手一杯だ。俺は飛べるはずもないし、他に頼れそうなのは・・・


 「困ってるようだな?安心しろ、俺が来たぜ!」


 一頭の黒竜が眼前に降り立った。良貴が首に抱きついて、締め付けている。


 「いやー、竜に乗るなんてロマンだよな。クリザエモンを見た時にこいつしかいないと思ったぜ、あっ、クリザエモンてこいつの名前な。他のに比べて鱗が茶色だろ?」


 通りで良貴の姿が見えなかったわけだ。お互い、決定打となる攻めができずに混戦状態だというのに、良貴が遊ばずに戦っていれば確実に優勢だった。だいたい、良貴のは竜に乗るじゃなくて首を締めて無理やりに動かしているだけだ。


 「そいつ、マネアンの所まで飛べるか?」

 「ちょっと聞いてみるわ。」


 クゥーーンー


 良貴が両腕でクリザエモンの首を挟むと、竜らしくない悲しそうな声を上げた。


 「飛べるってよ!」


 名前まで付けてる割には酷い扱いをするものだ。クリザエモンの背にまたがった。ボス黒竜とまではいかなにものの、かなりの大きさだ。あと二、三人乗せても平気だろう。


 「いくぜっ!」

 クゥンー


 クリザエモンは両翼を広げて、羽ばたかせると地から離れた。加速しながらどんどん上昇していく。風を顔に浴びた。


 「やっほうー!空を飛ぶって最高だろ?」

 「いいや、あんまり気分いいもんじゃねえな。」


 下が見えなければ良かったのだが、どうしても落ちたときを考えてしまう。せめてシートベルトぐらいは完備させてほしいものだ。


 「そうか、速さが足りなかったか。まだまだクリザエモンは速くなるから、きっと楽しいぜ。」

 「違っ、別に速さを求めてたんじゃなぁぁーーーぁぁーーぁぁーー!!」


 もう勘弁してくれ。揺れまくる竜の背に必死にしがみつき、目を閉じた。しばらくジェットコースターばりの速度で飛び続け、急に停止した。ボス黒竜の傍まで来たのだ。マネアンは薄気味悪い笑顔を俺たちに向けた。


 「今日はもうゆっくりお休みになって、と言ったつもりだったんですけどね。人間は面倒くさいですね。」

 「お前、ふざけるなよ。」

 「良貴!興奮してクリザエモンから手を離すなよ。」


 良貴は怒りで声が震えていた。せっかく、マネアンとまともに戦える距離まで来たというのに、うっかりクリザエモンに落とされたなんて洒落にならない。


 「俺が戦うから良貴は上手く間合いを取ってくれ。」


 不安定な竜の背で立ち上がった。足がガクガクと震える。少し強い風が吹いただけで、落ちてしまいそうだ。この高さだとまず助からない。


 「水枷。」


 膝から下を生成した水で固めて、クリザエモンの鱗に固定した。マネアンは短音を吹く。ボス黒竜は俺たちの方向に首を回して、吠えた。圧力で体勢を崩しそうになった。


 「か弱い竜ですね。まとめて叩き落としてあげますよ。」


 ボス黒竜がぶつかってきた。重い衝撃が俺たちを襲い、クリザエモンが傾いた。体格差でボス黒竜がかなり有利なのだ。単純な大きさではさほど劣ってはいないものの、各部位の太さが違うのだ。

 

 「負けるんじゃねえ、クリザエモン。お前も一発食らわせてやれ。」


 そんな無茶な。ボス黒竜と力比べをしたところで結果は決まっている。クリザエモンは悲しげな顔で、渾身のタックルをボス黒竜にぶつけた。視界が反転する。クリザエモンがひっくり返ったのだ。もちろんボス黒竜はびくともしていない。辛うじて宙に浮いている状況で、いつ落ちてもおかしくなかった。


 「竜同士で戦うのは武が悪い。まともに戦わないほうがいい、俺たちが狙うべきは笛だ。多分、笛で竜を操っているんだろうから笛を奪えば無力化できる。」

 「わかったぜ。俺とクリザエモンでサポートするからワタツミっちは存分に戦えよ。」


 ボス黒竜が息を大きく吸った。クリザエモンはまだひっくり返ったままだ。


 「この距離だとブレスを受けきれないぞ。」

 「クリザエモンの底力を信じろ!」

 「諦めなさい、終わりです。獄炎の息吹!」


 熱を帯びた黒い魔力弾が吐き出される。避けられないなら水で壁を作って衝撃を減らすしかない。水を生成をしようとした時、ぐるりと天地が一回転した。ブレスがクリザエモンの際を通り過ぎてゆく。


 「信じてよかっただろ?」


 足元が急に動いて後ろに体を引っ張られたかと思えば、ボス黒竜の背後に回っていた。


 「もしかして、こいつ竜の中でも相当速いんじゃないか?」

 「俺が見込んだクリザエモンだぞ。すごいに決まってるだろ。」


 自慢気だが、動きまで見て選んだようには思えないな。なんにせよ、この隙はチャンスだ。水を液体のまま操って、マネアンの笛を水浸しにした。


 「硬化。」


 水を固めて、俺の手元へ引っ張る。マネアンはようやく奪われたことに気づいて、背後の俺たちへ振り返った。笛はもうマネアンの手から離れて宙を移動していた。マネアンがエルフ語で何か叫んだ。木の枝がどこからともなく飛んできて、空中で止まった。


 「手元へ持ってくる物を間違えたんじゃないのか?ただの木の枝だぞ。」

 「ええ、ただの木の枝をわざわざ呼んだのですよ。」


 良貴に笑いに被せてマネアンは笑みを浮かべた。次の瞬間、枝が笛を掴む。枝からいくつにも枝分かれした新たな枝が生えて、二メートルは離れている笛にたどり着き、絡みつくまで成長を続けたのだ。


 「返してもらいますよ。」


 ものすごい力だ。俺の水を操作する力より遥かに強い。笛はあっという間にマネアンの手の内に戻っていった。

 しばらく更新遅めです。

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