詐欺師
俺が若い頃、決して大きな声で言えることではないが詐欺師をしていた。悪いことだとは分かっていてもお金に困っていた俺はなかなかやめることが出来なかった。
そんな俺がいままで捕まらずにこうして過ごせていけることは運がいいとしか言いようがない。
妻は先立ち、子供も立派に育って孫も出来た俺は、出来ればこのまま罪を隠し通していきたかった。幸せなまま死ぬことが今の俺の夢でもある。
そう、これからは静かに暮らすつもりだった。まさか、また罪を犯す日が来るとは。
俺は手に入れたお金を持ってため息をつく。緊急事態とはいえ、人を騙すのはなんとも心苦しい。今度こそ警察行きかもしれない。
そう思いつつも息子からもらった携帯で教えてもらった番号に電話を掛ける。よほど慌てていたのか、何度かボタンを押し間違えてしまった。やっと最後まで打ち終え、相手が出るのを待つ。相手は三コールで出た。聞こえてきた声は、弱弱しい息子の声だった。
「もしもし、父さん?」
「ああ。遅くなってすまない。もう大丈夫だぞ。金は用意できたからな」
「ごめん……。ありがとう」
泣き出しそうな息子の声に俺も泣き出しそうになる。しかし、そこはぐっとこらえ、息子に尋ねる。
「それで、この金はどこに振り込めばいいんだ?」
僕は罪を犯してしまった。騙すことは悪いと分かってはいるが、今は緊急事態だ。どんなことをしてでもとにかくお金が必要だった。
しばらくすると僕の携帯に着信のメロディが鳴り出した。僕は飛びつくように電話に出る。
「母さん? お金は用意したよ。いますぐ振り込むからね」
初投稿です。
グダグダな小説になってしまいましたが、これからよりよい作品をかけるように頑張ります。