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5 アンジェラさんの温もり

 教会に到着して依頼を受けたことを伝えると、若くて美人のシスターさんが快く出迎えてくれた。


 名前をアンジェラと名乗ったそのシスターさんは、俺を早速畑に案内してくれた。道すがらアンジェラさんの後姿を見つつ、つい妄想してしまう。


 シスター服というのは、厳格な戒律を守るために黒一色なのに、なんでこんなに色っぽいのかねー。俺の中で妄想が膨らむ・・・・・・


 ひょっとしたら、この人が俺の童貞卒業のお相手か? まてまて、そもそもシスターというのは結婚とか禁止ではなかったか?


 ということは、あれだ。百合に走ったアンジェラさん・・・・・・うん! これもいけるぞ。是非ともおかずにしたい。


 そんなことを考えているうちに、目的地に着いた。そこは畑と言うよりは、果樹園だった。


 野球場ぐらいの土地に、ミカンによく似たポンの木が植えてあり、主にその実を絞ってポンのジュースにしているそうだ。


 そのジュースを販売して得たお金で身寄りの無い孤児たちを養っているそうで、ポンの実の収穫量によってその予算が変わってくるらしいから、害虫駆除は最初俺が考えていたよりも責任重大な仕事だった。


 木に近づいて観察をすると、幹や葉っぱに蛾や毛虫が大量に付いている。これを一々手で取るなんて大変な労力が必要だぞ。


 俺の頭にとあることがよぎる。うん、確かに一撃で全ての害虫を駆除できるよな。草原で放ったときには、草には異常が無かったから、植物には影響が無いんだろう。


 問題は俺の覚悟だ。すでに今日は一回死に掛けている。どうしよう・・・・・・


 ふとアンジェラさんを見ると、両手を組んですがる様な目で俺を見ている。


 やめて下さい、そんな目で見られたらやらざるを得ないでしょう! 逡巡する俺・・・・・・だがアンジェラさんのあの目に負けた。


「わかりました、今からすぐにやってみましょう」


 そう彼女に声を掛けると、その表情が一気に明るくなる。


 俺はアンジェラさんにいくつかの注意をした。


 駆除が始まってからは危険なので、俺が呼ぶまで絶対に外へは出ないこと。


 飼っている動物がいたら、屋内に移動させること。


 近くに民家が無いことの確認等々・・・・・・


 全てに準備が整ったことをアンジェラさんが伝えてくれた。いよいよこれでもう退路は塞がれた!


 アンジェラさんが建物の中に入ったことを確認して、始めることとしようか。


 今日は風も弱くて、これならゆっくりと広がっていくことだろう。風向きを考えて最適なポジションを取る。


 これで全てに準備が整った、待ってて下さいアンジェラさん。俺の全ての愛をあなたに捧げます。


 一つ深呼吸をする。当分きれいな空気は吸えないから、今のうちに堪能しておこう。


 さあ、覚悟は決まった。いくぞ!


「屁よ、いでよ!!」


 胸にかつて感じたことが無い、巨大な違和感が発生する。


 ヤバイ! これはマジでヤバイ! 


 次第にせり上がって来る違和感のせいで、すでに俺は脂汗でグッショリだ。


 そしてその時は遂にやって来た。


『オエーーーゲボッ・・・ゲボゲボッ・・・キーーーーン!!』


 強烈な臭気が鼻を直撃するのは当然として、もの凄い耳鳴りまでしてきた。これは本当にヤバ過ぎる!


 だめだ、ひどい立ち眩みがする。前後左右何も分からない・・・・・・・




 ゆっくりと意識が戻る。


「見知らぬ天井だ・・・いや夕空か」


 そう呟いて自分の頭が何か柔らかいものに乗っかっていることに気が付く。視線を右に向けるとアンジェラさんが俺を膝枕してくれていることが理解できた。


 優しい目で俺を見下ろして『気がついてよかったです』と微笑む。


 なにこの天使! アンジェラさんマジで天使です!


 太ももの感触はもう少し楽しみたいけど、申し訳ないので起き上がる。


 でもやっぱりもう一回だけ、こんなチャンスは二度とないかもしれない。まだフラつく振りをして、頭をアンジェラさんの太ももに戻す。


「リョウタさんは、大きな赤ちゃんみたいですね」


 そういって俺の髪や頬をそのほっそりとした手で撫でてくれるアンジェラさん。


 俺もう死んでもいいです! 今日は二回程死に掛けたけど・・・・・・


 少し顔を右に傾けると、アンジェラさんのお腹の辺りに俺の鼻や頬が触れる。女の人ってこんなに柔らかくてフワフワしているんだ。


 さようならチクビちゃん、もう俺はアンジェラさん一筋でいきます。


 アンジェラさんの話によれば、俺が戻るのがあまりに遅いので心配になって様子を見に来てくれたそうだ。


 自分の危険を顧みずに俺のことを心配してくれた上に介抱までしてくれて、その嬉しさで一筋涙がこぼれた。


 もっとこの感触を楽しみたいけれど、さすがにこれ以上甘える訳にもいかない。今度は本当に体を起こしてアンジェラさんに介抱してもらったお礼を言う。


 アンジェラさんは本気で心配してくれて、俺が立ち上がった姿を見て心から『元気になってくれてよかったです』と言ってくれた。


 本当に天使だ! 彼女に多少なりとも邪な思いを抱いた俺を殴りつけてやりたい。


 こうして無事に依頼は達成した。俺はアンジェラさんの『いつでも遊びに来てください』の言葉に見送られて、教会をあとにした。


 死に掛けたり色々あったけど、今日は本当にいい一日だったな。



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