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4 初依頼で死にかけた

 よーし、やるぞ!


 今日は昨日よりも二時間ほど早く起き出した。


 女将さんに挨拶をして、朝食をいただく。うまいねー、やっぱり朝はいっぱい食べておいたほうがいいな。何しろ今日から冒険者だ。


 装備を整えて、ギルドに向かう。いい依頼があるといいな。


 中に入って掲示板を見ると、すでにかなりの依頼が剥がされていて空白が目立つ。初心者向けはどうやらほとんど残っていない模様だ。



 仕方ないので昨日のうちにチェックしておいた、常時依頼の薬草採りにするか。俺は掲示板の紙を剥がしてカウンターに向かう。


 さーて、今日もチクビちゃんはいるかなー?


 昨日発見したギルドでの最大のお楽しみ、ピンクのチクビちゃんはどこかなー・・・・・・


 俺は固まった。


 カウンターにはタンクトップを着た筋肉ダルマが3人こっちを向いてにこやかに並んでいる。


 ご丁寧に薄いタンクトップ越しに、チクビがはっきりと分かるよ。


「ちがーーーう!!」


 いかん、怒りのあまり声を上げてしまった。


 周りは『なんだこいつ?』と言った目で俺の事を見ているが、どうか気にしないでいて欲しい。


 いかんいかん、だいぶ取り乱してしまった。今日は依頼を受けに来たんだ、決してチクビちゃんを見に来たわけではない。


 心を静めてカウンターに並び、手続きを済ませた。もちろん今日はばっちり話も聞いたよ。だって他に気を取られるものが全く無いんだから。


 依頼で取ってくるのは、オイシ草とクサ草の二種類だ。オイシ草は傷の治療などに、クサ草は毒消しなどに使われるらしい。ただこのクサ草って、どうなの? このネーミング・・・・・・絵を見る限りではドクダミのようだ。確かにあれは臭いけれど、本当にこんな名前でいいのか。


 町の門を入って30分歩いた所にある森に入っていく。筋肉ダルマの話によれば、ここら辺は魔物はそれほどいないらしい。


 それでも油断はしないようにと注意を受けたから、今日のところはあまり奥に入らないようにしよう。


 クサ草は至る所にあるが、オイシ草はなかなか見つからない。あと4本見つかれば依頼達成なのだが、仕方がない、もう少しだけ奥に入ってみるか。


 500メートルほど入ったところで、ようやく見つけたよオイシ草。やれやれだ、結構大変な仕事だなこれは・・・・・・


 さて戻るかと振り向いたとき、なんだあれは!? 緑色したやつらが・・・・・・ゴブリンが5匹こちらを目掛けてやってくるのを発見した。


 やつらが30メートルまで接近したとき、人差し指を突き出して俺は魔法を放つ。


「出でよ、青い炎よ!」


 どうだい、これなら滑舌も関係ないだろう。俺だって学習くらいするのだよ。


 青い炎は予想以上の効果を発揮した。次々にゴブリンたちの体を貫いて倒していく。


 そこまではよかったんだけど、火が森の木に燃えうつちゃったよ。どうしようこのままでは大火事だ。


 止むを得ない、不本意だがあれを使うしかない。


 俺は深く息を吸い込み、あの言葉を口にした。


「マーライオン!!」


 まずい! せっかく息を吸い込んだのに、今の言葉で吐き出してしまった。


 胸の奥で違和感が急激に膨らむ。そして・・・・・・


 大量の水が口から溢れ出てきた。火は水の勢いに負けて消えていくが、俺の息が持たない。


 まてまてまて! 明らかにこの前よりも量が多いぞ。た、助けてくれーー、死ぬーー!!


 手で喉を押さえながら、苦しさで頭が左右に揺れる。これでは首振りマーライオンだ。


 誰がそんなうまい事を言えと言った! いや大して言えていないし。だめだ、意識が遠ざかる。


 本当に限界の手前で、ようやく水の勢いは衰えてくれた。


 ゲホッ、ゲホゲホ・・・・・・よかった、生きていたよ。


 ハアハア、ゲホッゲホッ、ハアハア・・・・・・


 ようやく落ち着いてきた。どうやら火は消えている。これで消えていなかったら、もう一度やらなければいけなかったから本当によかった。


 さあ、戻ろう。気力と体力が大幅に減少した。


 一時間近く歩いて街に戻る。ギルドに入り買い取りカウンターに薬草とゴブリンの耳を提出すると、銀貨8枚が渡された。


 宿代が一日銀貨4枚だからこれで2日分か・・・・・・ちょっと心許ないな。


 少し気力が回復してきたので、手ごろな依頼がないか探してみる。


 おっ! これなんかどうだ、街の教会にある畑の害虫駆除だって。街の中だし、この依頼を受けて今日は様子を見に行くとしようか。


 そうと決まれば、依頼の紙を剥がしてカウンターに持っていく。


 受付カウンターに座っているのは朝と同じで、タンクトップ透けチクビの筋肉ダルマだ。


 明日こそはチクビちゃんが座っていてくれますようにと、心の底から祈りを捧げながら依頼書を提出する。


 一通り説明を受けてから、途中で昼飯を食べて教会に向かった。


 

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