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1 転移と魔法習得

 どうやら死んだらしい。目の前には、天使がいるから、おそらく間違いはない。その天使はきわめて事務的にこう言った。


「元杉 良太さんですね。もう一度今までの世界に生まれ変わるのと、このままの体で別の世界に転移するのとどちらにしますか?」


「では別の世界のほうで」


 なんとなく今までの自分の生活がつまらなかったように感じていた俺は即答した。


「わかりました。あなたには異世界に転移するにあたって特別な能力が付与されます。体はあなたの遺伝子情報を元に複製しておきますから、あちらの世界で頑張って下さい。あっ、時間がないのでそこの白い扉の先に進んでください」


 またしても事務的な天使のお言葉。


 仕方ないからその言葉に従って白い扉を開けて一歩足を踏み込むと、その先の光の中に俺の体が一気に吸い込まれた。そしてその後に続く果てしなく落下していく感覚。


「うあーーーーーー!!」


 恐怖に耐えかねて絶叫する俺、意識を失って目が覚めたら、そこは青い空とどこまでも緑が続く草原だった。


 近くには粗末なリュックサックと剣とナイフが置いてある。どうやらこれで異世界を生き抜けということなのだろう。




 《天界》


「あー、今日も忙しかった、やっと交代の時間だわ。おや、この紙は何だっけ? ああ、さっき異世界に転移を希望した男の子のスキルの説明書だわ。なになに、『最初に覚えたスキルが地上最強になる』 ふーん、渡すの忘れていたけど、まっいいか・・・」

 



 


《草原》


 さて、さっきの話だと特別な能力があるといっていたけど、あれか? 漫画に出てくるようなやつかな。ちょうど剣があるから試してみるか。


 俺は剣を鞘から引き抜いて手に取ってみる。かなりズッシリした手応えを感じて、ちょっとビビッている。


 だってこれ真剣だよ! 本当に切れちゃうよ! こんなの本当に振り回せるの?


 剣を両手で持って剣道をイメージして素振りを行ってみるが、不慣れなため自分の方が振り回されている感じだ。


 うーん、すぐに剣を使って戦うのは難しいな・・・・・・でも何か必殺技を身に付けておかないと不味いだろう。剣を使った必殺技といえばあれしかない。


 俺は剣を逆手に持って、重心を前にかけて思いっきり後ろに引く。ここで一旦タメを作ってから、掛け声とともに思いっきり振りぬく。


「ババンババンバン・スプッラッシュ!!」


 勢いよく剣が飛んでいった。


 あー、危なかった、まさか剣がすっぽ抜けて飛んでいくとは思わなかったよ。うん、この技は封印しておこう。


 剣を拾って鞘に戻し、しばし考える。



 さてと、どうしよう・・・・・・そうだよ! 異世界といえばやっぱり魔法だよな! 何で真っ先に思いつかなかったんだろう。


 えーと、やっぱり最初は火の魔法だよな。でも火なんてどうすれば出てくるんだ? うーん・・・・・・


 そのとき俺の脳裏に昔動画で見たある映像が浮かんだ。そうか! まずは試しにやってみよう。


 まずは腹を擦って・・・・・・おっ、いい感じだぞ。


 そのまま両膝に手を置いて、尻を突き出す。


 下っ腹に力をこめて、頭の中で『炎よ出てこい』と念じる。


 ・・・ブー・・・ボン!・・・


「アチいーーーーー!!!」


 尻から出た屁に引火して確かに一瞬だけオレンジ色の炎が出たが、危うく尻が燃え上がる所だった。


 本当に尻に火が付く事もあるんだなと変なところに感心したが、これでは魔法とは言えないような気がする。幸い一瞬だけだったので、ズボンやその中身は無事なようだ。


 引火したということは、どうやら火が出せるらしいことは確認出来た。後はどうやって火を出すかということだな。ガ○ラみたいに口から出すのはどうだ?


 そう思ったとき胸の辺りに違和感を感じた。なんか口から飛び出てきそうだ。早くも魔法成功か!


 ・・・ゲボッ・・・プーン・・・


 とんでもない異臭が俺の鼻腔を直撃した。あまりの臭さに鼻を押さえて草原を転げまわる。


 ようやく臭気が収まり、何とか起き上がって草の上に座り込んだ。こんな目にあうとは思わなかったから、突っ込みのひとつでも入れないと気が治まらない。


「誰が口から屁を出せといった!! 火を出せ火を!!」


 ひどい臭いのせいで、両目から涙が溢れている。そういえば最近肉ばっかり食っていたよな。自分の屁だからまだ何とか耐えられたけど、他人がこんな屁をこいたら殺意を抱くかもしれないな。


 気力が復活するまで、かなり時間がかかった。直撃を受けた嗅覚だけでなく、この攻撃は精神に大きなダメージを与えることがわかった。主に俺の。


 と、とにかく屁から離れよう。頭の中をクリアーにして考えるんだ・・・・・・


 そうだよ、指先とかから出せばいいんだよ。何でそこに気が付かなかったんだろう。我ながら自分の馬鹿さ加減に呆れる。というよりは、魔法に対する俺のイメージが変なのかもしれないから、気をつけよう。


 改めて、右手の人差し指を突き出してその指先の50センチ先に意識を集中する。俺は学習出来るんだ、これで指先大火傷の心配はない。


「炎よ、いでよ!」


 ・・・ボウ・・・・・・


 出た、本当に出たぞ!! いや、出した本人が一番びっくりしている。


 指先から火炎放射器みたいに、オレンジ色の炎が10メートルぐらいとんでいる。こりゃあすごいぞ。これもっと温度を上げられるかな? ガスバーナーみたいな感じで。


 頭の中でバーナーの青い炎をイメージすると、オレンジの帯のように広がっていた炎が収束して青い光線のようになっている。


 『これはすごいな』とうっとり見蕩れていたら、いつの間にか草原が燃えていた。あわてて指先から出ている火を止めて、大変だ水はどこかにないかと広い草原を見渡してみる。


 目に見える範囲に水は見当たらなかったが、変わりにいいことを思いついた。


「そうだよ、火と同じように水も魔法で出せばいいんだよ!」


 そう気が付いた俺は、先ほど火を出した要領で右手の人差し指を突き出す。


「水よ、いでよ!!」


 このとき俺は、なぜか昔テレビで見たシンガポールにあるマーライオンの映像を思い浮かべてしまった。


 突然胸の奥に違和感が生じたと思ったら、『ゴボー』という音を立てて大量の水が俺の口から溢れ出てくる。


(ま、待て待て。息が、息が出来ない。止め、中止、止まれ、このままでは死ぬ、とにかく終わってくれ!!)


 心の中で必死に念じるが、胸にある違和感が消えるまで水が止まることはなかった。


 流れ出る水がようやくチョロチョロになると同時に、俺は草の上に倒れこむ。危うく溺死するところだった。息が出来なかったせいで、呼吸が荒い。


 魔法を使うことが、こんなにも命懸けとは思わなかった。今度は雑念を排除して、もっと魔法に集中しよう。


 こうして、俺は命懸けで火魔法と水魔法を習得した。


 


 

 


 

 

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