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中岡慎太郎人物論

作者: スー・ミン

幕末の動乱という夜中で、暗闇に光る星々のように、様々な人物の活躍があった


その中で、維新三傑や勝海舟、坂本龍馬、高杉晋作といった人物は一際強い輝きを歴史に残したが、中々語られることがないのが中岡慎太郎である


坂本龍馬の親友、というイメージが強く、坂本龍馬の隣に寄り添う日陰者にも見えるが、坂本龍馬の人物というか、性格のアクが強過ぎて、常識的な彼は目立つ機会が少ない


坂本龍馬の親友で、幼馴染の中岡慎太郎は、坂本龍馬とは対照的な人物でもあった


勤勉で上下に境目なく信用されたし、真面目で失敗も少ない

地位は高くなく、財産はないが貧しくはない

堅実で作法も身につけ、剣術も確かで常識的な思考、弁論も理路整然と爽やかで学識も広い

恵まれた体格で背筋も良く、侠気も強く人当たりも良い

人脈もあるし、多くの人に将来を見込まれていた

威風堂々とした一角の人物

それが中岡慎太郎という人だった


性格も明るく、よく笑うので好感も持たれることが多い

どこに仕えても申し分なく、出世することは間違いなかっただろう

堂々として恐れを知らず、根性もある

癖の強い幕末の人間たちに混じると、これほど真っ当でわかりやすく英雄と呼べる人物も珍しい


坂本龍馬を維新の中心人物へと実質的に導いたのは、恐らくは彼だろう


坂本龍馬の視点や、思考は群を抜いていた

当時の日本で同じ目線に立てるのは、勝海舟や吉田松陰、徳川慶喜ぐらいだったはず

幼少期から家族よりも長く共に過ごした中岡慎太郎にも、坂本龍馬の思考や行動は理解し難かった

まして口下手な龍馬である

この群を抜き過ぎた口下手な男の言動を上手く解釈し、弁論や頭脳を駆使して表現したのが中岡慎太郎だった


素行も経歴も悪く、風貌もおかしな病的な青年の一言は、世間や社会では謗られることが多々である

体格もよく、笑い上戸で風格もあり、学識があって常識的、それでいて声も大きくよく通る

代弁者としてこれほどに申し分ない人はいないし、まさに坂本龍馬の理解され難い思考能力や行動を、世に知らしめるべくして生まれた、不思議な縁を感じられる人物でもあった


そんな中岡慎太郎にも、やはり坂本龍馬の考えを理解するのは容易くない

群を抜き過ぎている上に、口下手で破天荒な男である

口を開けば開く程に難解で、議論が過ぎて感情的に口論になることも少なくはない

それでも忍耐強く、彼は龍馬を信じた


彼とて時代や日本という国が見えていなかった訳ではない

いや、寧ろ他の大多数よりかは、国や人物の本質がわかっていただろう

彼の偉さは、出世を人生の本懐としなかったことである

なろうと思えば、生き延びて初代首相にもなれたはずだった

だが、目の前の粗忽な親友を決して見捨てることが出来なかった

実際、坂本龍馬の思考や行動に何度となく疑問を持ち、龍馬を信じ続けるか否か、という葛藤に一番悩まされたのが中岡慎太郎だっただろう


髷を結って着物を纏い、刀をさして職務に勤勉であることが美徳とされた時代に、異国からの黒船が来航して、目まぐるしい変化を求められたのだ

急速な時代の変革に常人はついていけない

その明日をも知れぬ動乱の中で、命を狙われながら、必死に走り、声を枯らして語る日々である

聡明で健康な彼も、一時期は精神を病んで床にも伏せた

すぐに前線に復帰したが、理想と現実の違いに挫折することも多々ある


まして、政治は駆け引きの世界である

元来の実直な性格の彼に、政治の世界は心労を重ねた

行動した分だけすぐに結果が出ることもあれば、結果がわからないまま有耶無耶に過ぎることもある


彼でなくても、坂本龍馬の相手は非常に難しい

疑う気持ちを持つ彼を誰も責めれないし、よくやっていると、多くの人は誉め讃えただろう


大らかで優しい彼でも、何度も龍馬を殴りたくなる衝動もあったし、時として斬り捨てるべきでは、という極論も頭の中を支配した時もあっただろう

それでも、彼は信義の人であり、そして友情の人だった

やはり並外れた考えや行動力を持つ坂本龍馬が、動乱を終えた後の日本に必要だと確信していたし、龍馬の目指す形や国こそ、明治政府のあるべき姿だと信じていた


暗殺の憂き目に遭い、その理想は潰えたが、最後まで親友・坂本龍馬と運命を共にして、その理想と大志に殉じていった


幕末の動乱に活躍した人物は多いが、中岡慎太郎という綺羅星の輝きは、忘れずに心に留めておきたい

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