1.7
その後、サレムの家で休んでいた。
サレムからは褒められたけど、二度と危ないことはするな、危険なところにはいくなと言われた。
まるで父親みたいだ。
一日中筋肉痛に苦しんだ後、自分はマスターに会いに行った。
マスターからは感謝をされた。給料はこれから倍くれるとも言っていた、自分としては有り難いことなので受け取ることにした。
そして、今はブランテと酒場の裏で、樽の上に腰かけて話している。
「お父さんね、昨日はとても、今まで見たことのないくらい喜んでたの私も迷惑かけちゃったし、村のみんなは抜け出すんてすごいって言ってくれるけど」
「それは良かった。頑張ったかいがあった」
「お父さんほんと心配だったみたいで、昨日はほんとに大変だったみたい。お母さんがね、もう死んじゃってるから」
初めて聞く話だが、まあ予想はしていた、ブランテの母親を見たことはないし。マスターが誰かと別れるような甲斐性なしには見えなかった。
「ごめんね、うーん。そうだ! タクジの親ってどんな人なの?」
「自分の両親は、科学者なんだ。祖父が科学者で父親も科学者になった。そして、母親と職場結婚したらしい」
「科学者?」
ブランテが初めて聞いたというきょとんとした顔をしている。
そのしぐさが可愛くて、すこしドキリとした。
「科学者、えーとこっちではいないのかな? なんて言えばいいのか、いろんな法則を見つけたり。新しい物を考える人? かな」
「鋭才者のこと?」
「鋭才?」
「学問を深く理解し文明に多くの発展を、人に多くの貢献をする人々。鋭才者。
そう、タクジの両親は鋭才者だったのね」
少し違う気がするがまあ大体あってはいるだろう。
それより、鋭才者、あまり聞かない言葉だがこの世界ではよく使われる言葉なんだろうか?
「そうだね、まあ自分は賢くないからなれないと思うけど」
「ふふっ、そうねタクジはお間抜けさんだものね。あっ、でもこの前はカッコよかったわ、タクジってすごく速いのね」
彼女は立ち上がり、伸びをしながら言う。
「いや、あれは、なんだろう。自分でもよくわからないんだ。
もしかして魔術か何かかなぁ。でも偶然できたとか。
どっちにせよ、あまり他の人にいわないでくれ」
「はいはい、でも魔術は学問よ、そう簡単にできるのかしら?
あと、カッコ良かったわ、白馬の王子さま。」
彼女は最後に僕をからかい、帰っていった。
あたりを見ると、すでに太陽は傾きかけ、夕暮れとなっていた。
さあ自分も仕事に行こう。