1.4
それは、サレムと朝食をとったあと、酒場《狼の牙》に来た時にマスターから聞かれた。
「ブランテを知らないか?」
その後、一気に村中に話題が広がり話題となり、手の空いている村の者全員で彼女を探したが、その日、彼女が見つかることはなかった。
だが、翌日事態は変わる。
手紙が届いたのだマスターのもとへ。
「お嬢さんは、頂いた。
開放を望むなら。
明日の夜明けまでに金貨50枚を
用意し、西の洞窟の前までもって来るように。
ルイジヴァンパ」
彼らはこの国の一大犯罪集団。
曰、ボスのルイジヴァンパは機械の体の大魔術師で国政にも口を出せるとかなんとか。
ここいらでは最近その下部組織が奴隷を生み出すために女、子供を攫っていくとか、最近孤児が減ったのは奴らが奴隷にしているからだという噂もある。
マスタ―は今すぐに金貨を用意すべく村を回った。
彼にそこまで単独で支払えるほどの財産はなかったのだ。
だが彼が村を回っても村人はルイジヴァンパは金貨だけを奪い、娘は開放しないだろうといった。彼らに捕まってはどうしようもないと消極的な姿勢だったのだ。だがマスターは諦めることはしなかった、できるはずがなかった。
そして彼は、サレムの家に来た。
マスターは頭を下げて言う。
「サレムさん。あんたはこの村を一番愛してる。
そうだろ!俺は、俺には、もう、ブランテしかいないんだ。
俺を、俺を助けると思って、どうか、ブランテをどうか。」
沈黙が、二人の間に長い沈黙が流れる。自分も何も言葉を発することはできない。
静寂を破ったのは、サレムだった。
「わかった。顔をあげてくれ。
私も、彼女を子供のころから見ているし。
私は、この村の皆を家族だと思っている。」
マスターの顔が輝く、一抹の希望を得たように。
「いいのか?ありがとう!!!
サレムさん、あんたはぁ。いや、ともかくありがとう。
あんたが助けてくれるんならほかの村のみんなだって
いや、ともかくありがとう」
そういってマスターは出て行った。
彼はまた村を回るのだろう。
俺は……
足が向いていた、気付いたら噂の洞窟の前にいた。
別に来ようと思ったんじゃない。
ただ、彼女の顔を思い浮かべたら……
自分に何ができるのか……
彼女を助けることはおろか、それどころか何もできない、自分は無力だ。
いや、それどころか邪魔だ所詮自分はこの世界の住人ではないのだから。
/でも自分にだって
いいや、帰ろう。
そう、思った時だった。
頭にあまりに強い衝撃を受け意識を失ったのは。