1.2
結論から言うと、これは夢ではないようだ。
夢であってほしいのだが。
ここはアリストス地方シーノス村というらしい。
自分の知る限りそんな場所は地球にはない。
異世界?なのだろうか。
二つの大国、蒸気国家と魔術国家が12年前に合わさり今の国の元になったそうだ。
そう、魔術。魔術である。
この世界には、魔術があるのだ。
もっとも、この村にはまともに魔術を使える人間はいないようで自分はまともに魔術を見ていない。
だが光る石くらいは見た、夜にライトの代わりにするようだ。
まるでファンタジー小説の中、いや本当にファンタジーの世界だ。
そして機関、蒸気機関の発達したものらしい。
自分には汽車くらいのイメージくらいしかない。
この村は中型の中央機関を持ち、それを各家庭に分け合うようで。
この村では各家庭でお湯を沸かし、暖房に使える程度のものだそうだ。
そして老人、サレムという老人。
彼は孤児を集めて育てているようだ。
労働力として子供を欲しがる里親もいるようで、そういった仲介もするようだ。
(もっともあくどいところには紹介しないらしいが)
村は平和だった。
魔物なども存在するらしいが。
村の中では見かけることはなく。
サレムは村人から尊敬を受け、彼もまた村のために尽くしているようだった。
自分はとりあえず帰りたい日本に、家に、自分の状況はわけわからないものだがどうにかしなければ。
まずはこの世界についての知識を得る。
そのために中央都市ウナムを目指すことにした。
そこなら多くの情報や賢者がいるらしい。
もしかしたらこのような状況を理解してくれる人が、どうにかする方法を知る人が、いるかもしれないという希望をいだいて。
そのためには金が必要だ、サレムのところに泊めてもらいながら。
村の酒場で働いている。
一日で銀貨一枚、どれくらいの旅費がかかるるかはわからないがまだまだ足りないことはわかる。
――――そうして二週間がたった。