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2.7


「なんで、なんで」


「偶然なんだけどね、自分に毒が盛られてることに気付いた。自分の症状などをかえりみてね」


 ロメオがしゃべる、まだ覚醒したてで朧気な彼にグラモンは既に圧倒されていた。


「薬品の売買をしてたことによってついた知識に助けられた。あとは解毒薬に相当するものを飲めばいいだけ。実際に、治ったからね毒を盛られたことを逆説的に証明できた。」


「でもさっきまで確かに死んでいただろ」


「ああ、特殊な薬草があってね仮死状態になる薬草。まあそのあと目覚めさせる特殊な他の薬がないとほんとに死ぬんだけど、さっき、ジョックが飲ませてくれてねそれで覚醒できたわけ」


「なんでそんなことしたんだ」


 サスペンスドラマの追い詰められた犯人のようだ、いやそれよりもチープなものだ。もはやロメオの独壇場となっている。


「犯人を、君を釣るためだよグラモン。君が持った薬後で死体を調査すれば毒を盛られたことがわかるからね、そうなったら毒を入手できる人間なんて限られるからね君に疑いの目が行く。そうされないよう僕の死体を処理するつもりだった違うかい?」


 グラモンは呆気にとられたように呆然としている。


「そもそも、俺だけを狙ってピンポイントに毒を盛るなんてことができる人間は限られる。正直確証はなかったがお前である可能性が一番高いとおもってたよ

 俺を殺して、俺の命が無くなればこの隊商の中でお前の上を行く商人はいなくなる。俺の眼が無くなれば。もっと堂々と取引ができると思ったんだろう、あのルイジヴァンパと」


「! ! !」


 驚きは一体だれのものだったか。自分かジョックかそれともグラモン自身か。ルイジヴァンパ、この世界に来てからなんども名前を聞いた犯罪者集団。それだけこの世界に大きく、根強くはびこっているということ。


「そこまで、気付いてたのか」


 冷静な声。グラモンの声にすでに焦りはない。


「そこまで分っているのなら、これは下策だったぞロメオ! 来い! 」


 グラモンが大声を上げる。そうするとどこからかいくつもの大きな大きな足音がこちらに近づいてくる。そして幾人もの人間が出口を塞ぐ。

 見えるだけで4人たぶん後ろにも数人が控えてるだろう。強硬手段も考えていたが、この数は予想以上だ。 


「やはり、最初から強硬手段に出ればよかったのだ、このままここいら一帯を蹂躙しそこにお前たちが巻き込まれるそれでいい」


 ルイジヴァンパだろうか何人もの男がこの場所唯一の出口を塞いでる。

 男がこちらに槍を振るう、一番出口にに近かった自分に向けて横凪に振るう。風を切りこちらを抉り切らんとする一撃。

 だが――

 遅い、遅いのだ。

  

 自分にとっては遅い、雷のごとく迅速に動ける自分にとっては遅い。そしてそのまま槍を振るう男に蹴りをかます。

 そして再度距離を取る、現状突っ込んでいくのは無謀だ。一人一人堅実に殴っていく方がいい、この狭い部屋なら一度に何人もの人間が攻撃できない。外に出るよりここで極力注意を引き戦った方がいい。


「おい、こいつらは魔術師だ! 油断してんじゃねぇぞ」


 男が数人建物の中に入ってくる。その隙にグラモンは外に出ていく。


「おい、タクジ! 俺とジョックでここはどうにかしよう。おまえはグラモンを追え!」


「だが……これは!」


「行け」


「わ、わかった」


 ジョックが男の集団に突っ込む、それにどよめく男たち。それはそうだ彼らと比べても大柄の男が突進してくるのだ、武器の差を持ってしても恐怖を覚えるだろう。

 そこに、崩れ空間の空いた男たちの間を高速で動き一気に建物の外に出る。九人、小屋を囲んでいた男の人数。これを二人だけでどうにかできるのかと不安になる。チラリとロメオを見る、行け!確かにヤツは言った。ならそれを信じるだけだ。

 再度周りを見渡す遠くに逃げるグラモンが見える。全力で駆ける。軽やかに動く自分の体は奴が二歩分歩みを進めるより速く標的に追いついた。


「えっ――――!」


 奴が振り向く、だがもう遅い。自分は奴の顔面に向けて全力で拳を叩き込む!

 勢いよく奴が倒れこむ、流石に先ほど食らわせた蹴りも含めればもう動けはしないだろう。


「はぁ……はぁ……はぁ」


 息が切れる。流石に昨日今日と体を酷使しすぎたのだろうか。足も重く気を抜けばどっと倒れこんでしまいそうだ。だがすぐにでもロメオ達を助けに行かねば。

 そう思い小屋の方を向くと――


 ――白銀の切っ先


 すでに暗くなり夜が支配するこの場でも何かの光を反射し輝くナイフ。自分の鼻先を掠めていく凶器。

 咄嗟に高速移動で三歩下がる。

 相手を見つめる。男、そうこの男!昨日馬車を覗き見ていた男。奴がいる、そこらに隠れていたのか。左手を後ろに右手に坂手持ちでナイフを構え腰を落としこちらの様子を注意深く見ている。


「おまえもルイジヴァンパの一味か」


 黙ったままただ瞳に明確な殺意を表しナイフを構え続ける。自分も一定の距離を取りながら攻める隙を伺う。黒い姿にこちらを射抜く殺気をまといながら男はこちらを向き続ける。

 男が急にナイフを坂手持ちから変えようとする。


 ――今だ!


 自分は突っ込む狙いは腹へのパンチ。全力で殴りさらにそのあと全力で背後に周り衝撃を受けた隙に頭を羽交い締めにする。

 だが、だが自分が拳を叩き込もうとした瞬間ナイフが!先ほどの瞬間持ち替えようとしたナイフが自分の拳の先に!

 この男は持ち替える振りをしてそのままナイフを落としこちらの攻撃にカウンターしようとしたのだ。自分は咄嗟に手を引っ込める。

 男を見る何もない手、いや袖の中からもう一本のナイフこちらに向けて突き出してくる!

 もはや後退したほうがいい、ナイフが顔前をカスリながら自分はそう判断し再度距離を離す。


 そう、男は自分の高速移動をすでに見ている、それに合わせて通常の戦術ではなくからめ手でこちらと相対するつもりなのだろう。やはり、もっとじっくりと相手の出方を見るべきか?いやいっそのこと最高速で相手を殴り倒した方がいいのではないか?自分の中でいくつもの考えが生まれては消えていく。

 そうこうしていると男も地面のナイフを足で拾いナイフを両手持ちしだした。

 やはり強行突破をするべきだ自分は相手のようなプロではない、戦術の読み合いで勝てるとは思わないなら自分の利点を生かして早々に決着をつけるべきだ。そう思ったとき――


 ピーーーーーー


 どこからか笛の音が聞こえる。その瞬間、


「はっ!」


 男は背後から何かを取り出し地面に叩きつける!

 かんしゃく玉か?急にあたりは煙に包まれる、視界を奪われるのは危険と判断する。急遽、後方に移動し煙の範囲から出る。

 油断なく、周りを注意する。

 煙の中からだけでなく、今の隙に近くに隠れた可能性もある。この状況なだけでも自分には多大な集中力を必要とする。そうとも自分人生には命の奪い合いの中に置かれたことは今まででないのだから。

 煙が消える。そこには暗闇と先ほど自分がのしたグラモンが倒れているだけだった。先ほどまで自分を覆っていた殺意はもう感じない。

 逃げられたのだの気づくのに数秒かかった。


「しまった!」


 本来命があることを祝うべきなのだろう所詮自分は荒事の専門ではないのだから。今になって気付くがこれがこの世界に来てから初めての誰かを守るための戦いではなく、敵を排除する戦いだったのだ。


 倒れているグラモンを肩にかけ抱える。先ほどの笛の音は撤収の音だったのだろうこの男は見放されたのだろうか、どちらにせよロメオ達に相談しなければ。

 そう思っていたところで遠くから二つの足音、ロメオとジョックが近づいてきたのがわかった。自分は目を向け彼らがいるのを確認すると大きく手を振り無事を伝えたのだった。


「グラモンはおいていったのか。てことは見放されたのかな」


 ロメオがつぶやく。


「見放された?」


「うん、彼、秘密裏にルイジヴァンパに物資提供してたみたいなんだよね。ま、証拠なくて俺はなんもできなかったんだけど。その彼がおいていかれたってことはもう不要って置いていかれたんでしょ」


 ロメオが自分を見る。どこかいつもと違うように見える。


「俺が誰かを疑ってるのはイメージと違うかい? 幻滅でもする?」


 自分は直感的に感じた。この質問には真面目に答えた方がいいいつものようなおちゃらけた雰囲気はもちだしてはいけねい。


「まあイメージとは違いますかね。でも幻滅はしませんよ。たぶん、ヴィオだってそういいます。誰かを疑うってのは誰かを信じるってことですから」


 そう彼に近しく毒を盛れたであろうもう一人の人物、ジュリーさん彼は彼女については全く疑っていなかった、信じていたのだ。それはきっと……

 彼は少し驚いた後。


「そうか君は割と目ざといんだね」


 優しそうにいつものロメオに戻っていた。


本来ここらで切り上げる予定でしたが、二章をあと少しだけ続けたいと思います。

三章はつなぎ的な意味合いが強くなりそうなんですが後半少しスチームパンクぽくなるかも。

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