表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/27

2.1

「にゃ、にゃぁ……」


「そんなんじゃだめだよ、もっと声を大きくしないと」


「にゃああ」


 混沌(カオス)である。

 自分の目の前に広がる光景はそうとしか言いようがなかった。

 今、ヴィオの顔は真っ赤に染まっている。怒りではない、羞恥によってだ。

 原因は、ヴィオの服装。

 いつもの、紫のワンピースに茶色のブーツ、しかし今はそれだけではなった。

 彼女の頭の上にぴょこぴょこと揺れる、二つの三角形、そう

 ネコミミである。

 彼女は今ネコミミをつけてにゃあにゃあ言っているのだ。


「よーしよしその調子、次はこう媚びた感じで」


「にゃぅあ、にゃ」


「そう、そうだよ上手い上手い」


 ヴィオを煽っている、男、名をロメオという。

 彼は別に趣味で彼女にネコ状態を強制しているのではない(はず)。

 何故なら、彼は――――


「うん、うん、いいね、いいねぇ。

ようし、じゃあ次は実際に商品の説明に入ろうか

じゃあ、さっき説明した通り……まずはコレ! はいどうぞ!」


「え、えっと、これは演奏機関(ミュージックボックス)だにゃ。

特定の外部情報機関と接続すると、音楽が流れだすにゃ。

これは買わなきゃ損損。今すぐ買うにゃあ」


 そう、彼は商人しかも行商人(キャラバン)なのだ。

 そう、決して彼は趣味でやっているのでは無いはず、はずだ。


「ちがーう! 最後にはウインクするって言ったでしょう。

もうヴィオちゃんは恥ずかしがり屋なんだから!

まあいいよ少し休憩しよう、彼のところにでも行ってきな」


「はい、どうも……」


 彼女がとぼとぼこちらに歩いてくる。

 自分は荷物の積み下ろしが終わったので休憩ちゅうだった。

 彼女がまだ頬に赤みを残しつつ、眼に涙を浮かべながらこちらに来る。

 あーあこりゃまた大変だぞ、と思った。


「ぅうぅっうっ、タクジ! かわってください何なんですかあれはぁ」


 変わるのは無理じゃないかな。

 彼女はロメオではなく、自分にぷりぷり怒ってくる。

 

 彼女と旅をしだして一月が立とうとしていた。

 少し、打ち解けた関係に慣れてきたのか。

 彼女からも呼び捨てになったし、素の面を見せるようになってきた。

 ただ、素の彼女は意地っ張りで、少し寂しがり屋で怖がりで、

 なんともかわいらしいのである。最近は妹のようにも思えてきた。


「うぅ、どうしてこんなことにぃ~」


「まあまあ、行商人についていければ僕たちは楽だし、

仕事を手伝うくらいいいじゃないか」


「そ  う  だ  け  ど  !

どうしてネコミミなんてつけて接客をするのよぉ」


「うん、なんでなんだろうね」


 ロメオの趣味ではないと思いたい。

 チラリと彼を盗み見る。

 彼はせわしなく動きながら、商品の管理、行く道中の流行り廃り、多くの地域の穀物の収穫量、新しい発明等の情報を集めまとめながら、何をどれだけ買うかなどの方針を綿密に立てている。


 彼は実は優秀なのだ。

 この隊商の一行の中で、最も稼ぐと言われているとも聞いた。

 きっと、いつかはこのキャラバンのリーダーいや、それ以上になるかもしれない。

 そんな彼の趣味でネコミミをつけさせてるわけでは無い(といいなぁ)。


「まあ、港町につくまでだし」


「うんうん、我慢も大切だよ」


 そう、自分たちは行商人たちについていき港町まで行くのだ。

 なぜ、こうなったかというと理由は二日前にさかのぼる。


             ◇◇◇◇


 や、やばい、ペースをミスった。

 この日、日がとても強く照り、気温が高かった。

 二人とも予想以上に、疲弊し水を多く飲んでいた。

 余裕を持ってきたはずの水はもう、すっからかんになっていた。

 どうするか――――


「ヴィオ、昨日の村まで全力で走って(・・・・・・)、水をもらってくる。

たぶん、疲れて動けなくなるだろうから、今日はここで野宿にしよう」


 リスクを考えなかったわけでは無い。

 高速移動がどこまで持つかわからないし、彼女をここに一人にしてしまう。

 だが、地図を探しても近くに水源はなさそうだ。

 あたりを探して、見つからないリスクよりは確実性を求めようとした。

 

「もし何かあったら、荷物を置いてでも逃げて、いいね」


「大丈夫なの、そっちは」


「うん、大丈夫すぐに戻ってくるから」


 荷物を降ろし、最低限のものだけを持つ、道を振り返り――

 自分は目にする。

 何台もの馬車が列をなしこちらに向かってくることを。

 

「た、助かったぁ

 ヴィオ、ここにいて水をもらってくるよ」

 

 自分は、すこし駆け足で、馬車に近寄る。

 ふと、彼らが悪い人なら、どうしようと思った。

 例えば、ルイジヴァンパのようなあれくれ者達だったら……

 いざという時のために、全力で逃げる、心構えで、

 見えてきた。

 先頭の馬車で馬を仕切っているのは、モヒカンの、厳つい顔をした男だった。

 こ、怖えぇぇ。あれは大丈夫なんだろうか?

 自分は恐る恐る、彼に話しかける。


「あの、自分たちは旅をしているんですけど、できればお水を恵んでくれま

せんか。もちろん、お礼はしますしお願いします。」


「そういうことは、後ろのロメオに言いな。

おーーーーい、ロメオの旦那! 客だっ!」


 彼は馬車の中に、呼びかける。

 中から一人の青年が出てくる。彼がロメオだろうか。

 

「なんだいなんだい、おっほんとだ、いらっしゃい。

何か御用かい?」


「あの自分と彼女は旅をしているのですが、この先の街道の先の町までの水を

くれませんか。もちろん支払いもします」


「うーん、良いよ。そうだでねえ銅貨50枚でどうだろうか」


「5、50枚!?!そんなボッ――――」


 明らかにボッタクリ価格だ、自分たちを下に見て高値を吹っかけてるのか。


「いやいや、水とあそこの彼女この馬車に乗せ次の町まで送るというのも含め

てだ」


「えっ」


「僕たちは行商人なんだ、僕たちもそこまでいくんだ。余裕はあるし乗せて 

行ってあげてもいいよ。」


 確かに、魅力的な提案だ。

 今日中にどこまでいけるかもわからないし、その間休んでいける。

 すごい、誘惑だ。

 でも、銅貨五十枚あれば三日分の食料にはなる。

 うーん、絶妙な価格設定ではなかろうか。


「あっちの彼女はそこまで体力ないと思うけどなぁ」


 その一言で自分の心はもうほとんど傾いていた。

 

「今日は、この後一層熱くなるらしいよ」


 自分は決心をした。


「わかりました、お願いします」


 そうして、ヴィオをと馬車の後ろに乗り、行商人についていくことにした。

 ロメオと自分たちの乗る馬車の後ろにもかなりの、馬車がついてきている。軽く10台以上はあるんじゃないだろうか。かなりの大行商、その先頭を行くロメオは信頼されているのだろう。


 彼は割とおしゃべりだった。もしかしたら自分たちが退屈しないよう話題を振ってくれているのかもしれない。ともかく、陽気であった。


「君たち二人はなぜ旅をしているんだい?」


 道中、ロメオが聞いてきた。


「二人で中央都市ウナムにいくのです」


「えっ、ていうことはこのまま港町に行くのかい?」


「はいそうですけど」


「奇遇だねぇ、僕たちも港町までいくんだよ

 そうだね金貨3枚かなあ港町までなら」


「いや、さすがにそれは」


 「やっぱり無理かい?」


「まあそこまでは懐に余裕がないので。あの、やっぱりって言いましたけど、

わかるんですか?払えるか払えないか」


「まあね、僕ほどの商人になれば客を見ただけで支払い能力はわかるものさ、

 少し話をすれば何が必要かだってわかるさ」


「そうなんですか」


 そうして、この話は終わったと、横で眠りだしたヴィオを見たときはそう思っていた。だがしかし、その晩の食事中の時、ロメオは唐突に言った。


「やっぱり君たち二人を、港町に送り届けてもいいよ」


「えっ、でもお金は」


「もちろん無償さ、ただし二人とも隊商の手伝いをしてくれよ。それでチャラ

でどうだろうか、明日には次の町には着く。そこから働き出してもらうことに

なるけどいいだろう?」


「あの、自分だけ働くことだけではいけませんか?」


「いやいや、やっぱり二人じゃないと、タクジ君には力仕事等を、ヴィオちゃ

んには接客をしてもらおうと思ったんだけど。だめかな?」


 自分はヴィオを見る。まだ幼さの残る彼女に接客ができるのか。そもそも彼女は受けてくれるのか。自分だけが働くならそれが一番いい。


「いいよ、でも私接客したことないけどいいの?」


「もちろん、そこは手取り足取り教えるとも!」


 その時ロメオの目が輝いたのは見えなかった。


             ◇◇◇◇


 そうして自分たちは行商で働きながら、港町を目指すことにした。

 そこまでいけばあとは船で海を渡り、対岸に行けば、ウナムまであと少しの旅となる。

 まあそれまでは、


「にゃ~、この輝光石を買ってほしいにゃ。かなりの魔力をため込んでいるの

で。一日中照らしていることも可能にゃ。夜の出ある気には心強い味方ににゃ

るにゃぁ。買わなきゃ損損だにゃ」


「うんうん、いいよいいよヴィオちゃんは本当にかわいいね」


 彼女(ヴィオ)見て楽しんでいよう。


唐突に始まった、ヴィオ萌え回、いったいどうなる!?

二章《涙、枯れるもの》始まりです。

よろしくお願いします。

感想とか評価をくれると喜びます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ