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1.12

 街道を歩く。

 ひとりで、ではない隣には少女ヴァイオレットがいた。

 

「まってください、少し、少しだけ疲れたから、休みにしない?」


「いいけど、でもまだ次の街までは結構あると思うから、あまりゆっくりは、していられないよ」


「だ、大丈夫です」


 そういって彼女は手ごろな岩に腰を掛ける。

 ほんとはあまり大丈夫ではないのだろう。

 自分より年下13,4くらいの少女、その見た目通り体力はあまり多くはないようだ。流石に1日中歩いていては体力が続かあいだろう。ここ1週間でわかってきたことだ。


 一応荷物はこちらが全部持って歩いている。ほんとは自分一人のことでいっぱいいっぱいなのだが、女の子が頑張っている中、男の自分が弱音を吐くわけにはいかない。それでも少女にとっては、大変な旅になるだろう。 


「はい、水」


 カバンの中から、水筒を出し容器に移してから彼女に渡す。


「あ、ありがとうございます」


 彼女は手に取った容器をすぐに煽る、フ~と息を吐き容器を口から放す、容器の中は空になっていた。


「まだ飲む?」


「いえ、もう結構です」


 彼女は自分に容器を返してくる。

 フリルとリボンのついた紫のワンピースを来た彼女、その服より少し淡い髪、紅色の瞳、きれいな人形のようだと思う。

 だが、やはりもう少し違った服装のほうが良かっただろうか。

 ブランテが新しい服を用意すると言っていたが、この少女は断ったのだ、遠慮からか、それともこの服に思い入れがあるのか。なんにせよ、もう少し動きやすい服を無理にでも用意すべきだったかと思う。


「あと、どれくらいの距離がありますか?」


 考え事をしていると、彼女に話しかけられる。


「あそこに見える山と、隣の山の峠道を超えるとすぐだ。」


「うっ、結構ありますね」


「やっぱり、おぶっていこうか?」


「け、結構です!」


 顔を少し赤らめながら否定しにかかる。どうせ誰かとすれ違うことなんてほとんどないしいいと思うんだけど。彼女は少し意地っ張りのようだ。


「あと強力な魔獣とかに会ったらおぶって全力疾走(・・・・)するから、そんときは文句言うなよ」


「別に、いいませんよぉ」


 あの後、よくわからない高速移動も使いこなせるようになってきた。旅に踏み切ったのは、もし危険があってもあの高速移動なら大抵のことは、逃げるなりなんなりで対処可能と判断したからだ。


「結局、どうして動けるかはわかりましたか」


「いやぁ、サッパリです」


 ブランテは先祖に亜種の血が混じっていて、それで超能力のような力があり使えるのではないかと言っていたが、自分はそうは思はない。だって日本でそんなのありえないだろ。

 難しい顔をしていると、ヴァイオレットが笑っていた。


「なにか、おかしかったか」


「いえ、ただ記憶があってもわからないことがあるなら――

――――記憶のない私には何もわからないのかなって」


 


 そう、ヴァイオレットには記憶がないのだ。



             ◇◇◇◇

 ――――10日前―――― 


「き、記憶喪失!!!」


「はい、そのようです」


 少女ヴァイオレットはうつむきながら話す。


「名前はヴァイオレットであってると思います。

 なんというか記憶もなくてここが何処かもわからなくて、すごい頭痛とかしてて、あの男が助けてくれたと思ったら地下に繋がれてそして助けていただきました」


 というのが彼女の覚えている全てらしい。

 あとサレムは王国の執行官に引き渡した。

 村の人は皆一様に驚いていた。

 誰も彼の中の狂気に気付けなかったのだ

 ――その想いは本物だったから。


 そうこう、話している間に

 彼女のことをどうするか会議となった。

 記憶喪失の治療が必要だろう。

 そもそも、記憶喪失なら彼女に親がいるかもわからない。

 治療と情報その2つが満足にそろうとすれば、

 中央都市ウナムしかない、マスターはそう言った。


「なら、俺と彼女が二人でウナムまで行くというのはどうでしょう。俺も、いつかは旅立つ必要があると思ってました」


「わかってんのか、おまえもあの子も何も知らないに等しい。そんな二人だけなんて――」


「正直、怖いんです。一人で旅するのは、でも誰かと一緒なら、しかもそれが自分より年下の女の子なら、俺は死ぬ気でどうにかしなきゃいけなくなる。爺さんもよく言ってました。男なら、弱い女を守るため命を懸けろ。そんなこともできないクズは死ね。暴言ですけど、今は心強い言葉だと思ってます」


 沈黙が訪れる。

 彼は長考した後。


「盗賊団、それにサレムさん、たまたまで出来る、ことじゃねぇお前の頭か、体か、なにか、どうにかしてやるって力があるんだろう。わかった、ただし、しっかりと準備をしていけ。俺が準備が整ったと思うまではだめだ」


「ありがとうございます」


「礼をすることなんてねえだろ」


 いや、彼は自分を心配してくれている、それだけで頭を下げる価値はある。

 そうして、自分は旅の準備を始めた、ヴァイオレットも了解してくれた。

 

 ある日、ブランテに湖へ散歩を誘われた。

 あまり時間はなかったが、ゆっくり話す最後の時間かもしれないと思い行くことにした。

 湖は今日も綺麗だった。

 ここからあの小屋はほとんど見えない、この前見つけたのは偶然だったのだろう。

 湖を見ていると、彼女が言った。

 

「旅立つんだね」


「うん」


「思ったより、早かったかな」


 彼女はまるで泣いてるように自分には見えた。


「怖いけど、このままだとずっとこの村にいてしまいそうだ」


「それじゃぁ、だめなの?」


「……だめだよ。自分にも彼女にも、求めるものがあるのだから。動いていかなくきゃ、見つからないよ」


「……そう、でもね、でももしなにか、あったら帰ってきていいんだよ。この村に父さんだって、そういうわよきっと」


 これっきり二人は無言になってしまった。

 夕暮れが差し出したころ、二人でゆっくり帰った。


 3日間準備を整えた。

 地図の確認、旅程の組み立て、必要なものをそろえる、旅を経験したことのある村人に話も聞いた。

 マスターがかなり協力してくれた。

 感謝を、マスターをはじめ村の皆に。


 そして、旅たちの朝。

 自分とヴァイオレットは並び、マスターとブランテに別れを告げる。


「ありがとうございました。なにもわからない私だけど、いつかこの恩は返しますマスター、ブランテ」


「いいんだ、もし、何も見つからなくても、また、帰ってくればいいから」


 彼女はぺこりと頭を下げる。


「あと、タクジこれを、もってけ」


 マスターから袋を渡される、持ってみるとかなり重い。

 袋を開けてみてみると、そこには

 大量の銀貨が入っていた。

 少なくとも一目で自分がこの村で稼いだものよりは多いとわかる。


「いや、これは――――」


「勘違いするな。おまえの分じゃない、嬢ちゃんの分だ、おまえが、死ぬ気で送り届けるのだ。そのために、遠慮はするな」


「はい……」


「なに、お前ならどうにかなる不思議とそんな気がするよ」


「はい、ありがとうございます。

 いいえ、いいえこの3週間の間、本当にありがとうございました」


「なに、照れることを言うな、もう行け。

 時間が無くなるぞ」


 マスターはきらりと娘のほうを見る。

 ブランテは下を向いてうつむいていた、泣いているのだ。


「じゃあな、ブランテ楽しかったよ」


 背を向け、歩き出す。

 ヴァイオレットが横についている。

 村の外に出る。

 風が吹いた。

 ふと後ろを向くとブランテが手を振って俺たちを見送っていた。

 その瞳にはこの距離から見えるはずのない涙が――――



             ◇◇◇◇


 火を囲む二人、自分とヴァイオレットだ。

 

「すいません」


 結局、町までたどり着かずに、野宿することとしたのだ。


「気にしないで」


 空気が重くなる。

 自身が足を引っ張っていると思い、彼女は負い目を感じているのだろうか。

 本当は、自分が感謝したいくらいなのだが。

 何か明るい話題にしようと思い。

 適当に話題を振る。

 

「ヴァイオレットはなにか町に着いたらしたい事とかあるの?」


「いえ、パッとは思いつきません」


 見事に、失敗した。


「あ、でも……その……」


「ん?」


「とりあえずヴィオでいいです」


「な、何が?」


 何のとことか、全くわからない。


「呼び方です、ヴァイオレットは長いでしょう」


 ほほを赤くし目を背ける。

 自分は少し面食らったが。


「わかったよヴィオ」


 彼女の顔は一瞬にして、嬉しそうにはにかんだ。


 こうして、自分とヴィオの二人の旅は始まった。



             ◇◇◇◇


 チクタクチクタク時間は進む、チクタクチクタク時間は進む。


「まずは、接触したのか。

 うむ、とりあえず一度見に行ってみるか」


 紫紺に染まったの空の下、玉座に座りながら、男は一人上を見ていた。



やっと、一章の終わりです。

今までのところで計2万字くらいなんですが。

内心その倍は書いてる気分です。

うまく進まないものですね。


ではぜひこれからもこの作品を読んでいただけると嬉しい限りです。

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