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1.9

「うん、それでね西の湖はとても綺麗なの魔物もいないし、安全よ。」


「そうか、それは是非自分も行ってみたいね。」


「そうね、ええぜひ、ぜひ行きましょうね。絶対よ。」


 自分はよくブランテと話す。

 年が近いのもあるし、彼女の親の下で働いているのだ。

 自然と顔を合わせることも多くなる。

 何よりも彼女とはとても話しやすいたぶん彼女自身の性格のおかげだろう。


「そうね、昔サレムのおじさんに連れて行ってもらったことがあるの、

 彼が私に教えてくれたの。

 あまり、人もいないしとても静かな場所なの」


「へぇ、サレムさんが」


「私は、よく知らないけど。

 村の人からは尊敬されてるみたい。

 まあ、そりゃそうよね。優しくて真面目で村のことが好きって

 すぐわかるような人ですもの」


「そうだよね」


 自分のことではないけれど少し気恥ずかしくなった。

 自分もサレムのことを信頼している。

 どこの誰ともわからない自分を泊めて面倒を見てくれるのだ。

 彼のやさしさには疑うところはない。


「そうだ、今日仕事の後でいいからさ、湖行ってみない?」


「でも、夜だよ?」


「夜でも、きれいよ。私は大丈夫よ父に見つかるヘマはしないわ」


「わかった、じゃあ、また今夜。」


「ええ、楽しみにしてるわ。」

 

 こうして、約束は決まり自分は少しウキウキしていた。

 そして、ふと仕事中に気付いた。

 あれ、これデートじゃね???


 そして仕事後、変なことを意識しだしたせいで、浮足立っていたのか、またマスターに少し心配された。

 すいません、あなたの娘さんのせいです。


 夜、酒場の裏でブランテと待ち合わせる。

 昨日も思ったが月はきれいだ。

 この世界はあまり空気がきれいではないのか、雲が厚いのか、あまり星は見えない。

 でも、たぶんあまり空気は良くないのではなかろうか。

 この村の中型機関からもそこそこの煙が出てくる。

 もっと大きな町に行くと、こんなものではないくらいの煙がでるらしい。

 それが空気を汚している可能性もある。


「またぼ~っとしてる。やっぱり変ねタクジは」


 背後から声をかけられる。ブランテだ。

 昼に来ていたものと違い、白を基調とした少し清楚目な服だった。

 彼女は着替えてきているようだ。


「またせたかしら、ごめんなさいね。行きましょ」


 そうして、二人で西の湖に向けて歩き出した。


 二人でいろいろなことを話した。

 楽しかったこと、この前の事件のこと、酒場のこと、自分の故郷のこと、この村のこと、その中で彼女が興味を示したのは、学校のことだった。


「素敵ね、いろんな人がみんな集まって、教育を受けられるなんて、しかも若いうちから。」


「こっちにはないのかい、そういった場所は」


 自分で聞いておいてなんだが、この村には学校がないのはわかっている。


「中央都市ウナムに魔術学院があるわ、あとロンディニウム、蒸気文明圏の方の大きな都市ね、

 そこには鋭才者を育てるための学校があると聞いたことがあるわ。

 まあこの地域から出たことはないから、どちらも見たことはないんだけれど。

 でも素敵だわみんなで一緒にいれるなんて、私もいってみたい」


「まあ、大したものではないよ」


「いいえ、大したものよそれは」


 自分にとっては大したことではなくても他人から見たらとてもよく映るらしい。

 よく、貧困国の子が学校に行きたいというが、それに近いのだろうか?

 自分にとっては当たり前のはずなのに。

 でも、

 たしかに今は少し懐かしい。


「そういえば、服、昼と変わってるね。いつもより少し大人びて見えるよ」


 彼女は少し驚いた顔をした後、


「ありがとう」


 優しく微笑んだ。


 そうやって、彼女と話しているうちに、大分歩いたと思う。

 今は雑木林の中を歩いている、後ろにはまだ村の明かりが見える。


「まだ、先かい?」


「いえ、もう少しで見えてくるわ」


 そう言って彼女は歩く。その先を見る。

 そうして、視界は、雑木林の先、月の光を反射しながら輝く、一点に集中する。

 自然と足は速くなる、彼女も微笑んでついてくる。

 そして自分が見たのは、水面に揺れる月を浮かべた湖だった。

 綺麗だった。

 月を見て感じたものを超える。

 月光を反射し自らが輝くように見える湖。

 静かな夜風が吹く、その寒さを忘れるほど自分は見入っていた。


「驚いたでしょ、夜は月がきれいな時にくると

 美しさが際立って見えるでしょ」


 そのとおりだった。

 この世界に来てみたものの中で一番輝いて見える。

 ひとつの芸術作品のようだ。


「綺麗だ」


 自分は壊れたように同じことしか言えなった。


「でしょ」


 彼女は言った。


「うん」


 自分は頷いた。


 デートだとかそういった変な考えはもう自分の中になかったが。

 傍から見たら、カップル見えたかもしれない。

 そんな雰囲気をこの水面は演出していた。


 自分がこの世界に来て今までにここまで心に鮮やかに覚えている

 ことはないだろうという景色だった。


自分の表現力のなさがもどかしい、

書きながらずっと思ってました。

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